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大統領のスキャンダルはネットゴシップが発端? (98/01/26)

現在全米を騒がせているクリントン大統領のスキャンダル。事の真偽はさておき、事件の表面化へのインターネットの関わりを取り上げた報道に、インターネットを情報源として利用する1人のユーザーとして少し考えさせらた。

Chicago Tribune紙が1月22日に「ゴシップサイトから72時間で全世界に」という記事を掲載。今回の米大統領スキャンダルは、実はインターネットゴシップサイトの記事が発端となっていたというものだ。このゴシップサイトというのは、30歳の自称スキャンダル狂Matt Drudgeが運営する「Drudge Report」。ここに18日午前6時、「Newsweek誌のレポーターMichael Isikoffが、クリントンと元研修生とのスキャンダルスクープ記事の掲載を同誌に拒否され、憤慨している」という噂記事が掲載された。Chicago Tribune紙によると、Drudgeは同時にAOLにも同記事を掲載、さらにML登録者の数1,000人にもメール版を配布したという。スキャンダルが一般メディアで報道されたのは20日夜のWashington Post紙が最初であったから、約3日前ということになる。

Newsweek誌のスクープ記事は実際に存在した。「Diary of a Scandal」と題した記事には、その時点では一般に知られていなかったMonica Lewinskyの存在と大統領との関係を語ったテープの内容、独立検事局とのやりとりなどが記載されている。もし19日発売の号に掲載されていたら、大反響を呼んでいたであろう内容だ。この記事は、21日に一般メディアの一斉報道が開始された後、内容の一部がWWW号外としてWashington Post紙サイトとAOLに掲載された。その全文は26日発売の号に掲載される予定だ。

同記事の中で、Newsweek誌は掲載を見合わせた理由として、Lewinskyへの調査不足や真実性への疑問、加えてその時点で明かされていなかったLewinskyの名前公開の躊躇などを挙げている。一般報道の一番手となったWashington Post紙には、Newsweek誌がこれらの理由に加えて、進行中の独立検事局の事件調査への悪影響を考慮したこと、雑誌の締切に間に合わせるためだけに納得のいかない内容を掲載しない結論に達したことなどが記されている。

同記事の中でWashington Post紙は、今回のスキャンダルの発見ソースを明かしている。インターネットゴシップサイト「Drudge Report」の18日の記事にワシントン中のレポーターが飛びつき、すでに何らかの情報を持っていた者はそれらの確認に殺到したというもので、前述のChicago Tribune紙の記事を裏付ける内容だ。その結果が21日の一斉報道というわけで、当のNewsweek誌も記事掲載をせざるをえなくなったという展開らしい。

今回のスキャンダルがいかにしてインターネット上で瞬時に広がったかをまとめたCNETの記事では、未だに一般からは誌面媒体より噂要素の高いとされるネットメディアが、いかにスクープ掲載に威力を発揮しているかが述べられている。事実、今回のようにDrudge Reportのようなゴシップサイトが、簡単に体制にまで影響を与えることができるという構図がどうやらでき上がってしまっているような印象を受ける。また、Newsweek誌の掲載見合わせの判断を「良識ある行為」として評価する一文があり、その良識がインターネット上ではいとも簡単に覆えされてしまうようで、なんとも苦い思いが残った。

今回のスキャンダル事件の浮上は時間の問題ではあったと思うが、公開時期をせかされたために起こった不用意な報道が多々あったのではないかと思う。Drudge Report自体は「Net Papparazzi」とも呼べるスキャンダル狙いのサイトであるが、今回の事件でこのようなゴシップサイトがさらに急増するのではないかという心配もある。「誰よりもはやく」を狙うために情報の質や人間としての良識に欠けるとしたら、それはむしろ迅速性が仇になるということだ。また、ゴシップサイトを繁栄させるかどうかは、一般メディアと同様に利用者の良識次第だ。氾濫する情報に撹乱されないためには、自分自身で善し悪しを見分ける知性を養わなければならないことを、改めて感じる事件だった。

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