INTERNET Watchでは今年も1年間、インターネット関連のさまざまなニュースを掲載してきた。しかし、発表時点ではとり上げても、ニュースのその後の展開を紹介する機会はほとんどなかった。例えば新しく設立された会社の事業は進んでいるのか、そのサービスが実際にどういう評判を得ているのかなど、気になることも多いだろう。
そこでこの企画では、今年本誌で掲載した中からいくつかのニュースをピックアップして、“ちょっと気になる、あのニュースのその後”をレポートする。
1回目は、4月8日号に掲載した「高速インターネット接続サービスの@Home社が日本法人設立」というニュース。米国で84万世帯の加入者を抱える大手CATVインターネットプロバイダーが、日本でのサービス提供に向け、ジュピターテレコム(J-COM)や住友商事とともに合弁会社「アットホーム・ジャパン」を設立するというものだった。広帯域の常時接続サービスが比較的低料金で利用できるということで、国内でもCATVインターネットへの期待が高まっているが、まだまだ提供しているCATV会社は限られている。自分の住む地域の局がやっていなければ、それまでなのである。それが、国内最大のCATV統括運営会社であるJ-COMと組んだのだから、提供エリアも一気に広がるということで、期待した読者も多いことと思う。
ところが、「商用サービスを2000年にも開始する」というアナウンスを残したまま、その後はとんと音沙汰なし。代わってスピードネットやソニーの無線通信事業参入、NTTのADSL試験サービスなど、広帯域/常時接続サービスのニュースが相次いだため、アットホーム・ジャパンの影はすっかり薄れてしまった。ライバルとも言えるサービスが次々と発表される中、アットホーム・ジャパンは何をしているのだろうか?
「我々自身、活動を始めてまだ1カ月ですから」。アットホーム・ジャパンの廣瀬禎彦代表取締役社長は、引っ越したばかりの新オフィスでこう語った。取材は11月の半ばだったので、同社が活動を開始したのは10月に入ってからということになる。廣瀬社長が就任したのも11月のことだという。確かにそれでは、今まで何も音沙汰がないはずである。
しかし、その間にも他のCATVインターネットプロバイダーは着実に勢力を拡大している。タイタス・コミュニケーションが提供する「ALLNET」は、すでに千葉、神奈川、東京などでインターネットサービスを展開し、加入者が急増しているという。また、関西地区のJ-COM系列局では、アットホームを待つまでもなく、すでに関西マルチメディアサービス(KMS)による「ZAQ」ブランドのインターネットサービスが提供されている。このままでは、アットホームの入る余地がなくなるのではないだろうか。
廣瀬社長は、競合サービスとも言えるタイタスやKMSについて、「彼ら自身、自分たちでインターネットサービスをやることのリスクは十分承知しており、できればCATV本来の設備投資以外は行ないたくないというのが本音ではないか」と指摘する。すなわち、条件によってはむしろ、「インターネット部分はアットホームにまかせる」という判断もあり得るという。どうやら、アットホーム・ジャパンでは、こういった系列を超えた展開も視野に入れているようだ。
一方、無線やDSLなど他の広帯域インフラとの競合については、「今現在、技術的に安定しているのはCATVのみ」であり、「今後2、3年間はCATVインターネットが最も強い」としている。
さて、具体的なスケジュールだが、「今までののんびりしたスケジュールを縮めるつもり」だとしており、「2000年のゴールデンウィークをめどに実験を開始、2000年中頃には商用サービスをスタートする」。当初はJ-COM系列局で展開する方針だ。現在、J-COMブランドで提供されているインターネットサービスが、自動的にアットホームブランドに切り替わる形となる。その後は、J-COM系列以外の局についても売り込んでいき、サービスエリアの「フラグメント化」を解消したいとしている。また、2002年から2003年ごろをめどに「最終的に3Mbps程度」のサービスを提供したいという。サービスメニューを1月中にも発表する予定だ。
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(1999/12/20)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]