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行方不明の子供を探す「Digital Milk Carton」 (97/08/06)

Milk Carton(牛乳パック)は米国家庭の朝食テーブルには欠かせないもの。パックの側面には、「Have you seen me?(私を見かけなかった?)」という題字で、小さな子供の写真、氏名、生年月日、身長、体重、髪と目の色、性別、そして最後に目撃された場所と時間が記載されているのをよく見かける。人目に触れる牛乳パックの側面を利用した、「Missing Children(行方不明の子供たち)」の掲示広告だ。アメリカの行方不明児童の数は、Milk Cartonに毎日掲載しても追い付かないほど。悲しいことに、Milk CartonといえばMissing Childrenを連想するほど、この掲示広告は浸透している。

これらの掲示活動を行うのは、NCMEC(National Center for Missing And Exploited Children)。米国法務省の協力を得て、米国の行方不明児童の発見活動を行う全国組織だ。1990年の法務省の発表によれば、1988年の一年で、家族による誘拐未遂11万件、誘拐35万件、第三者による通報された誘拐4千件、家出45万件、置き去り12万件、理由不明で行方不明の児童44万件、という信じられないような数字が出ている。この数字の中には、多発する離婚の結果として、親権調停の前に子供を連れ去ってしまう親による誘拐も多く含まれるという。事件発生から年月が経過するごとに薄れていく世間の関心、しかも州を超えてしまえば捜査の手が届かないという実情が、発見をより難しくしている。

しかし、探す親としては行方不明の我が子が見つかるまで、全国の電柱に貼紙をしてまわりたいのが心情ではないか。NCMECではその願いをかなえるため、なるべく顔写真を人目に触れるところに掲載しようと、全国に販売される牛乳パックを媒体として使用。この他にもダイレクトメールなどの印刷物、雑誌やテレビを通じての掲示活動を行っている。デジタル写真技術の進歩もこの活動に大きく貢献しており、最近では、数年前に誘拐された子供の現在の想像写真も掲載されるようになった。

広範囲で安価になるべく多くの人に見せることが発見の鍵であるとすれば、インターネットも有効な手段の1つとして役に立つはず。捜索者データベースなどを含むNCMECサイトは、今までも多くの人に利用されてきたが、このほど大手オンラインサービスのAOLがNCMECとの共同サービスを開始した。通称「Digital Milk Carton」と呼ばれる企画では、AOLのサービスの1つとしてNCMECセクションを設け、AOL利用者にも簡単にデータベースへのアクセスを可能にしている。また、オンラインサービスならではの掲示板も充実し、開設と同時に子供たちを守るためのアイデアなど、活発な意見交換がなされている。「知らない人に連れていかれそうになったら、ただ大声を上げるのではなく『この人はママ/パパじゃない!』と叫ぶように教えよう」など、親でなければ思いつかないような提案が多い。今後、一般的なアイデアだけでなく、各々の行方不明児童に関する情報収集の場にもなりそうな気配だ。

インターネットでの子供捜索の草の根活動は、Yahoo!でもMissing Children Groupsというカテゴリーとして数多く紹介されている。牛乳パックから子供の写真が消える日を願って、それまでは「Digital Milk Carton」を含む様々な活動を応援していきたい。

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