【連載】
●1カ月後、再審議のための情報部会
●その審議のようすは?
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北城委員(代理斎藤)
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前回ならばここから論争が生じるのだが、今回はそうではない。富士通の川村委員代理、日本電気(以下、NEC)の藤崎委員代理から、先の発言を受けたかたちで、であるからこそ附属書1~3を参考の扱いにするべきという意見が出される。つまり“外字を認めないから0213の規格化は反対”というような方向には、今回はならない。
これらの発言に対して芝野委員長が説明する。
芝野原案作成委員長
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これに対して棟上部会長から、当面は従来の外字資産を尊重していく考えがしめされ、その意味でも附属書1~3の方法しか実質的な実装方法がないとすること(つまり1~3を規定にすること)は疑問だと発言する。
そして、電総研の戸村委員代理が、“アーキテクチャの自然さ”という新たな視点から、0213に対する疑問を述べる。
児玉委員(戸村代理)
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これに対して、芝野委員長は「規格仕様の美しさだけでなく、産業界で如何に使われるかが重要である」とする。
ここから話はUnicode(=ISO/IEC 10646=UCS)の実装動向と、0213の新しい文字の収録見込みに移ってゆく。
ISO/IEC 10646の審議に対して日本代表として参加するナショナルボディの委員長でもある慶應義塾大学の石崎委員が、0213の新しい文字もやがてISO/IEC 10646に収録される方向であり、問題はその移行期間中にどうするかだという発言がされる。
それにつづき、斎藤委員代理が日本IBMでもUnicode(=ISO/IEC 10646)[*1]に移行しつつある現状を説く。
これをうけて、電総研の戸村委員代理の発言、そして石崎委員、芝野委員長の発言。
児玉委員(戸村代理)
・国際審議で、ExtB〈Extension-B〉かBMP[*2]【かに収録】と言う話があったが、ExtBだと規格制定に時間がかかる、サポートされるかどうか決まっていないという状況では、誰しもBMP登録の方が良いと思っている[*3]。
この規格審議と関係ないかもしれないが、関係者がそれぞれのポジションでBMPに登録させる努力をすることが必要ではないか。
石崎委員
・ExtBは、今度CD投票〈最終から3つ手前の投票段階〉にかかる予定であり、これまでの規格よりかなり早く規格制定される。
・規格はボトムアップで作るもので、特に漢字はIRG[*4]といった日本、韓国、中国などが集まった機関で決めており、その場ではBMPにもう漢字を追加しないことが合意されている。そのため、今の段階でBMPに日本の漢字を入れることは不可能である。ただし、過去の韓国の前例[*5]もあるので、表玄関からは無理だが、非常事態というのはあり得る。日本が総力を挙げて、各国とネゴするといったことをしなければ、到底無理であるが。
芝野原案作成委員長
・韓国のとった滅茶苦茶な行動と、今回、日本が足りない漢字を入れてほしいと言うことはまったく違うので、同列に扱わないでもらいたい。
・JTC 1/SC2[*6]の場でも、御存知のとおり、ISO10646がDIS1のファイナルの段階でユニコード【コンソーシアム提案】のDIS2[*7]に変更されたこともある。技術的な審議はボトムアップでやるが、それだけではない。
話が国際規格の方へ逸れかけたところで、棟上部会長が軌道修正する。附属書1~3を参考にしても規格全体の意義は変わらないこと、また一部が問題であったからといってテクニカル・レポート化という話はないと強調する。そして他に意見を求めると、ふたたび話はUnicode(ISO/IEC 10646)にうつってゆく。
浅野委員
〈前略〉
また、BMP登録は、どの程度、その可能性があるのか。
八田課長
我々は、現在、BMP登録に最大限、努力しているところである。
北城委員(斎藤代理)
弊社は、UTC〈Unicode技術委員会〉メンバーである[*8]。現在、ExtBであっても、UTCを通せば、少しは道が開かれるのではないかということで働きかけをしている。見込みはわからないが、【0213の新しい文字である】400字の文字をBMPに入れる努力は続けたい。
[*8]…UTC委員長はIBMアメリカ本社のリサ・ムーア。ちなみにUTCに対する芝野委員長の0213の新しい文字を収録する提案は、この回の情報部会の約1カ月後、'99年11月23日付けの彼女の手紙( http://www.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/N690_Lisa_JIS.doc )によって、一部を互換漢字として収録を仮受諾されたが、大半の文字はIRGへ審議差し戻しか、却下されることになる。
この後、部会の審議内容は公開されるのかといった質問に、工技院の八田課長が議事録は原則公開で、審議内容は規格票の解説に盛り込まれるといったような、いくつかの質疑と応答があった後、棟上部会長が附属書1~3を参考にすることでよいかと問い、全会一致でそのとおり可決された。
部会の最後に八田課長が、以下のように言う。
八田課長
・附属書が規定から参考になったということだが、規格の一部であることから、附属書を最大限尊重してもらいたい。
・ShiftJISからUCS系〈ISO/IEC 10646=Unicode〉への転換について、対外的に表明していくことも是非お願いしたい。
こうして、第84回情報部会の2時間の論議は、午後5時に幕を閉じた。原案はこの後『通産公報』『News from MITI』によって国内外に意見照会されたが、特段の修正はなく、最終審議での修正のままの形でJIS X 0213:2000の名前で2000年1月20日に制定された。
さて、次回は工技院が、この2回にわたる最終審議をどのように総括しているのかをお伝えする。配信は8月2日の予定だ。
◎付記
情報部会での最終審議のようすをまとめるにあたって、前回と今回にわたり工技院から多くの助言をいただいた。記して感謝する。
(2000/7/20)
[Reported by 小形克宏]
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