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サオリ姉さんのSurfin'USA
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SPAMに関するあまり深くない考察(その2) (97/11/07)

本家SPAM

 さて、豚肉加工品缶詰のSPAM、つまり「本家SPAM」とはどんな食品なのか。インターネット上でのSPAMという言葉の普及で、缶詰そのものの人気も高まった(?)Hormel社は、その勢いで「SPAMTASTIC」なるSPAMホームページをオープン。その解説によれば、起源は1937年、発祥の地はミネソタ州、サンドイッチ用としてHormel社が開発したものだ。
 コンビーフに似た缶を開け、そのままをスライスしてフライパンなどで加熱して食すSPAM。レタスやトマトと共にサンドイッチにしてもよいが、コンビーフの調理法のように卵や野菜と共に炒めたり、オムレツの具にしても美味しいという解説がある。
 また、数あるSPAMレシピサイトの中でもRancito Spamanoはオススメ。正統派レシピに混じって、SPAM人気に乗じたジョークレシピも楽しい。
 長い間地味な食品であったが、インターネットでの人気のおかげで一躍ネットカルチャーアイコンに躍り出たSPAM。本家のサイトも「当社は、SPAM@SPAM.COMという発信人のジャンクメールとは、何の関係もありません」という前置き付きで、Tシャツやアクセサリーの販売にも熱心だ。少し前なら送り手の神経を疑われてしまうような「SPAM Gift Set」も、今ならネティズンの間では高級なジョークプレゼントになっているようだ。

SPAM KING vs. 本家SPAM

 SPAM缶が有名になり、インターネット用語としてもユニークな新語ができ、これで一見落着かと思いきや、これからが面白いところ。「SPAM KING」を自称するジャンクメール発信代行会社社長とHormel社の間で、名誉毀損をめぐる戦いが繰り広げられているのだ。
 「SPAM KING」と言えば、米国ではその道の第一人者(?)として有名なCyber Promotions社Sanford Wallace。「弱小企業にインターネットを使った格安な宣伝媒体を提供」のうたい文句で、インターネットにジャンクメールをばらまくWallaceに、ネティズンの大半は憤慨している。違法ギリギリであろうが、反感を持たれようが、とにかく注目の的になれば儲けものとばかりに、自分の呼び名もSanfordからSpamfordにするなど、スパム魂も筋金入り。Wallaceの悪名が高くなるにつれて、悪いイメージのSPAMが定着。
 そこで本家Hormel社がこの6月に起こしたのが「SPAM名誉毀損の訴え」。インターネット用語として使用されるのはまだしも、自社製品の登録商標がイメージの悪い商売に貢献しているのは許せない。Wallaceに対して「SPAMという名前を使用するな。spamford.comやspamford.netなどのドメイン名を登録するな」などの要求を叩きつけた。これに対してWallaceは、またまた名を売る絶好のチャンスとばかりに、要求を聞くどころか笑いが止まらない状態。「2,500万人のネティズンの語彙を、今さら変えられるわけはない」とふんぞり返っているのだそうだ。
 一方、Wallaceに憤慨しているネティズンたちも黙ってはいない。cyperpromo.comからのメールの阻止活動はもとより、このHormel社の訴えを支持する動きも出た。「Hormel社を支援しよう」と題したページでは、Hormel社の法廷告訴を実現するための署名運動が展開されている。「法廷告訴の実現を支援するため、我々は以下のことを実行します。SPAM缶もしくは他のHormel社製品を1ケース購入し、チャリティーに寄付する。または同額の現金をHormel社からとして寄付する。加えてHormel社製品を購入するよう心がける」。すでに署名している人も多いが、決着にはまだまだ一山も二山もありそうだ。

おわりに

 肉の缶詰が英国のコメディーショーを経由して、1996年にはインターネット用語に変身した「SPAM」。こうなるとは開発者のJ.C.Hormel氏も想像できなかったことだろう。こんな風にして増えていくインターネット用語には、辞書に載らない面白い逸話があるものも多い。幸運にもインターネット関連の新語の誕生を目撃できる我々だが、何十年か後、生き証人として孫の世代にこれを語り聞かせる自分の姿を想像すると、なんとも不思議で楽しいものだ。

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