アンケート回答

回答者プロフィール

氏名 橋本大也
年齢 20代後半
性別
所属組織 アクセス向上委員会
肩書き アクセス向上委員会代表
具体的なお仕事の内容 アクセス向上委員会メーリングリスト管理人、インターネット関連の調査、コンサルティング、Webサイトのフリー・プロデューサ、ライターなど。

 

●質問1 あなたが新JIS文字コードで新しく入った文字を見て、ご自分の仕事で必要な文字はありましたか?

2.No

●質問2 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字の符合位置(“面区点”欄の数字)と、その用途をお答えください。いくつ挙げて下さっても結構です。

●質問3 この文字があれば、自分の仕事に新JIS文字コードをつかえたのに、という文字はありますか?

2.No

●質問4 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字は、どんなものですか? 用途とともにお教えください。いくつ挙げて下さっても結構です。なお、文字を挙げる際には、それが使われている具体的な印刷資料かそのコピー、そしてその印刷物名、著者、発行者、発行年月日等の“身元”を第三者が確認できるデータを添えてくださるようお願いいたします。

●質問5 前項で文字を挙げて下さった方にお聞きします。今回の新しいJIS文字コードでは、審議資料を公開して、それについての意見、漏れている文字を募集する『公開レビュー』を実施しました。あなたはこの公開レビューをご存知でしたか。

●質問6 以上ご回答いただいたことの他に、新しいJIS文字コードについて思ったこと、感じたこと、望むことなどがあればどうぞ。

【私は困っていないが、困っている人は多いらしい】

個人的には、今まで一般的な内容の原稿を作成する上で、文字コード上に文字がないという経験は、ほとんどありませんでした。私の仕事はインターネット、コンピュータ業界に関する調査レポート作成や企業の一般Webコンテンツ作成のディレクションですから、文字コードの範囲外にある文字を使う機会が少ないのでしょう。文芸分野のライターには困った経験を持つ方が多いようです。

例えば、パーソナルメディアから発売されているBTRON系OSの「超漢字」は13万種類の文字を扱える漢字に特化したOSなのですが、

・超漢字 http://www.personal-media.co.jp/btron/catalog/ck1.html

このOSの説明には、「日本文藝家協会が1997年に文筆家である会員に対して行ったアンケートによれば、パソコンやワープロで入稿する文筆家の大部分の人(85.6%)が、機械の制約により正しい字形を使えず、その部分のみ手書きなどで入稿したという経験を持っているそうです。」という注釈が見つかります。

こういった特殊なOSを使わなくても、もっと多くの文字が表示、印刷できるようになると多くの人が助かるのだろうなということは分かります。

【新しいJISコードで解決されること、変わること】

むしろ、私の身近な経験では、機種依存文字や特殊文字に関して、コミュニケーション上のトラブルが絶えません。メーリングリストなどでも、しばしば初心者の方が、中級者の方から「その文字は機種依存ですからパブリックなメーリングリストでは使ってはいけませんよ」と指摘されることが多くあります。

私も何度か、そういった指摘をしたことがありますが、指摘している反面で、大多数のユーザが使っている環境で、キーボードを打てば出てくる文字を使ってはいけないというのもなんだかおかしな話だなと思います。

Webの場合には画像が使えますから、文字コード上にない文字や機種依存文字を使いたい場合には、その文字だけ画像ファイルとして作成して切り抜けるというやり方が一般的であったと思います。例えば、○の中に数字という記号は、よく使われる機種依存文字の代表例ですが、以下の郵政省のレポート内では画像化して使われています。

・郵政省 電気通信局 インタ-ネット上の情報流通について http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/group/internet/kankyou-3.html

編集部の説明では、タレントのSMAPのメンバーの1人の「クサナギ」さんの名前の「ナギ」の文字がJISコードには存在しない文字であるとのことでしたが、海外にもそういった事例があります。海外のR&Bシンガーのプリンスは、93年に芸名を変更し、オフィシャル表記は「Prince」ではなく、「The artist formerly known as Prince」を表す特殊な記号に変えてしまいました。これは文字コード上に存在しない文字です。この記号は以下のWebサイトで見ることができます。

・0(+> Web site http://www.wbr.com/goldexperience/

この特殊な文字をファンは「O(+>」という文字絵を作って代用しているようです。 (縦に見ると分かります。余談ですが、いわゆる顔文字(スマイリー)も日本では(^_^)と横表記なのに、米国では:-)、なぜなんでしょうね。)

どんなに文字コードを増やしても、世界中には約7千の言語があり、文字の数は無数にありますから、こういった画像やテキストでの代用と言う方法は今後も続いていくのだろうなと思います。

新しくJISコードに追加される文字が、Webやメールコンテンツに対する大きな影響としては、修飾罫線の多様化が挙げられそうです。Webコンテンツでは、例えば●や★マークは画像ではなく、テキストを使うことで「軽い」ページ作りが出来るので多用されてきました。

また、メールマガジンなどでは、テキストを使った表や区切り線という工夫が盛んに行われています。こういった修飾系文字が多数追加されるのでWebやメールで画像を使わずに表情豊な表現が可能になると思います。

【要望】

どの漢字を追加するべきかについては私は困ったことがほとんどないので、判断できません。これは、それぞれの文字の分野の専門家多数に意見を聞いて決定すべきことなのでしょう。そして、その結果がこの新しいJISコードなのだと思いますから、漢字の部分に関しては取り立てて要望もありません。ただ、漢字以外の部分、前述の罫線や特殊文字に関しては、新しいJISコード資料を見て、疑問も感じました。なぜその記号が選ばれる必要があるのか、よく分からないものが多いのです。

それから、日本語表現力を豊かにする為のJISコード拡張自体は基本的に賛成なのですが、これ以上、文字コード系を混乱させないで欲しいと思います。現在、日本語の文字コードは、JIS、シフトJIS、EUCと大きく3つ存在しています。また、Javaその他のプログラム言語上ではUNICODEという国際規格の方が人気があったりします。

インターネットにはこれらすべての日本語文字コードを使う環境が接続されていますから、CGIやデータベースを使うWebサイトのシステム設計は文字化け対策の為の、文字コード統一作業が必須で面倒なことになっています。さらに新しいJISコードが追加されると複雑さが一層増してしまいます。プログラムやシステムを実装する人間の苦労が増えるのは確実でしょう。

日本語の文字コードの問題は、しばしば議論が紛糾するテーマだと思います。文字コード成立の歴史的経緯が複雑だし、その決定の過程へコミットする方法もわかりにくいものです。いろいろな立場の人の利益も絡みます。文字コードの策定には、一層分かりやすく、オープンな議論の上で作って欲しいものだというのが私の要望です。