[レポート]
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普通の電話線で6~8Mbpsが可能になるADSL技術をNTTは採用するか
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 光ファイバーでない普通のメタル電話線で高速通信が出来るADSL(Asymmetric
Digital Subscriber Line)という技術が米国で話題になっている。これは、93~94
年のビデオオンデマンドの開発競争の過程で生まれた技術である。ただし、米国でも
まだ実験段階であり、一般に利用できるようになるのはもう少し先になりそうである。
 ADSLは非対称通信、すなわち下り(受信)と上り(送信)の通信速度が異なるもの
であり、下りは6~8Mbps、上りは576K~768Kbps位の所が多く、伝送距離は3.5~4km
である。通常のモデムやISDN通信と異なり、高速ではあるが伝送距離に限界があるの
がADSLの特徴である。
 ADSLでは電話局と家庭の両方にADSLモデムを置く。電話局側にもADSLモデムがない
と通信ができない。つまり、ADSLは電話局がこのサービスを提供してくれないと利用
できないのである。この点で、ISDNと似たサービスである。
 日本では、市内電話網はほとんどNTTの独占になっているため、NTTがADSLサービス
を提供してくれない限り6~9Mbpsの高速通信は使えない。NTTで唯一ADSLの研究を行
っているNTT光ネットワークシステム研究所研究部長の山下一郎氏は、「NTTはADSLサ
ービスは行わず、光ファイバーをFTTH(Fiber to the Home:家庭まで光ファイバー
を引き込むこと)で敷設することに全力を注ぐ」と語っている。
 NTTは、次の3つの理由から伝送距離が実際には3.5~4kmよりもっと短くなり、ADSL
サービスが受けられる人と受けられない人に分かれてしまうため、ADSLサービスを行
わないとしている。

○米国では電話局と家庭の間の電線距離が5km位までであるのに対して、日本では7km
 である。
○米国では電話線のメタルの太さが0.5mmなのに対して、日本では0.4mmである。この
 ため、伝送速度も伝送距離も米国より低くなってしまう。
○6~8Mbpsで伝送距離が3.5~4kmというのは、1番良い回線品質の状態でのことであ
 り、電話線の「より対線」の間の絶縁材料によっても平衡度が変わり、伝送速度も
 伝送距離もこれより低くなる。 

 先日の「Networld+Interop96」の基調講演でも、NTT社長の宮津純一郎氏が「2010
年までには加入者線の完全光ケーブル化を予定している」と語っていることからもNT
T、光ファイバーに力を注いでいるが分かる。ただし、他の市内電話網提供業者がADSL
サービスを行うかどうかは分からない。これについては、もう少し調べてまた報告し
たい。
[Reported by uesugi@impress.co.jp]

(96年8月1日)