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【不定期連載】

使ってみました!インターネットショッピング決済技術

第5回「QQQ Members Commerce System」(サンキューシステム)

 昨年から本格的に始動したエレクトロニックコマースだが、昨年まではそのほとんどが実験的に行なわれるもので、実際に使える所は少なかった。しかし今年になってようやく私たちにも利用できるものが増えてきた。一口にエレクトロニックコマースや電子決済と言っても、クレジットカードを使った支払いから、カラオケを一曲歌ったときにわずかな金額を支払うといったような使い方まで幅広い。このシリーズでは、WWWサイトのセキュリティの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素を検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。

 さて、5回目はプリペイド式の小額決済とカード決済を併用したシステム「QQQ Members Commerce System(サンキューシステム)」をプリペイド式に焦点を当てて紹介する。

QQQシステム本格運用開始

 本誌4月22日号で紹介した、QQQ(サンキュー)システムが『サンキュー』の語呂に合わせて平成9年9月9日に本格運用を開始した。

 このQQQシステムは、インターネットプロバイダー「The FSI Network(FSI)」を運営している富士ソフトABC株式会社が、会員向けにネットワーク上で利用できる「FSI商品券」を発行したのが始まりだ。これを拡張し、FSI会員以外にも利用枠を広げたものが、今回紹介するQQQシステムだ。すでに1万人を超える会員がおり、総額1,700万円相当のデジタル商品券が流通しているという。

 QQQシステムは、数十円程度の小額決済に適したプリペイド方式のQQQ商品券と、1,000円以上の商品を購入する場合に利用できるクレジット決済の2種類があり、用途によって利用者が選んで買い物をすることができる。

 このうち、今回注目したいのは、プリペイド方式の「QQQ商品券」だ。WWW上にある競馬の予想や健康診断、ニュース情報などのほか、アイコンや占いといったデジタルコンテンツの小額商品の支払いに利用できる。ほかのプリペイドカード式のシステムと違いい、他の会員へ譲渡することや現金に払戻しをすることも可能で、一種の電子マネー的な使い方もできるというものだ。

 一方で、加盟店側は「QQQシステム」を利用すれば、決済処理やデジタルコンテンツの配送処理などをQQQシステム側で代行してくれるため、新たに課金システムを構築しなくても良いというメリットがある。すでにデジタルコンテンツを持ってはいるが、販売システムの構築に躊躇しているところには朗報だろう。またクレジットカード決済でもVISAやMaster Cardなど8種類のクレジットカードが利用できるのもメリットだ。

 現在のFSI会員も含めたQQQシステム会員数は約12,000人。実際に利用できる加盟店は29店舗だ。富士ソフトABCによると、来年3月までに、加盟店を500店舗に増やすとしている。

入会手続きはいたって簡単

登録までの大まかな流れ

 1.WWWサイトより入会申込事項を入力し送信
 2.WWWサイトにて会員番号とパスワードを確認
 3.電子メールよりQQQシステム登録の確認
 4.郵送にて会員番号とパスワードの通知

■WWWサイトより入会申し込み(経過時間0分)

 QQQシステムのWWWサイトより「現金決済およびクレジットカード決済を利用する」を選択すると、申込画面が表示されるので必要事項を入力する。
 盗聴防止対策としてSSLで保護されているので、クレジットカード番号などが漏れる危険性は低いが、信用できないという人は、クレジット決済が利用できない機能限定の申し込みを選べば、クレジットカード番号を登録する必要はない。

■入力内容の確認(3分)

 最初の入力が終了すると、先ほど入力した内容が画面に表示されるので、間違いがないかの確認を行なう。ここで、「この内容で申し込みを行ないます>>>」を押すと申し込みが確定し、後戻りはできなくなる。

 QQQシステムは、メールアドレスで重複確認をしているため、同一のメールアドレスで何度も申し込むことはできない。また存在しないメールアドレスを入力しても、登録後に登録の意思を確認するメールが届き、それに返事をしないと登録を取り消されることもある。

■登録はいたって簡単(4分)

 入力内容の確認を行なうと、即座にユーザーIDとパスワードが画面に表示される。このときに表示されるパスワードは、ランダムに生成されているのでとても覚えずらい。後ほど設定変更などが行なえるサービスカウンタで、パスワードを変更するとよいだろう。

 なお、QQQ商品券の残高は、サービスカウンタ内の利用明細を見れば分かる。

■申し込みの確認メール(5分)

 申し込みが完了してから、「ご登録完了のご案内」が電子メールで送られてくる。
メールの指示に従い、返信すれば登録作業は完了だ。申し込み時に登録したメールアドレスが間違っていたなどの問題で1週間たっても返信を返さなかった場合は、申し込みは無効となる場合がある。

■確認書類が到着(4日後)

 郵送にてユーザーIDとパスワードなどの確認のために、申込内容が印刷された入会確認の通知が届いた。内容に間違いがないかを確認し、誤りがなければ特に行なうこと
はない。

 申し込み自体は、WWW上から数分で登録できる。登録が完了すればすぐ利用できるが、QQQ商品券が無い場合は別途以下に紹介するQQQ商品券の購入手順を踏まなくては使えない。

QQQ商品券を使ってみよう

■「サービスカウンタ」で残高確認をしよう

 入会できたら、まず「サービスカウンタ」へ行ってみよう。最初にユーザーIDとパスワードを聞いてくるので、それらを入力すると、「購入」、「払戻」、「譲渡」、「利用明細」、「設定変更」の5つの項目が表示される。このサービスカウンターは、いわば財布のような役割だ。この中で「利用明細」を選択すると、現在までの利用履歴とQQQ商品券の残高が表示される。

 本格稼働を記念して、先着2,000名に500円分のQQQ商品券がもらえるキャンペーンを行なっているため、すでに500円分のQQQ商品券が入っていた。この際に、サービスカウンタでのQQQ商品券の購入上限まであと99,000円と表示されていたので、99,500円ではないのかと問い合わせてみたところ、QQQ商品券の利用限度額が100,000円で、購入最小単位は1,000円なため、1,000円以下は切り捨てて表示されるとのことだった。

■デジタル商品券を買ってみる

 「QQQ商品券」を買うには、サービスカウンタより「購入」を選ぶ。購入額は1,000円単位で、フォームタグに購入額を入力する。なお、QQQ商品券の残高がある場合は、残高が表示される。次にすすむと、確認画面が表示され、OKボタンを押すと振込先銀行が表示される。

 さて、ここで気になったのは支払い方法だ。ページによると、「支払い方法は銀行振込だけ」と書かれている。登録してから間もないためなのかと疑問に思い、QQQシステムへ問い合わせてみたところ、「カード会社と交渉中につき現在は銀行振込のみの受付となっている」とのことだった。やはり、振込に銀行へ行くのは面倒なもの。ぜひ、クレジットカードでの決済をできるようにしてほしいところだ。

 申し込んだ翌日に、電子メールでもQQQ商品券購入の確認通知が届いた。銀行より指定された口座に入金を行なってから待つこと1日半、申し込みをしてから4日目でようやく入金が確認され『QQQ商品券発行のご案内』のメールが届いた。
 ここまでの流れは次のとおり。

 購入申込 → 購入確認通知 → 銀行振込 → QQQ商品券振込

 なお、QQQ商品券は購入時にプレミアムとして、購入額の5%がサービスされる。

 また、現在はキャンペーン中につき口座開設費は無料だ。今後有料(1,000円)とな
った場合でも、入会時に1,000円分のQQQ商品券がもらえるとのことなので、実質的には無料といえる。しかし、それならば最初から無料にしたほうが、誤解が少ないのではないかと感じた。そして当面は、入会金も銀行振込になるという。支払方法は、QQQ商品券の購入支払と同様にカード会社と交渉中とのことだ。

■QQQ商品券の譲渡や払戻しをしてみる

 QQQシステムは、会員内の他人の口座にQQQ商品券を譲渡することができる。アコシ
スやNET-Uなど、ほかのプリペイドカード型と呼ばれる決済サービスがいくつかある
が、「譲渡」や「払戻し」に対応しているところは珍しい。

 さて、譲渡を行なうには、サービスカウンタより「譲渡」を選ぶと、QQQ商品券の残高と譲渡可能な金額が表示される。WWW上のフォームから、QQQ商品券を譲渡したい相手の名前とメールアドレス、譲渡する金額を入力すれば終了だ。

 ただし、この譲渡と払戻しに関しての処理は自動化されていないため、入力時にチェックがされていない。仮に相手を間違えて入力することもできてしまうので注意が必要だ。譲渡をした場合、相手方にもメールで通知が送られる。この通知に、送り主から相手の人へ、メッセージを添えられるほか、譲渡日を指定することもできる。

 実際にQQQ商品券を譲渡すると、翌日に譲渡することを確認するメールが届いた。
内容を確認し、問題なければその旨を返信する。特に所定の形式はなく、分かるように返信を行なえばよい。

 2日後に、譲渡完了の通知が届いた。同日に、譲渡を行なった相手にもQQQ商品券が振り込まれたという旨のメールが届いた。

 一方で払戻しだが、こちらは先ほどの譲渡の場合とほぼ同じだ。WWW上で入力する項目に振込先が増える程度。どちらも手数料がかかるが、譲渡は1回あたり200円。払戻しの場合は高く、払戻し額の5%+700円となっている。ちょっと手数料が高いように思い、問い合わせてみたところ、「譲渡の場合にかかる200円は、当方の事務手数料。払戻しに関しては、QQQ商品券を購入時に5%のプレミアムをつけているため、払戻し金額の5%と、譲渡の場合と同様に事務手数料として200円。また、銀行への振込手数料として500円という内訳になっている」とのことだった。

■注意したいところ

 サービスカウンタからのQQQ商品券の購入や譲渡、払戻しにおいて、WWWブラウザーより手続きをしていると「次へ進む>>」というボタンはあるのだが、「中止」や「訂正」のボタンが無い。仕方がないのでWWWブラウザーの「戻る」ボタンで前画面に戻ろうとするのだが、プログラムで処理されているため「Data Missing」と表示されてしまった。正常に中断するためにはサービスカウンタの「購入」、「払戻」などを一度選ぶしかない。
 譲渡や払戻しを正常に終了させても手作業で処理を行なっているため、すぐには取引明細の残高は更新されない。このため、残高以上の商品を買うことができてしまう。もちろん、最終的に譲渡を確認する時点で「残高不足」という内容のメールがくるので、実際には自分の持っている金額以上に多くの額の買い物はできない。しかし利用者の立場からすると、まぎらわしく分かりにくい。
 譲渡や払戻しに関しては今後システム化をしていく予定とのことだが、すでに本稼働を始めてるのだから早急に改善してほしいところだ。

QQQ商品券で買ってみよう

利用の大まかな流れ

  1. 購入する商品を選択する
  2. 購入金額と支払い方法の確認、申込

■デジタルコンテンツを購入してみる(経過時間:0分)

 QQQシステムではデジタルコンテンツ分野での利用に力を入れているらしく、ここでは読売新聞に短期掲載された記事( http://qqqmcs.qqq.or.jp/DailyMail/yomiuri/yomiuri.html )を買ってみる。この記事はアドビ社のPDF(Portable Document Format)ファイル形式で販売をしている。なお、PDFについてはアドビ社のWWWサイトを参考にしてほしい。
 欲しい記事を選ぶとユーザーIDとパスワードを入力する画面に変わる。これを入力すると会員情報、商品情報、支払方法を確認する画面が表示され、良ければ次に進む。もう一度最終的な確認が表示され、ここで「支払方法確定」のボタンを押すと確定され、後戻りはできない。

 PDFファイルはメールの添付ファイルとして届けられるので、次にメールの送付先を入力する。予め入会時に登録してあるメールアドレスが表示されているので、変更がなければそのまま「送信」を押せば良い。

■記事を読んでみる(1分)

 メールを取り込んでみるとすでにQQQシステムよりメールが2通届いていた。1通は読売新聞の記事を購入したという決済明細で、もう1通は先ほど購入した記事ファイルが添付されたメールだ。さっそくPDFファイルを見てみるとカラーで写真が入った新聞記事が表示された。

■QQQ商品券は一種の電子マネー

 すでにQQQ商品券を持っていれば商品を購入するのは簡単だ。またQQQ商品券を会員内で譲渡できる点や、現金に払戻しができるので、会員同士という条件はあるものの、一種の電子マネー的な利用もできる。なお、デジタル商品券の払戻しについて出資法、紙幣類似証券等に問題はないかと確認したところ、富士ソフトABC社では顧問弁護士と相談した結果、会員制で利息などもないため、問題はないとの見解に至ったとのことだった。

 このQQQシステムは、QQQ商品券の購入時に銀行から振込をしなければならない点や譲渡や払戻しにかかる時間と費用といった点がシステムを使いにくくしている。特にQQQ商品券を購入するときに、1,000円以上の商品はクレジットカードで支払えるのだから、早期にQQQ商品券も買えるようにしてほしい。またQQQ商品券の譲渡、払戻しをした場合、QQQ商品券の残高更新が即時にされないため、食い違いが生じる。利用者に誤解を招く恐れがあるので何らかの対策をしてほしい。

 加盟店側には、QQQシステムは課金サーバや配信サーバなどがなくても販売ができる点や、6種類のクレジットカードに対応している点など、メリットは多いだろう。

 現在のところ、加盟店になる際の料金は無料だが、平成10年4月1日より加盟店登録料と月額管理料が必要になってくる。

 全体として、商品を購入するときは利用しやすくなっているが、最初にQQQ商品券を買ったり、譲渡するといった点はまだまだ不完全で使いにくかった。QQQシステム全体的にもう少し使いやすさを追及する必要があると感じた。

QQQ スペック

●入会にあたって

 入会条件:電子メールを利用できる人

●利用にあたって

プラットフォーム:SSL対応ブラウザー
費用:口座設定料金(初回のみ) 1,000円(キャンペーン中は無料)
   年会費          無料
   QQQ商品券購入      購入額*105%
   QQQ商品券譲渡手数料   200円
   QQQ商品券払戻し手数料   払戻し額の5%+700円

利用技術:SSL

◎評価基準(三段階評価)
 設定の簡便 :★★
   ○WWW自体に設定等は特にないので、作業が完了するので行ないやすい。
 安全性の配慮:★★
   ○個人情報や決済情報を送るときは一方向のSSLが使われている。
 利用金額  :★★
   ○QQQ商品券は100,000円。クレジットカードは各々の限度額。
 使い勝手  :☆☆
   ○QQQ商品券を購入時に現金振込をしなくてはならないところが、使い勝手を悪くしている。また、QQQ商品券の譲渡、払戻しをした場合、QQQ商品券の残高更新が即時にされないため、食い違いが生じる危険性がある。

('97/11/13)

[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.or.jp) ]




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