■URL
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/
実物とデジタル画像が混在する展示風景 |
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具体的な展示は3つの柱からなる。まず、東大の数百万点に及ぶ学術資料のうち、縄文時代の土偶・土製品、植物標本などの7ジャンル、1万5,000点をデジタル化した「東京大学総合研究博物館データベース」。実際の標本などと併せて、過去の展示会の資料や研究論文などを設置端末やWebから閲覧できる。通常は多くの目には触れにくい学術資料を、デジタルデータを利用することで一般に公開可能な形にしたものだ。
壺の説明ラベルの赤いライトにレーザーポインターを合わせると解説が再生される |
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次に「博物館型強化現実環境」。これは実際の物の展示をコンピュータで支援しながら、より効果的に見せる技術だ。今回は東大の持つ縄文コレクション約400点を「縄文の記憶」と名付け、この技術を用いて展示している。
例えば来館者が透過型ヘッドマウントディスプレイを装着して展示を見ると、その見ている物に合わせた解説が空中に投影される。またレーザーポインターを使って展示物を指し示すと、音声解説がヘッドフォンから流れる、などといった技術を体験できる。また非接触型ICカードを用いて、自分の見た展示物の情報を記録し、あとで自宅のPCから記録を呼び出して、Webで詳しい資料を読む実験も提供される(実際にはICカードリーダーが家庭にないので、各ユーザーにパスワードを発行してアクセスする形)。これらの技術は、希望すれば誰でも試用可能だ。
さらに21世紀の博物館コンセプトとして、「分散ミュージアム構想」を提案。複数の博物館を高速回線で結び、分散して入力されたデータをコンピュータ上で融合させ、1つの博物館のように見せるコンセプトだ。実際には千葉県佐倉市の国立歴史民族博物館と会場を6Mbpsの回線で接続し、双方の様子を大スクリーンに常時表示。東大で見ている画面から、民博の展示物をレーザーポインターで示して説明を呼び出すといったデモを見せた。また沖縄、北海道の遺跡の模様をストリーミングで提供している。これらの技術には「文字データのデジタル化に優れ、開発時間が短縮できる」(東京大学総合研究博物館教授 坂村健氏)TRONをプラットフォームに用いている。
ポインターとヘッドフォンを付けて実演してみせる坂村教授 |
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今回は、展示をすべて無料で見せることもポイントとなっている。展示会の実行委員長を務める坂村氏は「現在は世界的にデジタルミュージアム化が進んでいるが、日本では費用などの面でまだ問題も多い。今はとにかく情報を出していくことが重要で、これを続ければ、10年後くらいに“情報にお金を払ってもいい”という時代が来るはず」と述べた。展示会で使っている技術も、大学以外に積極的に出していきたいという。
また「現在の最新の研究結果を、来館者ができるだけそのまま見られるような形で提供している。たとえ学術的な専門用語が多くても、一般の人にはわからないだろうと思わず、本物をオープンに見せることが大事」とも述べ、閉鎖的な面が強い学術分野で積極的に情報を公開していくべきだとした。
展覧会は3月1日から4月28日まで、東京大学総合研究博物館1階展示ホール(東京都文京区本郷7-3-1)で行なわれる。
(2000/2/29)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]