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【業界動向】

PUBLIC ENEMYが「MP4」で米音楽業界を震え上がらせる?

■URL
http://www.public-enemy.com/mp4/index.html
http://www.a2bmusic.com/

 「奴らに死を」~'98年暮れ、米国のレコード会社にこんな過激なメッセージを叩き付けたのは米国のラップグループ「PUBLIC ENEMY」だ。PUBLIC ENEMYは、'82年に結成され、その強力なメッセージで強い支持を集めている。

 事の発端は、PUBLIC ENEMYが自身のサイトで公開した新曲を所属レコード会社Polygram/Universalから削除されたこと。ニューアルバム「Bring The Noise 2000」の収録曲を毎週2曲「MP3」で公開していく予定であったが、3曲を掲載した'98年12月中旬の時点で差し止めにあった。そこで飛び出したのが冒頭の発言だ。PUBLIC ENEMYのリーダーCHUCK Dからは次のようなコメントが掲載された(現在は削除されている)。「今日、Polygram/Universalだかなんだか知らねえ奴らにBring The Noise 2000のMP3バージョンが強制的に削除された。ミュージックビジネスで大儲けしてる奴らはテクノロジーを恐れている。奴らに死を。爆弾をお見舞いしてしてやるぜ」。

 そして年も明けた'99年1月、PUBLIC ENEMYから新たなメッセージが届いた。「我々はアンチ企業主義の元に『MP4』で曲を提供する」。

専用プレーヤー MP4? MP3に続くフォーマットができたのか? と実際にPUBLIC ENEMYのサイトに用意されたページ「Swindler's Lust MP4」に接続してみた。「DOWNLOAD NOW!」をクリックしたところ専用のプレーヤーと曲がダウンロードできた。3分40秒の曲「Swindler's Lust」が収められており、音質はCD並みだ。画面にはPUBLIC ENEMYのロゴなどが表示されており、自身のサイトへリンクされている。その下の再生/停止などの操作部分は「globalmusic.com」へリンクされていた。

 聞いただけでは、音質からこれがMP4なのかどうか確定できなかった。そこで、手がかりを探すため、globalmusic.comへ接続してみたところ、GlobalMusics社はインターネット上で音楽配信を行なう会社で、AT&Tの子会社「a2b music」とパートナー契約を結んでいることがわかった。a2b musicのシステムでは、CD並みの音質のデータを圧縮し1曲ごとに暗号化、クレジットや歌詞を同時に表示することが可能で著作権を保護した上での音楽配信が可能だという。音楽の圧縮形式は、同社が「a2b」と呼ぶ形式で提供される。a2bは、オーディオフォーマット「MPEG-2 AAC」を基にしたものでMP3をベースにしたものではない。

 GlobalMusicsとa2b musicは、配信システムの開発/マーケティングを共同で行なっており、今回のPUBLIC ENEMYの「Swindler's Lust MP4」もa2bのシステムを流用したものであると考えられる。「MP3より凄いぜ、だからMP4だ」と名付けたようだ。なお、標準化団体「MPEG(Moving Pictures Experts Group)」では、MP4、おそらくその正式名称である「MPEG-1 Audio Layer-4」についてのは発表されていない。

 しかし、ファイル形式はどうあれ「削除されてもまた掲載する」という今回のPUBLIC ENEMYの姿勢は、音楽業界でも話題になりそうだ。なお、'98年末には、Beastie BoysやBilly Idolなども自身でMP3を掲載し、その後レコード会社から強制的に削除されている。

('99/1/11)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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