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【Fall Internet World '99レポート】

Fall Internet World '99基調講演レポート
CAのCharles Wang CEO――人間の思考回路よりも賢い「Neugents」

CAのCharles Wang CEO
CAのCharles Wang CEO

 10月6日から8日までニューヨークで開催されている、インターネットの最大規模のトレードショー「Fall Internet World '99」で、2日目の基調講演を務めたのは、Computer Associates International(CA)のCharles Wang CEO。同氏は、インターネットはすでに日常生活の一部になっており、今後は単にデータを処理するだけではなく、データを分析/判断し、自動的に問題解決を行なう「ナレッジ」を構築することが不可欠になるという展望を語った。今回の基調講演は、当初、Wang氏ではなく同社のCOOが行なう予定になっていたが、Wang氏の登場により会場は大いに盛り上がった。


●多くがデータとナレッジを混同


 Wang氏は「今後、ビジネスチャンスはネットワーク中心のモデルから生まれる。ITネットワークが、インターネット商取引(EC)のOSになるのだ」と語り、ここ数年で急速に進化している企業のITネットワークがビジネスのやり方を大きく変えることになるとした。しかし、同氏はビジネスのやり方自体を教えようとしているのではないということを、ジョーク交じりに説明した。

 「先日、5番街を歩いていたとき、1人の物乞いが私のもとにやってきた。なぜ彼が物乞いだと分かったかって? それは彼のTシャツに『モノゴイドットコム』と書いてあったからだ。彼は私に『コーヒー1杯、100ドルで買わないか』と尋ねてきた。私が『コーヒー1杯で100ドルなんて、ずいぶん高いじゃないか』というと、彼は『俺は”イエス”か”ノー”かを知りたいんだ。商売のやり方について、口出しされる筋合いはないぜ』と言った」。

 同氏は、インターネットがもたらすパラダイムシフトはまた、インテリジェントなITプラットフォームとデータ管理へのニーズを大きく高めると予測する。ここで同氏は、データとナレッジの違いに言及し、「多くの人がデータとナレッジを混同している。この2つはまったく異なるものだ。データ自体はいかに量が多くても何の意味も持たない。ナレッジは、それらに意味を与えるもので、収集されたデータを分析/判断することだ」と語る。同氏は、データベース、電子メール、ボイスメールなど異なるタイプのデータをすべて統合するシステムが必要だとし、さらにこれらの膨大なデータをリアルタイムで分析判断するナレッジの構築が必要だと説く。

●人間の思考回路よりも賢い「Neugents」


 Wang氏は、ナレッジの構築のためには、同社が開発したAI(人口知能)ベースのアプリケーション「Neugents」が最適だと主張する。Neugentsは、人間の思考回路よりも素早く状況判断を行ない、問題が起こるのを事前に察知して事故を防止できるアプリケーション。これを可能にしたのが、膨大な量におよぶデータをリアルタイムに分析し、わずかなパターンの違いも見逃さない「神経ネットワークテクノロジー」だ。神経ネットワークテクノロジーは、人間の思考パターンを分析し、問題解決のナレッジを構築している。

 ネットワークやシステム管理者などのビジネス顧客向けに開発された同テクノロジーは、同社の新製品「Jasmine ii」に活かされている。同氏は「テクノロジーはたえず変化しており、その速度に追いつくのはなかなか難しい。変化に素早く対応するためには、我々は共通のインフラを持つべきだ」と語る。そのインフラとは、同社が力を入れているナレッジだということを示唆して「ナレッジには、値がつけられない。ナレッジは未来であり、ITにとってのフロンティアだ」と語った。

●「ビジュアル化」が進むWebの世界


 Wang氏はまた「ビジネスで重要な決断を下すために必要なデータは増加の一途をたどり、それを読む時間は逆にどんどん減少している。そこで重要度を増してくるのが、”ビジュアル”だ」と語る。同氏は、映画に感情移入するのは、ビジュアルの持つリアルさであり、本を読んでいるときにも大抵その光景を思い浮かべている。また、飛行機の軍事訓練などで3Dのシュミレーションを行なうのは学習速度や記憶保持率が高いからだ、とする。

見つかった行方不明の子供
見つかった行方不明の子供。左が行方不明時
の子供の写真、真ん中がCAの年齢進行テクノ
ロジーにより割り出された子供のデジタルイメー
ジ、右が見つかった子供の写真。

 同氏は「CAでは、効果的なビジュアル化を行なう3Dインターフェイスを開発しており、これを使用したビジネスアプリケーション『Unicenter TNG』を3年前に発表した。この製品は、3Dモデルを統合した初のビジネス向け製品だった」と語る。また、同社の3Dテクノロジーを使って人気自動車、Dodgeのミニバンをいかにデジタル化するかというデモも行なった。

 同氏は、主に娯楽市場で使われてきた3Dテクノロジーが、ECの成長とともに今後はビジネス市場でも大きく求められるようになるとし、「メーカーと顧客の間に入る仲介者がいなくなる。その分、顧客が自由に製品を見たり触れたりできるようなサイトが必要になってくるのだ。バーチャルリアリティは、ECを促進する」と語る。

 最後に、テクノロジーを使用するのはあくまで社会に貢献するためだとし、「行方不明の子供たち」の捜索のために、CAが開発した特別なテクノロジーを使っていると紹介した。「年齢進行テクノロジー」と呼ばれるこの技術では、AIを使用したデータ分析により行方不明になった子供の数年後の姿を予測、ビジュアル化する。実際に見つかった子供の、その子供は予測されたイメージとほぼ類似していた。


('99/10/8)

[Reported by HIROKO NAGANO,NY]


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