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【業界動向】

インターネットでマスコミの取材方法は変わるか?
~三宅島緊急火山情報から~

 6月26日 19時30分、火山噴火予知連絡会は臨時火山情報第1号を発表した。それとともに、三宅島観光局掲示板や商工会議所掲示板、三宅島災害対策メーリングリストなどに各報道機関から最新の情報や映像を求める書き込みがなされた。

 内容は「島の最新の様子を伝える映像を必要としているため、撮影された方がいらっしゃれば連絡を頂きたい」、「避難所で足りない物資、必要とされる生活情報など災害に関する情報や意見を聞きたい」、「記者が到着するまで時間がかかるため、現地の方に話を伺いたいので電話を下さい」など。これに対し、書き込みを見た人達の一部から、掲示板に明記されていたメールアドレスへ大量の「実際に現場に入らず、現地の人達に危険を冒させてまで映像や情報を得ようとするな」「自社の報道のためにネットワークを利用するな」などの批判や中傷メールが送られる騒ぎとなった。

 当事者である各報道機関に、掲示板などへの書き込みについて意図を尋ねると「万が一、情報がくれば儲けものであくまで賭け」、「取材範囲を広げるため」、「現地で取材している記者のバックアップ」、「最新情報を得るため」と意見はさまざまだった。しかし、共通していたのが、これまでも取材ツールとしてインターネットを利用しているため「特別なことではない」という点だ。報道機関にとって、インターネットは取材ツールの1つとして確立されてきているが、それによってこれまでの取材手法・方法が一変するのではなく、情報収集の「手助け的役割」が新たに加わったに過ぎないのだろう。事実、「インターネットの出現により取材方法が変わるか」と尋ねると、「変わることはない」と各社揃って断言した。「あくまでインターネットは参考程度のもの。特に掲示板などのような不特定多数が書き込みできる場所からの発信される情報は、信憑性からいってもネタもととして確立することはないだろう」と述べる報道機関もあった。

 インターネットは今、情報収集やコミュニケーション能力において重要なポジションを担っている。「副次的なもの」と語る報道関係者も新しい取材ツールの一つと認識してインターネットを利用したのだろうし、一方今回非難を行なった人達もインターネットで三宅島の情報を得ていたものと思われる。このようにインターネットは、かつての電話などがそうだったように、新しい「情報ツール」または「情報武器」の1つとして今後も活用されることは間違いない。実際、三宅島の現地情報については現地からの電話等での情報提供をTVで募集していた。今回の件は、こうしたインターネットの利用方法について、使う人間の認識がまだ追いついていないことを示している。報道機関はこれから対面や電話と同じように使われるであろうインターネットを使った取材活動の手法や方法について今一度考える必要があるだろうし、またそうした情報を見る側も特別視するのではなく、それをどう使うことが現地の人などに望まれているかといった意識への転換する必要があるだろう。いずれにしても、「新しく」かつ「普及した」双方向メディアの使い方について、使う人間が活用する「術」を確立する意識改革が必要なのである。

(2000/7/4)

[Reported by moriyama@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp