1997年6月11日版
HEADLINE 3 articles
●東芝はインターネット接続専用回路チップを開発すると発表
●仏裁判所はフランス国内の英語だけで書いたホームページ開設訴訟を却下
○NECのソフトMPEG2デコーダー開発
余談3題:スマート・ターゲット・プラス/個人用HP動画制作サービス/C&Fortran→Java
[リサイクル][PC](レベルA')
●東芝は、インターネット接続専用の回路技術を開発すると発表
日経産業新聞11面には、東芝が、米アイレディ社(iReady
Corp.,、加州)からライセンス供与を受けて、インターネット接続専用の回路技術を開発すると発表した記事が掲載された。「インターネット・チューナ」の設計技術の供与を受けるようで、CPUを使わずにその専用回路だけを使うと、接続が容易になるほか、省電力化と低価格化が実現できるらしい。
iReady社の6月10日のプレスリリースでは、このInternetTuner技術を東芝がASIC化して世界市場に出すとしており、携帯電話やテレビなどへの搭載が考えられているようだ。また、仮想ソケット・インターフェース(VirtualSocket
Interface:VSI)に対するのコア技術にInternetTunerがなるだろうともしている。
今まで一般的には、インターネット接続用には、パソコン等のコンピューターが必要だと思われがちではあるのだが、家電機器などをインターネット接続するためには現在のパソコンでのTCP/IP設定など、一般消費者が使用するには難しすぎるきらいがある。だからこそ、こういった専用回路なり専用ソフトでの接続の簡易(ブラッックボックス)化が必要なわけで、その点で東芝は着々とインターネット家電時代に歩を進めていると言える。
かつて、電気や水道、ガスなど生活インフラにつなぐことを簡便にしてきた歴史を鑑みて、さすがにソケットやプラグをつなぐだけでインターネット接続しろとは要求しないまでも、電話並の契約と接続の簡易さのレベルまで、インターネット接続手法も持ってくる必要があるだろう。
#情報も生活の必需品になるのが21世紀なのだから。
[文化摩擦][国内法](レベルA')
●仏裁判所は、フランス国内で英語だけで書いたホームページ開設が合法かどうかの訴訟を却下
日経新聞9面には、フランス国内で英語だけで書いたホームページを開設するのが合法かどうかの初めての訴訟を、パリ警察裁判所が「訴訟手続不備」として却下したという記事が掲載されている。この訴訟は、米ジョージア工科大・仏分校が学生勧誘などのために開設したホームページが、完全に英語で書かれていることを争点としていたようで、政府認可を受けた2つの仏語保護団体が今年初め、同ホームページについて「仏国内で発表される公的文書や放送などに仏語の使用を義務付けている法律(トゥボン法)違反」として訴えたものらしい。
この新聞記事にもあるとおり、この判断は、英語がインターネット界でデファクトととなっている現状と、仏語保護を政策として掲げるフランス政府の間に立った、苦汁の選択とも言えるのだろう。
フランス人(もしくは仏政府)がかたくなで、高いプライドを持ていることは、一昨年のムルロア環礁での核実験を強行したことにも如実に現れているのだが、それもこれも”フランスたるもの”を守ろうとするナショナリズムの高まりが後押ししていると考えられる。この訴訟も一部の先鋭化されたナショナリストから起こされた訴訟と思われるが、言語から自国の文化なりアイデンティティを守るべきとする態度には、日本やアジアのNIES諸国において英語が氾濫し、その国らしさが失なわれつつある現状を見るにつけ、ある部分では共感出来る気はする。
しかし現実のインターネット世界を見ると、言語だ文化だと議論する以前に、国境を越えてコミュニケートするにはどうしたら良いかという答が、この英語デファクトを生み出していると言える訳で、やはりパリ警察裁判所の判断は、かたくななフランスにしては正しかったと言えるのではないだろうか。
[MPEG技術](レベルA')
●NECはTV放送並みの動画/音声をリアルタイム復号/再生出来るソフトMPEG2デコーダーを開発
日刊工業新聞5面には、NECが、TV放送並みの品質で、動画と音声をPCソフトのみでリアルタイム復号/再生できるソフトウェアMPEG2デコーダーを開発したという記事が掲載されている。IntelのMMXペンティアム搭載のPCで、駆動周波数が266MHz以上(MMXは233MHzが出たばかりなので、266MHz動作ができるPentiumIIと混同している?)で動作するらしい。また、この新聞記事にあるように、ソフトのみでリアルタイム復号できれば、高価なデコーダーチップを使わずにTV放送並みの動画再生が出来るので、DVD等での映画をPC上で安価に見ることが出来るようになることから、PCと家電機器を結び付ける技術としても注目される。
こういった技術から、インターネット放送なども画質が向上し、より放送商品価値が上がってくる事が期待される。本日トップ記事のインターネット接続をチップ化する技術とは、ハードとソフトに特化するという方向性の違いはあるものの、より実用(使い物になる)性の高い技術サービスを目指す点で、日本のメーカーの面目躍如たるものがありそうだ。
余談その1:
日経産業新聞2面には、エヌ・ティ・ティ・アドが、9月から検索サービスのgoo(グー)を媒体にした新タイプのインターネット有料広告「スマート・ターゲット・プラス」を始めるという記事が掲載されている。接続しているPCのOSやブラウザー、ドメイン名などユーザー属性に応じて表示する広告を変えることが出来、広告主には自社の顧客ターゲットに合わせた広告をきめ細かく出せるようだ。
「goo」が検索サービスとしては後発ながら、あっという間に利用者を増やした勢いを駆って、ヤフー!の様に有料広告掲載を6月から展開しているわけだが、その広告展開をパーソナライズすることにより事業拡大を狙っているのだろう。
インプレス社がNTTとはじめたパーソナル化記事提供サービス「WatchSmartPage」も、”スマート”がキーワードになっており、パーソナライズ化がどれだけ”スマート”と感じさせてくれるか、ともに注目だろう。
余談その2:
日経新聞17面には、デジタル画像処理のドリーム・アーツが7月18日から、ソフト開発の愛があれば大丈夫、オラシオン、シナジー幾何学の3社と共同で、個人からホームページ用の動画制作を請け負うサービスを始めるという記事が掲載されている。利用者がデジカメで撮影した写真をインターネット経由で制作会社に送り、3社が用意したキャラクターを指示して動画キャラを作るようだ。
この4社はいずれもCD-ROMやエンターティンメントCDの製作で実績ある会社なので、マクロメディアのディレクターで作成したキャラをショックウェーブなどで見ることになろうが、目立ちたがり屋には”うける”サービスかもしれない。
余談その3:
日経産業新聞5面には、米アポジ-・ソフトウェア社(ApogeeSoftwareInc.,)が、Cやフォートラン等のプログラム言語をJava言語上で使えるようにするソフトを開発したという記事が掲載された。
既にSUN SPARC上でのコンパイラーは発売しているようだが、そのあたりのノウハウを活かしたのだろう。
昨日のNEWSWatch掲載のPCリサイクルと同様に、ハードばかりでなくソフトもネットワーク・コンピューティングの為にJavaアップ・グレードすれば、立派なリサイクルだろうか。
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