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【音楽配信】

プロアーティストとして日本初

インターネット音楽配信の突破口となるか
P-MODELが新曲をMP3で配信

■URL
http://netnavi.nikkeibp.co.jp/mp3/P-MODEL/ (P-PLANT)

P-MODEL 日本のテクノポップの草分けとして知られるバンド「P-MODEL」は、MP3を使ってインターネット上で新曲を配信すると発表した。すでに、日経BP社の協力により専用のサイト「P-PLANT」を立ち上げ、MP3によるサンプル曲を公開している。プロアーティストとして、新曲をMP3で配信するのは日本で初めての試みとなる。

 P-MODELは、'79年に結成されたテクノポップバンド。YMO、プラスティックスとともに、日本のテクノポップの草分けとも言える存在だ。今後は「音楽産業廃棄物~P-MODEL OR DIE」のプロジェクト名で、インターネット上での音楽配信を展開する。同バンドは、プロジェクトの開始にあたり、メジャーレコード会社との専属契約を打ち切ったという。


平沢進 “音楽産業廃棄物”の名称について、P-MODELのリーダー平沢進氏(写真)は、「メジャーな音楽産業が廃棄したもの」との意味が込められているとしている。それまでのメジャーでの活動の中では、ある程度のセールスを見込んだCD製作など「ポップさを強いられる」局面があり、売れ線でないものは、旧来の音楽シーンにおいては“廃棄物”であるという考えだ。P-MODELは、同プロジェクトの宣言文で「インターネットを通じて、リスナーと音楽家を直結するこのテクノロジーは、悪習と保守主義の権化である、過去遺産的音楽産業の終演を予感させ、同時に新しい音楽シーンを浮上させる」としている。

 配信される音楽については、2000年までに、アルバム4作分に相当する曲をMP3で発表する予定。'80年代初頭のライブの雰囲気を再現した「Virtual Live Series」3作と、全曲書き下ろしのニューアルバム1作がリリースされる。それぞれに収録される曲は、1曲単位で購入できるほか、MP3によるサンプルも提供される。1曲の価格について、詳細は未定だが、300円程度になる見込みだ。決済手段については、電子決済用のプリペイドカード「BitCash」が利用される。なお、これらの音源は、インターネットでの配信のほかに、インディペンデント系のレーベルから通常のCDパッケージとしても順次発売される。また、P-MODELが、MP3による「カラオケ」を配信し、リスナーに歌ってもらったデータをMP3で回収、その音源でトリビュートアルバムを作成しようという「グローバル・トリビュート・プロジェクト」を8月に開始する予定だ。

 なお、公開されるMP3ファイルについては、著作権保護機能は加えられていない。違法コピーについて、平沢氏は「デジタルコンテンツがコピーされ続けることにみんな神経質になりすぎ。個人で使用する限りにおいては、FMからエアチェックするのと変わらない。ただ、サイトで公開するのはもっての他だが、今回は特別な処置はしていない」と語っている。


サエキけんぞう 他のミュージシャンにとっても、インターネット上の音楽配信は興味深いものに映るようだ。歯科医兼ミュージシャンとして知られるサエキけんぞう氏(写真)は、P-MODELの試みについて「おもしろいと思う。絶版ものや旧譜の発掘など、今後オンラインでの販売には大変興味深い点が多い。ただ、CDにはジャケットも含めたパッケージとしての魅力もあるので、これまでのCD販売流通がすべてオンラインにシフトするとは思わないけど」としている。同氏は現在、ソニーによる衛星を利用した音楽配信システム「MusicLink」での音楽配信を構想中とのこと。

 海外ではすでに、ラップグループの「Public Enemy」が、MP3による新譜を発表している。国内でのプロミュージシャン(メジャーレコード会社からCDを出していて、それで食ってる人)では、今回のP-MODELの試みが初となる。決して大メジャーではない、かと言って、まったく知られていない訳でもない同バンドだが、その試みが、今後のインターネット上の音楽配信にどんな影響を与えるか要チェックだ。なお、平沢氏は「ビッグネームだったら、もっと大変なことになるでしょうね」と語っている。

 なお、Virtual Live Series第1弾では、'80年代初頭のライブハウス「S-KEN Studio」でのライブを再現するという。S-KEN Studioは、日本国内でのパンクムーブメントの発祥の地とも言われる所。数々の名バンド/演奏を生み出しており、インディペンデントレーベルも生み出してきた。20年前、既存の音楽業界システムに縛られずに、自分達でレコードを作ろうとした姿勢が、インターネットに舞台を替え、新たな動きを見せようとしている。

('99/5/31)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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