ウォッチャー金丸のNEWS Watch
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1997年8月20日


HEADLINE 2 articles

日本の通信行政の行方は...
NTT携帯電話やPHSで使えるデータ符号化技術
余談3題:電子公証/2000年チェック/映画PRサイト



[行政改革][通信](レベルA
日本の通信行政の行方は...
行革会議の集中討議にて、郵政省の再編合意されたことを受けて


 日経新聞1面トップと2面及び3面、そして日刊工業新聞1面と2面には、19日の行政改革会議の集中討議のやり取りも含めた記事が掲載されている。NIKKEI-NETでも「行革特集」としてまとめた重要ニュースページが構成されている。
 今回の行革の目玉である省庁再編においては、まず現行の8省庁(建設運輸農水通産厚生労働郵政文部)と2庁(環境科学技術)の枠組みを、新たに設立される6省(国土保全、国土開発、環境安全、生活福祉、経済(産業)など)や行政委員会などに統合する議論が橋本首相自らの主導のもとで行われ、今回の集中討議において合意されたようだ。その中でも特にインターネットも含めた通信分野において最も関係が深い郵政省も解体されることとなり、情報通信分野は通産省を改組して作られる「経済省」に移管することとなるようだ。それにともない、電波管理などの通信の規制・監督部門も、行政委員会方式に移行するとしている。
 これらの再編が行われるとすると、21世紀の日本の通信事業そのものに与える影響は、計り知れないものがありそうだ。まず、今まで郵政省内で行われてきた電波や伝送通信技術の研究開発などにおいては、ある程度、科学技術の基礎的な探求を中心としたものもあったのだが、今後は将来の経済性を充分に考慮し、産業に寄与するものがより優先される傾向が強まるだろう。
 また、電波管理などの既得権を発生させるような部門を、公取委のような行政委員会方式に移行すれば、現在行っている資格・免許申請制度も、産業界での独占禁止といった、競争原理を働かせるためのよりフラットな公平性を求められることになろう。
 インターネットなどのネットワーク通信についても、技術的な部分での施策や規制などの比重より、実利的な部分での施策や規制の比重が増してくる可能性があると思われる。
 この再編によって、米FCCのように通信産業界全般を緩いがしかしリードしていくような組織を生み出すのか、それとも船頭多くして何とやら、というような事態を生み出してしまうのか、21日までの集中討議を経た行革会議の「中間報告書」などからも、少しづつその姿が見えてくることだろう。
 ただし、これから各省庁からの猛烈な反発があると予想されるだけに、後世において「あの時、橋本首相が頑張ってくれたから、現在の日本の繁栄がある」と言われるようになれるかどうかのターニング・ポイントを、今迎えているのは間違いないところだろう。



[データ符号化][モバイル](レベルB
NTT携帯電話やPHSで使えるデータ符号化技術


 日経産業新聞5面には、NTTが移動体通信のような、伝送速度の遅い無線通信に適したデジタル音楽信号の符号化技術を開発したという記事が掲載されている。16kbps~32kbpsと伝送速度の遅いPHSや携帯電話などに、この技術を採用した専用アダプターを接続すれば、AMステレオ放送並の音質で音楽が楽しめるということらしい。「ベクトル量子化」という符号化技術を応用しており、粗い動画伝送にも使えることから、不特定多数対象のオンデマンド・マルチメディアサービスやデジタルラジオの通信方式などにも採用を呼びかけていくようだ。
 他にも、圧縮データ復号時にノイズリダクション処理を入れて雑音レベルを抑えたり、伝送エラー検出機能や欠落データの推測機能などを持たせて音声などが切れ切れになるのを防いだりと、リアルタイムなデータ再生性能を向上させる技術も併せ持っているようなので、TCP/IP上でのモバイル・コンピューティングにも寄与できる技術だと思われる。当然、この技術を使ってモバイルしながら音声再生や画像受信などを行う場合は、プラグイン・ソフトやヘルパー・アプリケーションの作成が必要となってくるのだが、携帯電話やPHSを使ったラジオ放送などの情報提供番組が一般に普及してくれば、モバイル・ユーザー向けにも機器やアプリが提供されてくるようになるだろう。今の携帯やPHSの音声通話時の雑音や音声切れの対策にも、すぐ使っていただきたい技術とも言えそうだ。




余談その1:
 日経産業新聞2面には、通産省系の(財)ニューメディア開発協会が10月から、ネットワーク時代の社会インフラとして導入が期待されている「電子公証 」の実験を始めるという記事が掲載されている。公的文書の申請及び届出やインターネット上の買物などの際に、同協会が設置する「電子公証センター」が契約内容などを保証して、取引を円滑にするシステムを開発する為に、電子公証の課題や事業性を来年2月末まで検証するようだ。
 以前から「電子公証」と似た言葉に「電子認証」があるのだが、認証の方は日本ベリサインの「電子認証サービス」など、数社の民間企業が既にサービス先行させている。(4月28日5月29日のNEWS Watch記事を参照)そういった中で「公証」サービスを展開するには、保証の強度が格段に上がっていて、かつ使いやすさも同時に要求されることになるだろう。

余談その2
 日刊工業新聞2面及び日経新聞7面には、日銀が金融機関のコンピューターが2000年問題に十分対応しているかどうかを考査する「チェックリスト」を作成し公開したという記事が掲載されている。今までの金融機関への2000年問題の啓蒙に加えて、今後はこのチェックリストをもとに考査時に指導を行い、2000年到来時での金融ネットワークシステムの安全性確保を図るということのようだ。
 果たして、これからチェックリストを使うような大手銀行の対策が間に合うのか、そちらの方が心配になるのだが...

余談その3(8月14日のINTERNET Watchダイジェスト記事を参照)
 日経産業新聞3面には、映画製作や配給を手がけるギャガ・コミュニケーションズが、ホームページ上で動画ソフトを使い、新作映画の宣伝告知を始めるという記事が掲載されている。今回PR制作したのは、ヘミングウェイの青年期の恋愛を描いた米国映画「ラブ・アンド・ウォー」(サンドラ・ブロック主演)用の宣伝コンテンツで、劇場PR版とは別に、新たにダイジェスト版を製作したらしい。再生には、RealPlayerやShockwave Flashが必要のようだ。
 残念ながら上記の映画は、サオリ姉さんのSurfin'USAの「今週の新着映画サイト」では紹介されてはいないのだが、アメリカでの映画PRサイトの充実(エンターティンメント)ぶりは、サオリ姉さんの毎週のリポートからも伺い知ることができる。日本もやっとその入口に立ったと言えるだろう。



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