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【インタビュー】

「情報収集や分析のノウハウをシステムにする」
――橋本大也氏・小橋昭彦氏のデータセクション社

  橋本大也氏・小橋昭彦氏
  橋本大也氏(左)と小橋昭彦氏(右)。後ろに見えるのは、データセクション社の「4つのロゴ」

 インターネット上には大量の情報があるが、最近になって、ユーザーがそうした中からいかに欲しい情報を手に入れるかがテーマとなってきている。「Ask Jeeves」のような新しい情報検索サービスや、「ExpertCentral」のようなQ&Aサービス、「About.com」のような情報ガイドサービスなどの流行も、そうした流れのあらわれだろう。

 そんな中で今年7月、Webサイト運営やWebサービスに関するML&メールマガジン&Web「アクセス向上委員会」の橋本大也氏と、マーケティング関連の注目URL集に雑学コラムを添えて送るメールマガジン「今日の雑学+」「Unplagged」の小橋昭彦氏という、「知恵者」2人が組んで「データセクション株式会社」を設立。こうした情報収集に新しいアプローチで取り組むという。「1年は開発期間」と語る2人が、どんなビジョンを持って会社を設立したか、尋ねてみた。

■データセクション
http://www.datasection.com/
■アクセス向上委員会
http://www.access.or.jp/
■Unplugged
http://unplugged.ne.jp/



●まずは、会社を設立されたいきさつから。

橋本: 「アクセス向上委員会」で情報を発信するノウハウを集めていて、情報収集そのものに興味を持ち、情報を分類してレーティングするようなプロジェクトをやってみたいと考えるようになりました。そのころ知り合った小橋や、KNNの神田敏晶氏などと相談して「データセクション」というプロジェクト名で動きはじめて、1999年春に「datasection.com」ドメインを取得しましたが、しばらくはそのままで(笑)。秋になって会社を設立することを具体的に計画しました。

小橋: ICQで、「会社を作る」とメッセージが来たので、「おめでとう」と返事したら、「小橋さんもいっしょに」と(笑)。

●データセクションではどんなサービスを?

小橋: 2人が情報をたくさん持っていますから、それをまとめて提供するようなところから話が始まっています。2人は同じようなことをやっているようで、方法論や出し方で違いがありますから、それぞれの違いを合わせる面白いのではないかと。

まずは2人がやっているような活動をシステム化できないかと研究しているところです。いまインターネットにはたくさんの情報がありますが、それをうまく集めてきたり、自分の知識として編集するというノウハウが足りない。

橋本: 多数のWebページなどの情報を、一つずつ自然言語処理により自動的に要約し、さらにそれらの類似性を検出して関連づけ・分類して検索できるようにするシステムを開発しています。さらにユーザーのレイティングも入るような。題材として「今日の雑学+」で紹介した大量のマーケティング関連情報のURLをこのシステムで分類しています。

ただし、それを実際にどのようなインターフェイスで提供するかといった部分は全くの検討段階です。

●「今日の雑学+」で月1回掲載している一ヶ月の動向サマリーを、自動的に作るようなものですか?

小橋: 例えば「2005年の携帯電話市場」について調べると、それでよかったかとコンピュータが聞いてきて、よかったと答えると「2005年の社会情勢」とか「携帯電話にかわるデバイス」とか関連する情報もいっしょに教えてくれるようなものがあればいいなと。

システムを考え始めた頃に言っていたのは、1冊の本を差出して「こんな感じの本が欲しい」とリクエストすると、それを見繕ってくれる図書館司書のようなシステムです。実際、昔の調査レポートを指定して「これに似た今の文書を探せ」といったことはできるようにしたいと思います。

そういった意味で、検索サービスというのは、検索窓に検索語を入れるというインターフェイスだけでいいのか、などと考えています。

橋本: 今までの検索はピンポイントの情報を調べるものですが、そうではなく、テーマを入れるとそれに関する情報のマトリックスそのものを調べてくれるようなものを作りたい。

私達はコンサルタントもやっているのですが、そうしたコンサルタントが調べる作業を助けるもの、またはコンサルタントのかわりに答えてくれるものを考えています。SF的なイメージとしては、私が毎日、本やサイトを読んで蓄積した知識や感性が、私につけられたコネクターからPDAのシンクロのようにコンピューターに伝えられて、勝手にまとめてくれるような感じです。

小橋: 最近、平凡社と日立が「ネットで百科」というオンライン百科事典サービスをやっていますが、これの情報の表示の仕方が面白いと思っています。例えば「豊臣秀吉」で検索すると、秀吉の情報が出るほかに、それに関連した項目のマトリックスも表示してくれる。

あと、つい最近登場したメタ検索サービス「WAKANO」の情報表示が面白い。検索した結果を、自動的に分類してくれて、ある意味でデータセクションでやろうとしていることと共通点がある。

●情報収集はこれからどうなる?

橋本: 少し前の検索サービスは定番が落ちついていましたが、最近になってまた「Google」「Direct Hit」など新しいアプローチの検索システムがいろいろと登場してきました。やはりまだ情報収集という目的には、現状の検索サービスでは間に合っていないのだと思います。

小橋: 情報収集するときに、一つ結果が出てくるだけではなくて、「こんな情報もあるんだよ」と教えてくれたりと、自然なやりとりをする中で関連する情報が出てくるようなものがいいですね。マイク・レズニックの「アイボリー」(ハヤカワ文庫)というSF小説があって、その中で主人公がシャワーを浴びながらコンピュータと対話して情報収集するシーンがイメージです。

遼太朗注:小橋氏の2才になるご子息。「今日の雑学+」で大人気)が「データセクション」君を連れて散歩に行ったとして、遼太朗が「この花、なに?」と聞くと、答えてくれて、さらに花言葉やその花にまつわる物語なども教えてくれるような、そんなシステムがあるといいですね。

(2000/9/7)

[Reported by masaka@impress.co.jp]


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