Stanford Business SchoolのMichael Morris助教授は、「ビジネスにおける交渉が異なるメディアによってどのように影響されるのか」を研究した。
熟練したビジネスマンは、交渉の席でできるだけ相手と個人的な信頼関係を築き、積極的な感情で空間を満たそうとすることは、一般的に知られている。このことは、面と向かって交渉した方が、電話で交渉するよりは成功率が高く、面と向かって話をした方が顔の表情などでニュアンスが伝わりやすいということを指すと思われる。実際、電話よりもさらにニュアンスが伝わりにくい電子メールの場合、ロールプレイングでの実験の結果、交渉が失敗する確率は高くなった。では、電子メールで交渉を行なう場合、どのような注意を払うべきなのだろうか。
Morris氏と同僚による研究の結果では、「相手との信頼関係を築くためのコンテンツをメールに含めること」が交渉を成功させるための1つの秘訣であることが判明したという。実験の中で交渉に成功したペアは、「この点についてあなたが柔軟性を示してくださったことに感謝します」とか「私たちのこの交渉では大きな進展を見ることができました」など、これまで互いに築き上げてきた関係に基づいた、積極的な感情をメールの文面ににじませていた。面と向かって話すときには自分の感情を表現したり、相手との信頼関係を明確にすることは不必要だと思うかもしれないが、実はその場合、表情や言葉の調子によって相手に伝わっているのであって、メールの場合はそれらを明確にしなければ決して伝わらないということだ。
しかし、メールにはこのような不便な点だけでなく、便利な点もある。面と向かって交渉するときには早い決断が求められるためにストレスが加わる場合があるが、メールでは返答をする前にじっくり検討する時間がある。
こうしたメリット、デメリットを考慮した上で、どのような状況の下でメールでの交渉は効果を発揮するのだろうか。
Morris氏は同じビジネススクールに通っていたペアと、違うビジネススクールから来たペアでロールプレイングでの実験を行なった。すると、同じビジネススクールからきたペアの方が交渉の成功率は高かった。それは、メールの文面に誤解を生じるような文章があった場合にも、良い方に解釈する場合が多いことにその原因があると思われる。逆に別のビジネススクールから来たペアの場合にはそのような行動は見られなかった。
従って、交渉者の間にある程度の信頼関係が既にある場合には、メールの文面による誤解などによる悪循環が避けられ、交渉が成功する場合が多いと言える。こうしたことから、メールでの交渉に入る前に電話で何気ない会話を交わしたり、ボイスメールやビデオメール、ビデオ会議などを併用することが効果的だといえそうだ。
(2000/3/6)
[Reported by taiga@scientist.com]