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【不定期連載】

使ってみました!インターネットショッピング決済技術

第4回「First Virtual Internet Payment System(ファースト・バーチャル)」

 昨年から本格的に始動したエレクトロニックコマースだが、昨年まではそのほとんどが実験的に行なわれるもので、実際に使える所は少なかった。しかし今年になってようやく私たちにも利用できるものが増えてきた。一口にエレクトロニックコマースや電子決済と言っても、クレジットカードを使った支払いから、カラオケを一曲歌ったときにわずかな金額を支払うといったような使い方まで幅広い。このシリーズでは、WWWサイトのセキュリティの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素を検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。

 さて、4回目は暗号化などを行なわず、日常的に使っているインターネットと電話を利用して安全性を確立した決済方法「First Virtual」を紹介する。


■こうしてFirst Virtualは始まった

 インターネットを使ったショッピングはまだ歴史が浅く、初期の頃はクレジットカード番号をそのまま電子メールで送ることもあった。これではクレジットカード番号が盗聴される可能性があるということで、安全な決済手段として'94年8月より開始されたサービスがFirst Vitual(FV)だ。

 FVは、電話を使ってクレジットカード番号を登録して会員番号(「Virtual PIN」と呼ばれる)をもらい、購入時にはクレジットカードの代わりにVirtual PINを入力するというシステムだ。年会費2ドルが必要だが、インターネット上ではカード番号を直接やりとりしないため、仮に盗聴されたとしてもクレジットカード番号を盗まれる事はない。FVはインターネット上の決済だけに限定されており、利用確認も電子メールで行なわれる。最終的な支払いは、既存のクレジットカードだ。

 そもそもはインターネット上でダウンロードしたソフトウェア代金の支払いに考案されたようだが、現在ではCDなど一般的な商品を販売するShopping Directoryとニュースやソフトウェアといったデジタル情報を販売するInfoHausに大きく分かれおり、500を超えるサイトの決済方法として利用されている。

Virtual IDをもらう

登録までの大まかな流れ

  1. FVのWWWサイトより入会申込みを行なう
  2. FVより電子メールにてクレジット番号の登録案内が送られてくる
  3. FV登録センターへ国際電話またはFAXでクレジット番号を登録する
  4. FVより電子メールにてVirtualPINを受け取る

■WWWサイトより入会申し込み(経過時間0分)

 FVのWWWサイトより、入会申し込みを行なう。海外の会社なので、当然ながら英語で入力する。連絡先の登録で気をつけるべき点は、自宅の電話番号を入力するときに先頭に日本の国番号81を付け、市外局番の最初の0をとって(東京23区の場合には+81 3 1234 5678など)登録することぐらいだろう。またPIN-Choiceには、他人が連想しにくい英数字で8-24文字の範囲で入力する。これにFVが何らかの手を加えたものが「Virtual PIN」となる。すべて入力が完了したら、「Submit Buyer's VirtualPIN Application」ボタンを押す。正常に終了すればすぐに「Thank You!」と表示されるはずなのだが、なぜか今回は表示されるまでに5分くらいかかった。

■国際電話でクレジット番号登録(10分)

 メールボックスを確認すると、すでに登録案内の電子メールが届いていた。案内には、まず最初に申し込みのために電話をかけること、USおよびカナダからはフリーダイヤルが用意されているが、それ以外から電話するときは通常料金の電話番号に電話をすること、登録案内に書かれている「application number」と登録するVISAかMasterCardのカード番号と有効期限をあらかじめ用意しておくこと、手順通りに登録をするとVirtualPINが電子メールで届くことが説明されていた。

 早速、国外向けの番号に電話をしてみる。001-1-214-…とダイヤルすると、英語とスペイン語のガイダンスが流れた。英語の場合はプッシュホンの「1」を押し先に進む。次にapplication numberを求めてくるので、先ほど送られてきた番号を入力。今入力した番号が復唱され、間違いがなければ「1」を、再入力するときは「2」を押す。同じようにクレジットカード番号と有効期限も入力する。最後に「Thank you Byebye!」と流れれば終了だ。約3分程度で終わり、英語がかなり苦手な私でも何とかなったので、入力さえ間違えなければ大丈夫だろう。なお、夜間にKDDを使ってアメリカに国際電話をかけた場合の料金は370円/3分だ。

電話から入力するものをまとめると以下になる。

「1」 + application_number +「1」+ カード番号 +「1」+ 有効期限 +「1」

■すぐ登録ができた(20分)

 電話を切ってさっそくメールを確認してみると、すでにVirtualPINが記入されたメ
ールが来ていた。これでFirst Virtualの登録は完了だ。WWW、電子メール、国際電話
と特別な技術は何一つ使っていないが、自動的に処理されるので時間的にはあっとい
う間に完了した。

海外への支払い方法にはGood!

利用の大まかな流れ

  1. 店舗WWWより購入申込、Virtual PINを入力
  2. FVより購入の確認通知が届く
  3. FVへ確認通知の返答を返す

■試聴できるWWWショップでCDを買う(経過時間:0時間)

 商品の販売をするShopping Directoryやデジタル情報を販売するInfoHausには、現在500以上のサイトがリンクされており、中にはInterNICでドメイン名を取得する際の支払いにも使えるようだ。その中から環境音楽を販売しているLinden MusicのCDを買ってみることにした。このLinden Musicでは、CDに収録されている音楽をRealAudio3.0以降(RealPlayerも可)を使って一部試聴することができる。欲しいCDが決まったら画面上の「OrderDisks」を選び、支払い方法にFIRST-VIRTUALを選択する。画面の指示通り欲しいCDにチェックを入れて、届け先とメールアドレス、購入金額を入力後申し込みボタンを押す。「Thank you for your order via First Virtual.」と表示されれば完了だ。Linden Musicは日本からでも購入することができるが、送料が10ドルと割高になってしまう。

■申し込んだ内容をチェック(26時間)

 Lindon Musicに申し込みをしてから約2日後の朝、CDを購入するかどうかを確認する電子メールが来た。メールには購入した商品の内容や金額、送付先などが書かれている。内容に対して間違えがなければ『Yes』を返信する。万一内容に間違いがあり、申し込みをキャンセルしたい場合は『No』を、申し込んだ覚えがなく誰かが不正使用したと思ったときは『Fraud』を返信する。Fraudを返信したときは、それ以後Virtual PINは使用できなくなるので間違えないようにしよう。

 『Yes、No、Fraud』を返すときは、必ず来た電子メールに『返信』する。これは表題により誰宛の応答かを自動的に処理するためだ。本文中にYes、No、Fraudの文字以外を記入してはいけないのも同じ理由からだ。

 返信したメールが問題なく処理されると『payin-notification』というタイトルの作業完了のメールが届く。後は商品を待つだけだ。

■First Virtualはどうだった?

 最初に申し込みをするときは、WWWと電子メール、国際電話を使って手続きしなければならないが、さほど難しくはなかった。特に電話でクレジットカードを入力できる自動応答システムは便利だと思う。しかし、実際に何かを購入するとき、申込みを行なってから確認の電子メールが届くまでに、1日以上待たないとならない点は使いにくい。しかも、この時間差を悪用すれば、オンラインで受渡しが完了してしまうソフトウェアやデジタル情報などは、申込み後の確認メールが届く前に情報が入手できてしまう。とはいえ、この点は販売者側のリスクとなっているため、利用者が『No』や『Fraud』を返信した場合、代金の請求はされないので安心だ。

 なお、このFVで行なわれている作業手順は「Green Commerce Model」として紹介されている。本シリーズ第3回で紹介したアコシスは、このGreen Commerce Modelを参考にして構築されていると思われる。

 また今回紹介したLinden MusicではFirstVirtual以外に既存のクレジットカードや小切手、現金、請求書発行と様々な支払い方法が選択できる。FVとクレジットカードが並記されているところから、米国の一部ではインターネットの支払い方法として、FVはクレジットカードとは違った地位を確立しているようだ。

First Virtual スペック

●入会にあたって
入会条件:

  1. VISAまたはMasterCardを利用できる人
  2. 電子メールを利用できる人

●利用にあたって
プラットフォーム:

  1. WWWブラウザが使えること
  2. 電子メールが使えること

費用:年会費2ドル
利用技術:特になし

評価基準(三段階評価)
 設定の簡便 :★★☆
 安全性の配慮:★★☆
 利用金額  :★★★

 ○従来ある技術を多用しているので設定自体は難しくないが、
  初期登録時に国際電話またはFAXをする必要がある。
 ○クレジットカード番号がインターネット上に流れない及び
  加盟店にも知られない。
  通常の電子メールで行なわれているため、改ざん及び盗聴される
  危険性は残されているものの、利用範囲がインターネット上と限られているた
  め、他の場所で不正に利用される事はない。

First Virtual 関連サイト

◆参考情報サイト
・SMART COMMERCE NETWORK
http://www.jnetcom.jeida.or.jp/ec/papers/2-01/fv1a.htm
「First Virtual社のサイバーショップ利用による利用者認証とその特徴の調査」
・Criss & Cross Atlantic
http://www.ccaweb.com/fv/fvinfo.html
入会方法が日本語で紹介されている。

◆日本語で掲載されているFVサイト
・Tokyo decadence
http://www.t-decadence.com/
村上龍の小説を購読できる有料サイト。(本誌6月27日に関連記事)
・Criss & Cross Atlantic
http://www.ccaweb.com/
バーチャルドメインサービスを提供しているサイト。
・JAPANESQUE
http://www.jpsq.com/
こけしや扇子など日本のものを売っているサイト。
('97/9/5)

[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.or.jp) ]




第1回「TSM(トッパン・セキュア・モール)」
/www/article/970509/ec.htm


第2回「BitCash」
/www/shopping/bitcash.htm

第3回「アコシス」
/www/shopping/acosis.htm

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