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【特集】

スーパーデジタルcdmaOneとWAPの実力とは?

 4月14日、DDIセルラーグループと日本移動通信株式会社(IDO)が昨年夏から共同で導入を進めていた新しい携帯電話システム「cdmaOne」の全国ネットワークが完成した。cdmaOneは、デジタルを越えたスーパーデジタルとして、テレビや吊り広告などで盛んに宣伝されている。気になる存在だが、実際のところどうなのだろうか。さっそく検証してみることにした。

Contents


・「音がいい!混信しない!切れない!」cdmaOneの仕組み
・軽くて小型のcdmaOne端末
・期待に違わぬ高音質
・PDC方式よりも高速なデータ通信が可能
・WAPとは? ~携帯端末でインターネットを快適に利用するための通信プロトコル~
・「EZアクセス/EZウェブ」のサービス内容と料金比較
・2,000文字ものメッセージを受信可能な「Eメール」
・インターネット経由でさまざまな情報を入手できる「EZインターネット」
・アドレス帳やスケジュールを管理できる「EZ PIM」
・パソコンのブラウザーから設定が可能な「EZマイページ」
・WAP対応コンテンツを作るには?
・クリアな音声通話を望むなら買い


●「音がいい!混信しない!切れない!」cdmaOneの仕組み

 まず最初に、cdmaOneとは何か。どのような点が従来のデジタル携帯電話に比べて優れているのかを解説したい。

 cdmaOneは、その名称の一部にも使われているように、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)方式を採用していることが最大の特徴だ。CDMA方式は、もともと軍事技術として開発された無線システムで、米国クアルコム社によって携帯電話システムへと改良されたもの。従来のデジタル携帯電話で使われてきた、TDMA(Time Division Mlutiple Access:時分割多元接続)方式に比べて、周波数利用効率が高く、秘話性も高いといった利点を持っているため、次世代携帯電話のシステムの本命と目されてきたシステムである。TDMA方式では、同じ周波数領域を複数のユーザーが短い時間間隔(日本のPDC方式では40ミリ秒間隔)で順番に切り替えながら利用する仕組みになっているのに対し、CDMA方式では、デジタル信号にそれぞれ固有の拡散符号を掛け合わせて送信し、受信側でそれを再び戻すことで、同じ周波数帯域を多数のユーザーが同時に利用できる仕組みになっている。

 CDMA方式だから必ずしも音がいいというわけではないのだが、cdmaOneでは、周囲のノイズを減らして音声のみを信号化する8kbps EVRC(Enhanced Variable Rate CODEC)と呼ばれる音声処理技術を採用することで、非常にクリアな音質を実現している。また、従来は通話品質劣化の原因となっていたマルチパス成分(ビルなどに反射して遅れてくる信号)を逆に有効利用するパスダイバシティと呼ばれる技術によって、ビルの谷間でも混信のない安定した通話品質を実現してるほか、ソフトハンドオーバー技術(基地局の切り替え時に同時に複数の基地局と通信する技術)の採用によって、高速移動時にも通話が瞬間的に途切れるようなこともなくなった。

 要するに、「音がいい!混信しない!切れない!」という三拍子揃った通信システムというわけだ。


●軽くて小型のcdmaOne端末

 現在、cdmaOne対応端末は6機種(うち1機種は近日発売)が発表されているが、インターネットサービスのEZアクセス(後述)に対応している端末は、「C201H(日立製作所製)」のみである。C201Hは、EZアクセスに対応しているにもかかわらず、コンパクトで携帯性も優れているため、非常に人気が高く、なかなか入手できないようだ。今回は、そのC201Hを試用したレポートをお伝えする。

左からTH271、321S、N501i、C201H。C201Hの小ささがよくわかる
 筆者は普段、ツーカーセルラー東京のTH271(ソニー製)とNTTドコモのN501i(NEC製)という2つの携帯電話端末と、NTTドコモのパルディオ321S(シャープ製)というPHS端末を利用している。C201Hは、なんと約82gで、これらのどの端末と比べても小さくて軽いことにまず驚いた。もちろん、iモード対応のN501iを除けば、上記の端末はすべて1~2世代前の製品であり、最新機種ではもっと小型軽量化が図られている。しかし、PDC方式に比べて技術的にずっと高度なcdmaOne対応端末を、このサイズと重さで実現したことには拍手を贈りたい。


・cdmaOne対応機種
http://www.ido.co.jp/cdmaone/keitai/index.html




●期待に違わぬ高音質

 さて、実際にはどれだけ音がよく切れにくいのだろうか。まず、C201Hで一般の固定電話に電話をかけてみたが、音質は確かに優れている。携帯電話特有のノイズや割れるような感じもなく、一般の固定電話同士で通話するのに近い印象を受ける。固定電話で受けた場合は、知らなければ、公衆電話からかけているのか、といった感じ。固定電話どうしほどではないが、PDC方式に比べて雑音が少なく、かなりクリアだ。
 現行のPDC方式の音質は、ハーフレイト化によって御世辞にもよいとはいえないものになっているが、cdmaOneでは、相手の声もこちらの声もクリアに伝わる。タクシーの中から電話をかけてみても、途中で切れるようなことはなかった。また、新宿や渋谷などの繁華街でも、電波が混みあっていて繋がらないということもなかった。
 携帯電話の本来の目的である音声通話に関しては、cdmaOneは文句なしに優れているといえるだろう。しかし、cdmaOne、PHSの音質を比較してみると、PHSに軍配が上がる。より音声帯域の広いPHSがやや有利のようだ。もちろん、PHSには原理上、高速移動中の乗り物やビルの中からは通話がしにくいという欠点があるので、どこでも安定して繋がるといった点を考慮に入れれば、cdmaOneのほうが総合的には有利であろう。

 なお、cdmaOne、PHS、PDCではどのように聞こえるのかを比較テストしてみた。今回は、固定電話からcdmaOne、PHS、PDC端末に電話をかけ、端末からパソコンに録音したものだ。サンプルとして、日付や電話番号などを話し、どのように聞こえるかを比べられるようにしてみた。

Real Audioバージョン

PDC

cdmaOne

PHS

MP3バージョン

PDC

cdmaOne

PHS


●PDC方式よりも高速なデータ通信が可能

 cdmaOneは、現行のPDC方式よりも、高速なデータ通信が可能であることもメリットである。PDC方式の場合、データ転送速度は、最大9,600bps(NTTドコモのパケット通信サービスDoPaでは最大28,800bps)止まりだが、cdmaOneでは、サービス開始時点から14.4kbpsでのデータ通信が行なえるほか、'99年末にはパケットを利用した64kbpsでのデータ通信サービスも開始される予定。ただし、パケット通信サービスは現行のcdmaOne端末では利用できず、対応端末と対応PCカードが必要になる。現時点では、すでに64kbpsでの正式サービスが開始されているPHSに速度はかなわないが、携帯電話には、高速移動中でも安定した通信ができるという利点がある。

 cdmaOne端末でデータ通信を行なうには、別売りのcdmaOne DATA/FAXカード(C080NDS:24,800円)が必要になる。cdmaOne DATA/FAXカードは、Windows 95/98の標準ドライバで動作するので、導入も簡単だ。

 実際にcdmaOne DATA/FAXカードを利用して、153Kバイトの画像ファイルを2つ(合計306Kバイト)、FTPでアップロードするのにかかる時間を測定してみた。比較のために、PDC方式のデジタル携帯電話とPHS(32kbps:PIAFS)でも、同じファイルを転送してみることにした。以下に示す結果を見ればわかるように、PDC方式に比べて、より短い時間でファイルを転送することができた。PHSに比べれば遅いが、テキスト中心の使い方やちょっとWebページを閲覧する程度なら、十分実用的に使える。

【306Kバイトのデータを転送するのにかかった時間】
cdmaOne(14.4kbps) 4分54秒
PDC方式(9,600bps) 5分55秒
PHS(32kbps) 1分40秒


・オプション機器一覧
http://www.ido.co.jp/cdmaone/keitai/option.html


●WAPとは? ~携帯端末でインターネットを快適に利用するための通信プロトコル~

 INTERENT Watchの読者なら、携帯端末でインターネットが利用できる「WAP(Wireless Application Protocol)」サービスにも高い関心を持っているだろう。cdmaOne対応端末は、WAPに準拠したインターネットサービス(IDOではEZアクセス、DDIではEZウェブと呼んでいる)を利用できることも大きな特徴のひとつだ。

 WAPとは、モトローラ、ノキア、エリクソンら大手通信各社とアンワイヤード・プラネットが1998年1月に設立した「WAPフォーラム」によって国際規格化された携帯端末向けのインターネット接続用プロトコルの総称である。日本ではDDI、IDO、NTTドコモ、ツーカーセルラー東京、J-PHONEといった、携帯通信事業者がWAPフォーラムに加盟している。

 WAPでは、インターネットの標準的なプロトコルであるHTTPTCP/IPの代わりに、WSP(Wireless Session Protocol)やWDP(Wiress Datagram Protocol)と呼ばれるプロトコルを利用して、データの伝送を行なう。各プロトコルは、データのサイズをできる限り削減して、転送時間を短くすることに主眼が置かれている。もちろん、インターネット上では、標準プロトコルのHTTPTCP/IPが利用されているので、WAPベースのインターネット接続サービスを利用する際には、ゲートウェイサーバー(IDOのサービスでは、「EZサーバ」と呼ぶ)を間に介して、WAPベースのプロトコルに相互に変換しながら、通信をおこなう仕組みになっている。ゲートウェイサーバーへの接続およびプロトコル変換は、自動的におこなわれるので、ユーザーが特に意識する必要はない。

 IDO/DDIセルラーのインターネットサービスでは、WSPの策定が遅れたため、HTDP(Handheld Device Transport Protocol)と呼ばれる独自プロトコルが用いられているが、基本的な概念は同じである(図参照)。なお、IDOによれば、今後はWAPに準拠したWSPやWDPに移行する予定だが、時期は未定とのことだった。

 ただし、ゲートウェイサーバーで変換されるからといって、現在のHTMLベースで記述されたWebページがWAP対応端末でそのまま正しく閲覧できるわけではない。WAPでは、HTMLの代わりにWML(Wireless Markup Language)かHDML(Handheld Device Markup Language:詳しくは後述)というドキュメント記述用マークアップ言語を利用してコンテンツを記述することになっている。WAPフォーラムが最新のWAP 1.1で定めた正式規格はWMLだが、HDMLもWAPの対応言語の一種である。なお、EZアクセスやEZウェブでは、HDMLでページを記述することが推奨されている。


●「EZアクセス/EZウェブ」のサービス内容と料金比較

 IDOとDDIセルラーグループが提供するEZアクセス/EZウェブでは、次の4種類のサービスを利用することができる。各サービス内容の詳細は、次の項以降で説明する。

1.Eメール(どのプランでも利用可)

 最大2,000字までの電子メールがやりとりできる。

2.EZインターネット(どのプランでも利用可)

 端末に搭載されたブラウザーにより、WAP対応の情報サイトにアクセスできる。

3.EZ PIM(EZプレミアム、EZアクセスBのみ)

 携帯電話で、アドレス帳やスケジュールなどを確認・変更できる。

4.EZマイページ(EZプレミアム、EZアクセスBのみ)

 自宅やオフィスなどからWWWブラウザーを使ってEZ PIMで利用しているアドレス帳などをを確認・変更できる。

 IDOとDDIセルラーグループでは、提供しているサービス自体は同等だが、料金体系は微妙に異なる。IDO、DDIともに料金プランによって使える機能が制限されるので注意しよう。詳しくは以下の表を参照のこと。
 なお、IDOの場合、EZアクセスAが月額200円('99年6月までは無料)、EZアクセスBが月額400円('99年6月までは無料)の基本料金に加えて、1分あたり10円の通信料金がかかる。IDOに対し、DDIセルラーグループでは、EZwebスタンダード(EZアクセスA相当)の月額使用料は無料EZwebプレミアム(EZアクセスB相当)が月額100円で、通信料金が30秒あたり10円となっている。ただし、DDIセルラーグループの場合、EZウェブを利用するには、セルラーアドバンストサービス(月額300円)に加入している必要がある。IDOのほうが安い料金設定になっているわけだ。
 EZアクセス/EZウェブでは、接続時間に比例して料金が加算されていく。効率のよい使い方をしないと、結構料金がかかってしまうことに注意したい。

【IDO/EZアクセス】

 

利用できるサービス

月額料金

通信料金

EZアクセスA Eメール/EZインターネット *200円 10円/1分
EZアクセスB  すべて  *400円 10円/1分

*本年4月~6月まで無料。

【DDI/EZウェブ】

  利用できるサービス

月額料金

通信料金

EZウェブスタンダード Eメール/EZインターネット *不要  10円/30秒
EZウェブプレミアム すべて  *100円 10円/30秒

*別途、セルラーアドバンストサービスへの加入(300円/月)が必要。


●2,000文字ものメッセージを受信可能な「Eメール」

 EZアクセスのEメールは、携帯電話単体で利用できるインターネットメールサービスの中で、最も送受信可能な文字数が多いことが特徴だ。例えば、NTTドコモグループのiモードメールでは、最大で全角250文字までのメールしか送受信できないのに対し、EZアクセスのEメールでは、全角2,000文字までのメールを受信することができる。
 他の携帯電話の場合、ちょっと長いメールを読もうとすると、文字数制限に引っかかってしまうが、2,000文字ものメールが読めるEメールなら、そうした心配もない。
 ただし、C201Hの場合、端末から送信できる文字数は全角250文字までだ。携帯端末で長いメールを打ち込むのはかなり大変なもの。現実的には、250字でも大きな問題はなさそうだ。なお、今後の機種では、送信可能文字数が増える予定。

 また、任意のメールアドレスが利用できるのも嬉しいところ。他社の携帯電話でのEメール機能は、「携帯の電話番号@xxxxx.ne.jp」と、メールアドレスが固定されてしまっていることが多い。携帯でメールを受信したくても、携帯の番号を他人に教えるのはちょっと抵抗があるという人もいるだろう。また、携帯の電話番号で始まるメールアドレスは、覚えにくいことも欠点だ。しかし、EZアクセスのEメール機能では、「任意の文字列@eza.ido.ne.jp」というメールアドレスを設定できるので、そうした問題もなくなる。任意の文字列は、携帯電話であらかじめ設定しておき、各社のセンターに電話をかけて取得する。もちろん早い者勝ちであり、すでに他の人が使っている文字列は登録できない。

 さて、いいことばかりかといえば、そうでもない。実際に使ってみたところでは、不便なところもいくつかあった。一番気になるのは、単にメールが届いたことしか知らされないところだ。
 実際にメールを読むためには、メールが着信したというメッセージが端末に表示されたら、「EZサーバ」に接続し、最初に件名リストをダウンロードして、そこからさらに読みたいメールを指定するとサーバーにアクセスしにいき、メールを読み出してくる。メールを読んでいる間は、自ら切断するまで「EZサーバ」に繋がったままだ。動作をするごとにサーバーにアクセスしに行き、しかもそれが速いとは言い難いため、使っていると料金がかなり心配になってくる。
 また、2,000文字までのメールを受信できるのはいいのだが、本文は一度に一定の文字数までしか読み込まれない。長いメールを読むときには、一定の文字数ごとに「次のページへ」を選択して読み込む必要があり、使い勝手は今ひとつという印象を受けた。

 例えば、NTTドコモのiモードメールでは、本文が自動的に端末にダウンロードされるようになっており、接続する手間もかからない。iモードメールのように、メールが送られてきたらその瞬間に本文がすべて端末に読み込まれているほうが、ずっと便利である。
 ただし、EZアクセスの仕様というよりは、端末側の仕様による可能性も高い。今後登場する端末では、こうした不満が解決されることを期待したい。

 また、C201Hの場合、文字の入力は残念ながら使いやすいとは言えない。メールを新規作成した場合、まず宛先を入力するモードになるが、大文字の半角英数字が表示される。大文字小文字の切り替えはなく、下にスクロールしていけば小文字が表示されるのだが、最初それに気づかず苦労してしまった。また、そのときの操作も、メニューで使うスクロールキーではなく、ダイヤルキーに割り当てられた「ダイヤルカーソルキー」に変わるのも、一瞬戸惑うところだ。

 なお、「EZ Reply」と呼ばれる機能を使って、「会議に出席/欠席」などの予想される回答の選択肢をメールの本文中に入れたり、電話をかけてもらいたい連絡先の番号やアクセスして欲しいURLを入れられるのは便利だ。「EZ Reply」を使ったメールを受け取ったユーザーは、返信しやすく、簡単に電話をかけたりできる。この機能はなかなか面白かった。


●インターネット経由でさまざまな情報を入手できる「EZインターネット」

 EZインターネットは、端末に搭載されたWebブラウザー機能を使って、コンテンツを閲覧できるというもの。EZインターネット専用に用意されたコンテンツをメニューから選択して閲覧できるほか、URLを入力して好きなWebページを閲覧することもできる。ただし、基本的にはHDMLで書かれたページを見るようになっており、一般のHTMLで書かれたページは、正しく表示されるとは限らない。むしろ基本的には閲覧できないと考えた方が良いようだ(画像やフレームなどは表示されない)。
 EZインターネット用に用意されたコンテンツは、ニュース、天気予報、株価情報、宝くじ情報、鉄道経路検索、時刻表、映画情報、グルメ情報、占い、チケット予約、ゲーム・クイズ、コミュニケーションなど、多岐にわたる。生活情報系に重点がおかれており、iモードで提供されている、モバイルバンキング(残高照会や振り込みなど)や証券取引などのサービスは今のところ提供されていない。
 閲覧にかかる料金は、基本料金のみ。コンテンツは、今後さらに拡充していくとのこと。

 実際に「EZインターネット」を使ってみたところでは、iモードのようなパケット課金ではなく、今のところ時間課金(12月よりパケット対応予定)なので、ゆっくりニュースを読みたいときでも、少々料金が気になった。専用コンテンツは携帯電話の小さな液晶画面で見ることを前提にデザインされているので、使用感は悪くない。しいて言えば、ゴシック系のフォントを使っているので、長いコンテンツは少々見づらい印象を受けた。また、iモードに比べると、全体にレスポンスが遅いような印象もある。サービス開始直後で、サーバの負荷が高かったのかもしれないが、時間課金制になっているのだから、もう少し改善を望みたい。
 通常のHTMLベースで書かれたWebページがどのように表示されるかも興味あるところ。もちろん、過度の期待は禁物であることは承知の上だ。試しに、テキスト主体のページを試してみたが、C201Hの場合、一度に表示できる文字が全角50文字(10文字×5行、ただし最下段は操作ガイドが表示されているため、実質40文字)までなので、正直なところ通常のHTMLベースのWebページを見るのは厳しい。筆者が使っているiモード対応端末N501iのように、一度に100文字(10文字×10行)表示できれば、また印象も変わるとは思う。ただし、液晶を大きくすればそれだけ携帯性が落ちるので、C201Hのように携帯性を重視した端末と、N501iのように閲覧性を重視した端末の両方をユーザーが選べるとベストだと思った。


●アドレス帳やスケジュールを管理できる「EZ PIM」

 「EZ PIM」は、EZアクセスのサービスの中でも、他社にはない特徴的なサービスだ。EZ PIMは、アドレス帳やスケジュール、タスクリスト(やらなければいけない仕事など)といった個人的な情報を「EZサーバ」上で管理できる。それぞれのデータは、EZアクセス対応端末から入力・編集・閲覧できるほか、次の章で説明する「EZマイページ」を利用して、自宅やオフィスにあるパソコンのWWWブラウザーから入力できる。アドレス帳は、必要なデータのみを抜き出して、端末にダウンロードすることも可能だ。

 最初は色物的な機能かと思っていたEZ PIMだが、使ってみると結構便利だ。端末で直接スケジュールなどのデータを入れるのは面倒だが、EZマイページを利用してパソコン上でデータを入力し、その確認を携帯電話で行なうといった使い方なら、十分実用的に使える。ザウルスやWorkPadなどのPDAを普段持ち歩いているという人なら、あまり必要のない機能だろうが、肌身離さず持ち歩く携帯電話でスケジュールやタスクリストが確認できるのはなかなか役に立つ。どこまで実用的に使えるかはユーザー次第であろうが、面白い試みではある。


●パソコンのブラウザーから設定が可能な「EZマイページ」

 EZマイページとは、パソコンのWWWブラウザーを利用して、EZアクセス機能の各種設定や、Eメールの送信などが行なえるというもの。
 専用ページからIDとパスワードを入力すると、WWW上で個人情報の確認や登録、変更、自分のアドレス帳やスケジュール、タスクリストを見たり変更したりできる。
 文字の入力は、やはりボタンの数の限られている携帯電話よりも、フルキーボードが使えるパソコンのほうがはるかに楽だ。EZ PIM機能も、EZマイページからデータを入力できるので、最小限の変更のみ、携帯電話上で行なうようにすれば、能率よく利用できそうだ。


●WAP対応コンテンツを作るには?

 先ほど検証したように、やはり通常のHTMLで記述されたWebページは、そのままEZアクセス対応端末で正しく閲覧できるとは限らない。HTMLベースのWebページとは別に、WAP対応コンテンツを用意しておけば、今後WAP対応端末が各社から登場してきた際にも、そのまま利用できる。

 EZアクセスの場合、HDMLを利用してページを記述することが前提とされている。HDMLでは、それぞれの画面に表示される内容をカードと呼び、一度に複数のカードをダウンロードできることが特徴だ(カードの集まりをデッキと呼ぶ)。タグの数もHTMLに比べて少ないので、HTMLが書ける人ならHDMLでページを記述することもすぐできるだろう。HDMLの仕様については、W3Cで規定されている。また、IDOでは、WAP対応コンテンツを作りたいという人のために、WAPコンテンツ講習会を定期的に開催している(有料)。具体的な情報については、IDOのWAPインフォメーションに載っているので、参考にしてほしい。


●クリアな音声通話を望むなら買い

 鳴り物入りで登場したcdmaOneであるが、実際に試用した上での感想は、「確かに音声通話は素晴らしい。しかし、インターネット対応機能には、まだ改善の余地が残されている」というものだ。cdmaOneの技術自体は素晴らしいものであり、スーパーデジタルという呼称も決して大げさではない。また、年末までには韓国や中国(香港)でも、日本で使っているcdmaOne端末が利用できる国際ローミングサービスが開始される予定である(現在発売されている端末では、国際ローミングサービスの利用は保証されていない)。

 インターネット対応機能に関しては、WAP自体がまだ発展途上の規格ということもあり、現状では独自規格をベースにしたiモードのほうが洗練されているという印象を受けた。また、C201Hは、バックライトがオレンジ色で見にくく、フォントも綺麗とは言い難いなど、液晶パネルの視認性はあまりよくない。ほか、あるキーを長く押すとメニューが出てきたり何か機能が働くといった、隠しコマンド的なところもあり、マニュアルをしっかりと読まないとならないなど、操作性の難しさも少々目立つ。
 もちろん、cdmaOneそのものの欠点というわけではなく、また携帯電話としての携行性との兼ね合いもあるわけだが、もう少し端末の完成度を上げて欲しかったというのが正直な感想だ。

 結論として、音声通話を重視するなら、EZアクセス(cdmaOne)対応端末をお薦めする。ただし、Eメールの送受信やインターネット経由でのサービスを重視するなら、現状ではiモード対応端末のほうが優れている。もちろん、第2世代のEZアクセス対応端末が登場してくれば、その評価は変わってくる。また、これから予定されている64Kbpsデータ通信やパケット課金なども魅力的だ。WAPはこれからが期待される国際規格であり、今後登場してくる端末では、前述したような問題が解決されることを期待したい。
 なお、C201HとcdmaOneのインプレッションについては、PC Watchのスタパ齋藤氏の連載法林岳之氏の非同期通信レポートでも取り上げられているので、そちらも是非御覧いただきたい。

('99/4/30)

[Reported by 石井英男]


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