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【INET 2000レポート】

中心人物が集まった特別パネル「IPはどうなるか?」

The Future of the Internet Layer

 横浜で開催されたインターネットの国際会議「INET 2000」において、インターネットを支える中心技術であるIPプロトコルについて、世界で中心的な立場にあるメンバーによるパネルディスカッション「The Future of the Internet Layer」が開かれた。IPの発明者であり「インターネットの父」と呼ばれるVinton G.Cerf氏(ISOC/WorldCom)や、日本にインターネットを構築した村井純氏(慶應大/WIDEプロジェクト)など、そうそうたるメンバーが壇上に座り、朝一番のセッションにもかかわらず多くの聴衆が集まった。

 このセッションにおいては、INET 2000で大きく扱われている次世代IP仕様「IPv6」について、まさに今必要とされていることが各パネリストにより語られた。特に、WAPやiモードなどによる無線(携帯)端末により、ここ1年で世界的にインターネット利用が大きく増加し、大量のIPアドレスが必要とされていることが示された。

 Cerf氏は、携帯端末の普及などにより2006年には15億個のIPアドレスが必要となるというデータを示し、IPv6に移らなくては間に合わないと語った。ほか、ハッキング(“Hacking”)の脅威に対するセキュリティの問題や、やがて来る宇宙時代に地球と火星のIP通信をどうするか、といった問題を提起した。

 また、Geoff Huston氏(ISOC)は、インターネットは人間のする全てのことをサポートするようになるだろうと語り、そのためには、まだ今は誰も考えていないようなアプリケーション(利用法)に備え、柔軟性のために拡張性の確保が必要になると説明した。

 Gabriel Montenegro氏(Sun Microsystems)は、「私はこの1年で心変わりした」とまず宣言した。NATによるゲートウェイを使えばまだIPv4でも大丈夫と考え、そこで(チャットやネット対戦ゲームのような)エンドツーエンドの通信も利用できる技術があると考えていた。しかし、携帯端末の普及により、IPv4でもやってやれないことはないが、キャリアに莫大な負担がかかると考え直したという。

 反対にMatt Holdrege氏(ipVerse)は、ファイアウォールの必要性やIPv6への移行の大変さから、これからもNATは必要と主張し、ツールを標準化していくことが求められていると語った。

 一方、村井氏は、車のコンソールに入るインターネット端末を紹介し、走行状態をインターネット経由でモニターした実験を報告した。こうした機器が全ての車につけられるようになると、それだけで世界で億単位のIPアドレスが必要になる。ほか、ICカードを使ったモバイルEコマースなどの例を挙げ、「インターネットをエンドツーエンドの通信を享受する手段に」という理念からIPv6の必要性を語った。

 会場から「インターネット資源が北米に集中していて、周辺ではアドレス割当などが遅い」などの意見も活発に出された後、多くの聴衆を集めたパネルディスカッションが終了した。


(2000/7/22)

[Reported by masaka@impress.co.jp]


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