アンケート回答

回答者プロフィール

氏名 中里竜治
年齢 30歳
性別
所属組織 名古屋市立向陽高等学校(定時制課程)
肩書き 教諭
具体的なお仕事の内容 担当教科は理科。専門は化学、他の科目も担当。 校務分掌は教務部に所属。時間割作成、通信制併修事務、入試事務などを担当。また、コンピュータ担当としての仕事を引き受けている(対外出張や校内会議への出席など)。

 

●質問1 あなたが新JIS文字コードで新しく入った文字を見て、ご自分の仕事で必要な文字はありましたか?

1.Yes

●質問2 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字の符合位置(“面区点”欄の数字)と、その用途をお答えください。いくつ挙げて下さっても結構です。

 

1-2-76
近似式の表記に利用
1-3-63
単位記号(リットル)の表記に利用
1-13-54
単位記号(平方メートル)の表記に利用
1-3-9
化学平衡を表す化学反応式の表記に利用

1-13-21~31,55
化学における酸化数の表記、および物質名に利用。“硫酸銅(II)”など

・・・(略)

1-9-19~20
1-7-88,89

熱化学方程式、一部の化学式や化学反応式の表記に利用。
1-15-56
化学用語“六法最密充填”の表記に利用(97JISでは略字体だが、一般には1-15-56の書体が用いられている)。
1-3-31,32
授業用プリントや会議作成時の小項目の頭に付記する(HTMLの<UL><LI>タグで出てくるようなもの) 。現在は“・”をよく利用しているが、文中の“・”と混乱する)。
1-3-10~13
授業用プリント作成時に矢印として利用 (単純な矢印は化学反応式の記述と混乱しやすい)。
・・・・・(略)
1-13-1~20
授業用プリントや会議資料作成時の項目番号。テストの選択肢としても有用。
1-7-94
コンピュータ関係の取扱い説明で、Return(Enter)キーを表すために利用。
1-15-34,1-15-55,1-47-82, 1-84-37,1-85-61,1-85-62
その他人名を表すための字 生徒の氏名を表記するのに利用。

 

●質問3 この文字があれば、自分の仕事に新JIS文字コードをつかえたのに、という文字はありますか?

1.Yes

●質問4 前項で1と答えた方にお聞きします。その文字は、どんなものですか? 用途とともにお教えください。いくつ挙げて下さっても結構です。なお、文字を挙げる際には、それが使われている具体的な印刷資料かそのコピー、そしてその印刷物名、著者、発行者、発行年月日等の“身元”を第三者が確認できるデータを添えてくださるようお願いいたします。

ハシゴ高、ツチ吉

資料添付の必要はないと思います。生徒の氏名を表記する上で頻出する文字です。

※単位記号などは、欲を言えばきりがないのですが、既存の文字の組み合わせと ポイント、上付指定などで表現可能ですので、あえて挙げませんでした。

●質問5 前項で文字を挙げて下さった方にお聞きします。今回の新しいJIS文字コードでは、審議資料を公開して、それについての意見、漏れている文字を募集する『公開レビュー』を実施しました。あなたはこの公開レビューをご存知でしたか。

2.No

●質問6 以上ご回答いただいたことの他に、新しいJIS文字コードについて思ったこと、感じたこと、望むことなどがあればどうぞ。

高校までの教育現場で使われる“用語”に関して言えば、難解な字は使わないようになっており、追加された漢字で恩恵を受けることはまずないと言ってよいと思います。

しかし、国語においては、“用語”以外の漢字を使わなければなりません。文学作品や著者名で使われる難しい漢字や、漢文に使われる漢字などです。2000JISにどれだけ収録されたかは私にはわかりませんが、多くが収録されていれば、国語の先生方には朗報となるはずです。また、社会科の地名、人名(特に中国のもの)についても、同様のことが言えます。

実際、2000JISで追加された漢字のうち、教科書を出典とするもののほとんど全てが国語と社会の教科書からのものです。

他の教科に関しては、むしろ非漢字が重要になると思います。とりわけ、私の担当教科である理科では、単位記号や式を表す記号など、97JISでは表現が困難な記号がいくつかありました。2000JISではそれらがほぼ収録され、理科の教員としては喜ばしく思います。

あえて言えば、主要な地図記号(中学社会、高校地理)や天気図記号(中学理科)が収録されれば、関係の先生方にはさらに便利であっただろうと思います。もっとも、これらは文章を構成する要素ではなく、図として扱うことが可能ですから、ここまで言うのはわがままであるかもしれません。

ここで言っております『天気図記号』とは、天気図において使われる記号で、快晴は○、曇りは◎、雨は●、といったものです。念のため、画像を添付します。(新聞のお天気欄などで見ることができるかと思います。)

現行のJISで代用可能なのが前述の3つ、他に、追加されたものの中で、1-3-26 が“霧”、1-8-73 が“雷雨”を表す記号に代用できますが、代表的なもので、晴れ、雪、みぞれ、など(添付画像参照)が表せません。

話が全く変わりますが、学校現場でもうひとつ重要な問題が、氏名の記述です。今や、学校では生徒個人にに関する実に多くの情報が電算化されています。その中には、一覧表や個票の形で生徒の目に触れるものも少なくありません。

現実として、JISにない字を名前に持つ生徒の多くが、自ら名前を書くときでも略字体を用いていることは確かです。しかし、中には自分の名前の字体にこだわりを持つ生徒も確実にいます。“本当の”自分の名前が書かれないことに落胆や不満を感じる生徒が、例え少数であれ存在することは、名簿データの作成者として、実に心苦しいのです。

また、略字体では許されない場面もあります。例えば、合格通知の氏名欄をコンピュータで出力しようとしても、5%内外が手書きになってしまうのが実態です。

授業プリントならば、時間はかかっても図形や外字で切り抜けることができます。 しかし、名簿データに外字を使おうとすれば、校内のコンピュータはもちろん、 各教員が自宅で成績処理などに使っているコンピュータにまで同じ外字を 登録しなければならず、現実として不可能と言わざるを得ません。

非漢字では実用本位で多くの文字が追加されたにも関わらず、“ハシゴ高”や“ツチ吉”の議論では、実用性よりも理念的な問題が優先されたように感じられ、大変残念です。“ハシゴ高”と“クチ高”を区別しない人は確かに多いでしょうが、“填”と“1-15-56”を区別しない人はもっと多いのではないでしょうか。

氏名に使われる漢字をどうすべきかの議論は戸籍の専門家にお任せするとして、現実に“違う字”として氏名に使われている文字である以上、“包摂”で片付けられては実用上不便極まりありません。