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楽天モバイル「Rakuten UN-LIMIT V」回線に最適? アイ・オー「WN-CS300FR」、最新ファームでバンド固定機能が追加

 リモートワークを含め、多くの作業や手続き、買い物など、オンラインでのやり取りが基本になりつつある。固定回線がない環境で、至急インターネットを使えるようにするには、モバイル回線が最も便利だ。

 PCをモバイル回線へ繋げるには、一時的であればスマホのモバイル回線をテザリングすればいいが、複数のデバイスで長時間使うなら、モバイルWi-Fiルーターが活躍する。

据え置きタイプのモバイルWi-Fiルーターであるアイ・オー・データ機器「WN-CS300FR」

 株式会社アイ・オー・データ機器の「WN-CS300FR」は、SIMフリーのモバイルWi-Fiルーターながら、常時電源をつないで使う前提の製品であり、バッテリーを搭載せずに有線LANを搭載しているのだが、11月のファームウェアアップデートにより、LTEの接続先バンドを指定できる機能が追加されたという。

 楽天モバイルのSIMカードで使ったときにこの機能を使えば、通信容量上限のあるauローミング回線(バンド18)につながらないようにして、接続先を容量無制限の「Rakuten UN-LIMIT V」回線(バンド3)に固定できる。バンド3の電波状況が微妙なエリアでは特に有用はずなので、早速試してみたい。

バッテリー非搭載&有線LAN対応で、モバイル回線を据え置きで使うのに便利

アイ・オー・データ機器「WN-CS300FR」据え置き型でモバイル回線を使うWi-Fiルーター

 一般的なモバイルWi-Fiルーターは、持ち運んでWi-Fi子機を接続する用途が想定されており、小型でバッテリーが内蔵されているものがほとんどなのだが、今回紹介するアイ・オー・データ機器の「WN-CS300FR」は、バッテリーを内蔵しない据え置きタイプの製品だ。

 長時間コンセントにつないでおいても過充電の心配がなく、筐体サイズにも余裕があるので熱を持ちにいので、安定した動作が期待できる。

製品パッケージの内容。簡単なセットアップガイドと初回設定用の情報カードが付いている

 また、100Mbpsまでの100BASE-TXではあるが有線LANポートも1つあるので、Wi-Fiを搭載しないPCやAV機器なども接続できる。回線側の最大速度は、理論値で下り75Mbps、上り50Mbpsなので、この速度で十分なのだ。

背面に100BASE-TXの有線LANポートを備えている
上部に3つのインジケーターがある。ほのかに光るだけなので光がまぶしすぎることもない

 SIMフリー端末であり、国内の4キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル)に対応しているので、用途や予算に応じたデータ専用回線を契約して、SIMカードを用意すればいい。もちろんMVNOでも構わない。

 契約回線は、PCなどを接続するなら“使い放題”のコースを選択するのがベストだ。使い放題とうたっていても、たいていは何らかの条件があるので、しっかりチェックをしつつ上手に使いたい。

 もし速度制限がかかっても1Mbpsであれば、動画視聴の用途でも、何とか使い続けられるはずだ。

豊富なAPNプリセットを用意、スロットはmicroSIMサイズ

 APN情報などの接続設定は、以下の各社がプリセットに用意されている。ただし、自分で入力すれば、もちろんこれら以外を設定して接続できる。


    BIGLOBEモバイル
    DIS mobile IIJ/JCI/KDDI/SBM
    IIJmio
    IIJ mobile D/I/Kプラン
    KDDI(LTE NET)
    mineo A/D/Sプラン
    NTTドコモ(spモード)
    OCNモバイルONE(LTE)
    楽天COM
    Rakuten UN-LIMIT
    Rakutenモバイル
    SoftBank
    SoftBank(jpspir)
    SORACOM Air
    SORACOM Air for セルラー
    UQ mobile
    イプシム

 なお、筆者が契約しているNTTドコモのNVMO「hi-ho LTE typeD」もプリセットにはないが利用できた。今回はほかに、Rakutenモバイルの「Rakuten UN-LIMIT V[※]」回線を使ってテストしている。

[※]……今回はすでに回線開通済みのSIMを使っているが、Rakuten UN-LIMIT Vを契約して回線を開通させ、ポイントバックを受けるためには、対応スマホが別に必要だ。

底面のフタを開けてSIMを装着する。初期設定用の情報も貼り付けられている

 SIMスロットは背面にあり、フタをネジを外して開けて装着する。新規契約のSIMであれば、マルチSIMのカードで提供されるのでmicroSIMサイズで取り外せばいいが、現在主流のnanoSIMではなくmicroSIMスロットなので、nanoSIMはアダプターを使って装着しよう。形状はmicroSIMを覆ってカバーするタイプなので、アダプターを使っても装着トラブルは少ないはずだ。

 設置場所は、2階以上のなるべく高所で、モバイル回線の電波が入りやすい窓際がいい。回線工事は不要で、電源コンセントを指すだけで使える。速度は比較にならないが、光回線より安価で、短期間だけ使うような用途にも向いている。

SIMサイズはmicroSIM。SIMアダプターを付けていても装着のトラブルは少ないカバータイプ
SIMのカバーは、スライドさせてロックする

QRコードでWi-Fiに接続後、セットアップ不要でRakuten UN-LIMIT V回線に接続

 最初のセットアップでは、Androidなら「Google Lens」(Googleアプリの検索フォームでレンズアイコンをタップして起動)、iPhoneでは標準の「カメラ」アプリで添付のQRコードを読み込めばSSIDと暗号化キー(パスワード)を入力不要でWi-Fiに接続できる。

Androidスマホでは、Google LensでQRコードを読みこむと、初期SSIDに接続できる
iPhoneでは、標準の「カメラ」アプリから

 WN-CS300FRにモバイル回線の設定をしていない状態でWi-Fi接続した場合は、「かんたん接続」というウィザードが開始され、そのままAPNの設定ができる。ただし、スマホのウェブブラウザーではモバイル表示となるため、設定画面が簡易モードで表示されてしまう。「詳細設定」を選ぶと、全ての設定項目を表示できる。

 Wi-Fiは2.4GHz帯のIEEE 802.11n/g/bのみで5GHz帯は搭載されていない。ボタンプッシュで接続するWPSには対応しているので、実際にNintendo Switchをつないでみたが、ゲーム機などでも問題なく接続できる。

スマホで設定画面を表示したところ。全ての設定項目を表示するには「詳細設定」を選ぶ
無線設定の画面。設定項目は一部のみが表示される簡易表示モードとなる

 なお、Rakuten UN-LIMIT VのSIMを装着したときには、プリセットが自動で適用されたのか、自動的にモバイル回線へ接続されてしまった。このように、設定用のウィザードが表示されないときは、ウェブブラウザーでステータスを選び、接続を確認しておけばいい。

こちらはPCでの設定画面。初回接続時にAPN設定ができる。プリセットも多数用意されている
詳細設定のトップ画面。接続中のLTEバンドが表示されている

最新ファームウェアでLTEバンド固定機能が追加、Rakuten UN-LIMIT V回線に最適?

 WN-CS300FRの最新ファームウェア「Ver.1.10」には、LTEの接続バンドを指定できる機能が追加されている。

 これは、おそらくRakuten UN-LIMIT Vの回線で使えるauのパートナー回線のローミングを切り替える目的を意識したもので、SIM契約内で使えるローミング回線を強制的に変更したい場合に使える機能だと思われる。

 Rakuten UN-LIMIT Vの回線は容量無制限だがauローミング回線では月間5GBまでしか高速に使えない。そこで、不用意にauローミング回線へ繋がらないように、接続先をRakuten UN-LIMIT V回線のみに固定する使い方ができるが、この設定をすると、Rakuten UN-LIMIT V回線が圏外のauローミングエリアでは、通信ができないので注意が必要だ。

「詳細設定」の「利用バンド設定」で、接続するLTEバンドを指定可能

 利用バンド設定では、1/3/6/8/18/19/26の各バンドを、それぞれ使うかどうか設定できる。Rakuten UN-LIMIT V回線のSIMを装着し、Rakuten UN-LIMIT Vとauローミングの回線が両方入るエリアで実際に設定してみると、バンド3を選ぶと前者、バンド18を選ぶと後者に接続する。

バンド3のみ使用する設定ではRakuten UN-LIMIT V回線へ接続する
同じ場所でバンド18のみ使用する設定に切り替えるとauローミング回線に接続する
Rakuten UN-LIMIT V回線の速度を測定。ダウンロードは20Mbps弱
同じ回線で有線LAN接続して測定してみたが、あまり変わらず
NTTドコモNVMOの「hi-ho LTE typeD」で接続した回線速度

 なお、バンド26はバンド18に内包されていて、au回線で使われているはずだが、バンド26のみを選んでも接続できなかった。あまりないと思われるが、強制的にauローミング回線を使いたいときは、バンド18を選択しよう。

 バンド3と18の両方を使うように設定していると、電波状態によってバンド18へ接続してしまい、自動ではバンド3へ接続が切り替わらないケースもあった。つまり、バンド3の電波状況が微妙な場所でも、この機能で接続バンドを指定すれば、バンド3を使えるので重宝するはずだ。

オンライン会議の帯域だけを制限できる「通信量節約モード」

 もう1つ面白い機能が「通信量節約モード」だ。利用バンド設定と同じ詳細設定に項目が用意されていて、オンライン会議の「Microsoft Teams」「Zoom」「Google Meet」における通信速度の上限を500kbps、1Mbps、1.5Mbpsの3つから選んで制限できるものだ。

 動画によって容量が増えがちなオンライン会議の通信量を積極的に抑制することができる。制限は回線全体ではなく、上記のオンライン会議の通信のみにかけられる。

 実際に通信速度を500kbpsに制限した上、Google Meet側でも送受信ともに「標準解像度(360p)」に設定し、1対1で接続してみたが、特に違和感なくオンライン会議ができた。画質をあまり気にせずに会議をするなら、積極的に使って見て欲しい。

 500kbpsで360p、1.2Mbpsで720pがだいたい利用できる目安となる。1Mbpsに制限した場合は画質を720p以下、Zoomなら「高品質ビデオ」に設定しておけば、ほぼ問題なくオンライン会議ができるはずだ。

「詳細設定」の「通信量節約モード」では、オンライン会議の帯域を制限できる
500kbpsに設定したが、問題なく会議ができた。筆者側がWN-CS300FRを使ったRakuten UN-LIMIT V回線。猫は光回線だ

 ほかにも、ゲストWi-Fiや、DDNS、ポート開放といった機能もある。ゲストWi-Fiは、プライバシーセパレーターが初期状態でオンになっていて、セキュリティが考えられた作りだ。回線側のセキュリティ機能としては、「DoS攻撃防御」と「SPI」が最初からオンになっていて安心できる。初期設定では有効「UPnP」を使わないならオフにすれば、より安全だろう。

 せっかくの据え置きタイプなので、いくつか欲しいと思う機能もある。どうせならW52だけでもいいので5GHz帯も欲しい。Wi-Fi接続機器が増えてくると、やはり5GHz帯へ逃がしたくなるものだ。

 さらに、月単位の設定日でリセットできる通信量モニターの機能はぜひ追加して欲しい。現在どのくらい容量を使ったかは、モバイル回線を使っていればやはり気になるはず。これに併せて、通信量節約モードで動画や音楽、VoIPなど、他のアプリや回線全体で通信量節約する設定ができると便利そうだ。こちらはファームウェアのアップデートで期待したい。