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第1位 | 売買手数料自由化を受け、2000年に入ってオンライン証券業が本番 |
第2位 | 株取引やファイナンス関連のサイトが増加 |
第3位 | 未熟なシステムに起因する取引/アクセスのトラブル頻発 |
第4位 | ネット専業/中小vs大手が取引手数料の値下げ競争 |
第5位 | コンビニなどと提携した自動決済サービスの増大 |
1999年10月に日本でも株式売買手数料が完全に自由化され、それと同時にオンライントレードが本格化。ネット専業証券会社が新規に設立されたり、既存の証券会社が直接あるいは新規の子会社を設立して参入するなど、昨年9月には36社だったオンライン業者が、11月現在では59社に。その間、合併や営業停止も数社見られたが、会社数は順調に推移していると言える。また、この自由化によって個人投資家の増大が期待されていたが、大和総研が8月に実施した調査によると、オンラインの口座数は130万口座と過去1年あまりの間に10倍ほど増大したという。
オンライントレードの登場とともに、インターネット上では株式取引やそのほかの金融情報を網羅したサイトの開設や、Yahoo! Financeなどの既存のファイナンス関連サイトもコンテンツを増やすなど活況を呈した。以前なら有料サイトでしか得られなかったような質の高い情報を提供するものもあり、情報が手軽に得られるようになることは特に個人投資家には有用であったに違いない。同時に、オンライン証券業でも顧客に対する各種情報サービスの提供が、取引手数料以外にも他社との差別化を図る手段となった。
その一方で、顧客からの注文がさばけないというトラブルも一時期、頻発している。原因は非常に単純なもので、回線容量が細いため証券会社サイトにアクセスできなかったり、サーバーの処理能力を超えると売買注文ができないというネットワークインフラに関わるもの。業者側が需要動向を読み誤ったことに起因するものであった。そんな中、HIS協立証券がシステムの不備による誤注文を放置し、クレームのあった顧客のみに取引を取り消すという不公正な対応をして、証券取引等監視委員会から勧告を受けていたことが10月に明るみになっている。
取引手数料の自由化は、人件費の面で圧倒的に低いオンライン証券業に有利に働くと見られ、手数料の値下げ競争が生ずるのではないかと期待された。実際、オンライン専業のマネックス証券やE*Trade証券などは低めの手数料を打ち出して、顧客獲得の目玉とした。既存の中小証券会社でも取引手数料の大幅な引き下げを実施したり、松井証券のように1回ごとの取引ではなく、成立した1日の取引に対して手数料を取るという新料金体系を打ち出すところも出てきた。これは1日に何回も、そして比較的少額の売買を繰り返すデイトレーダーには都合のいい料金体系ということで注目された。そうした動向に、大手証券会社の対応は分かれた。最大手の野村証券は手数料の値下げをしなかったが、日興証券は日興ビーンズ証券を通じて安い手数料によるネット取引を提供し、大和証券は30%程度の手数料の引き下げを行なって対抗した。
オンライントレード勃興期にあたったこの1年の動向は、全体的にはまずまずの成果があったと言えよう。しかし、取引手数料が下げ止まりの傾向にあったり、一部証券会社のサービスに対する問題もある。ここでは触れなかったが、オンラインとは名ばかりで受注した注文を社員が手作業で処理する業者や、24時間の取引に対応できないところなど、まだまだ課題は多いことも事実だろう。利用する顧客の側にも、証券や金融商品に対する知識が不足したまま取引に参加している傾向がないとはいえず、問題がないわけではない。来年以降、こうした問題が少しでも解決し、より便利でわかりやすい取引ができるよう、さらなる発展があることを期待したい。
(2000/12/27)
[Reported by yuy@ATTglobal.net]