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【インタビュー】

「ECでも小売店でも原則は同じ」――CD販売のHMVジャパンEC本部長に聞く

■URL
http://www.hmv.co.jp/

David Terrill氏 大手CD販売のHMVジャパン株式会社は、オンラインショッピングサイト「hmv.co.jp」を10月にリニューアルし、ゲームソフトやエンターテインメント系書籍の販売を開始する。

 HMVジャパンでは、1999年9月末に国内/外の音楽CD約67万タイトルを扱う大型のオンラインショッピングサイトを開設した。2000年6月にはタイトルを約70万にまで増やし、サイトをリニューアルした結果、売上が3倍になり、HMVの実店舗でいうと中型店クラスにまで成長したという。

 同社では、10月にさらにリニューアルを加え、ゲームソフトなど商品の追加のほか、コンビニエンスストアでの支払いや音楽のダウンロード販売なども計画しているという。今回、HMVジャパン取締役 E-commerce本部長のDavid Terrill氏に同社のEC展開について語ってもらった。

 


●6月のリニューアル後、ユーザーが増加したとのことだが、要因は?

David Terrill氏

 サイトを訪れる「ビジター」と、実際の購入に至る「顧客」に分けられるが、ビジターに関しては、4万から20万ページビューに増えている。ただし実際にその人数が増えた訳ではなく、ページ数が増えたことが原因だ。顧客数については2.5倍から3倍になった。これは、毎週増加傾向にある。リニューアルは非常に成功したと言える。それは、顧客から良くないと指摘されたところを改善したのと、一番最初はデザインに凝りすぎていて複雑だったのをシンプルにしたことが要因になっていると思う。

 また、携帯電話に向けたサービスを提供しているが、携帯電話の普及にともなって売上も増加している。(7月にiモード向けのサービスを開始してから)7週間以内でEC全体の売上の25%を占めた。今後2、3年後を考えると携帯電話での売上は通常のサイトでの売上の2倍くらいになるのではないかと予測している。

 

●「配送料無料サービス」が人気だが、それはいつまで続くのか

David Terrill氏

 その質問はよくされるのだが、まだ終わりの日は設けていない。ただ、今後は少し変更していかなければいけないと思っている。ちょうど、最近、購入フローの見直しをした際に配送料の見直しも行なった。今度、新しい配送オプションとして「特急便」を設ける予定だ。これは、例えば10枚注文した場合に、10枚揃ってから出荷を待つのではなく、レコード会社から受領されしだい配送するというものだ。可能性としては10回分の送料がかかるといえるが、これを全部無料というのではやっていけない。そこで、1回目は無料、2回目からは有料、というようにしようと考えている。

 もちろん配送料無料というのは魅力的なオファーではあるが、個人的にはそのオファーがサイトで買い物をしてくれている1番の原因だとは思っていない。お客さんが買い物をする判断の基準になるのはデータベースの大きさだったり、サイトのクオリティだと認識している。

 

●現在CDパッケージ販売がメインだが、ダウンロード販売についてどう考えているか

David Terrill氏

 HMVでは、パッケージとダウンロードを区別していない。「音楽を提供する」というビジネスで80年間進めているが、その中には78回転盤とかLPとか、CDとかカセットとかいろいろなフォーマットがあった。ダウンロードもそのフォーマットの1つだと思っている。ディストリビューションが変わるだけで音楽そのものであることには変わりない。ダウンロードで販売するにあたっても、その商品の分類をして、マーチャンダイジングをしてお客さんに勧めて、という小売りのスキルは必要になる。

 ダウンロード販売は進めていく方針だ。MP3やNapsterなどよく話題になっているが、私は、技術のほうだけが先走っているような気がする。

 もちろん、将来的に多くの人がダウンロードのほうがいいというかもしれないが、今後何年かはパッケージだと思う。

 

●例えば、現在自分達で配信しているレコード会社の場合は、小売店を経由していない。それについてはどう対応するのか

David Terrill氏

 現在、それらのレコード会社とは協議を進めている。小売りを介さないという状況は、じきに変わると思う。今後、彼らだけでダウンロードをやっていくということはないと思う。その場合、今までのパッケージ販売と同様に売上からマージンをもらうというモデルになる。

 ただ、ダウンロードに関してはここ先5年くらいは利益を出せる会社はまったくないと思う。

 

●Napsterの存在はCD販売に影響を与えると思うか

David Terrill氏

 特定の年齢層に限っては影響があると思う。お小遣いとか資金に余裕がなくてもNapsterにアクセスするだけで音楽が聴けるから。全体的な影響は…ちょっとは出ると思う。

 レコード会社も今気にしているところだと思うが。Napsterには、そのアーティストの音楽を今まで知らなかった人に聞いてもらえる場合があるなど、プロモーションツールとしての可能性がある。ただ、著作権がまったく無視されている。音楽業界では、音楽を無料で届けるというのは納得できないし受け入れられないと思う。

 

●10月に予定されているリニューアルの内容は

David Terrill氏

 商品ラインに、ゲーム(PlayStation用など)とエンターテインメント関連の書籍を追加する。それからギフト購入も可能になる。ちゃんとラッピングしてメッセージカードを付けて贈りものができるというもので、包装紙もカードもいろいろ選べる。

 また、カスタマーサービスとしては、分割配送オプションを充実させる。あとは、コンビニでの支払いと商品の受け取りも協議中だ。ほかには、ディスカウント販売も増やす。

 リニューアル後の目標は売上30%アップだが、私は50%アップ、売上10億円くらいと見ている。

 

●今後のEC展開について

David Terrill氏

 ECを通常のビジネスと比べて特別視している人もいると思うが、私はそうは考えていない。店舗に入ると雰囲気が好きか、お金を使おうかというのはすぐわかる。その原則はECでも同じだと思う。

 数年前は小売店はなくなって全部ECになるという意見もあったが、実際には小売店のスキルは、そのままECに直接反映されるのではないかと思う。欲しいものが見つかればお客さんはまたサイトに戻ってくる。そして、こちらから低価格で提供するなどのいいオファーをすれば成功する。

 HMVで重要としている価値観は、ECと小売りの両方で共有している。その価値観とは、品揃え、デザイン、商品知識、カスタマーサービス、伝統、そして、国際性ブランドだ。

 

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(2000/8/24)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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