【特集】

オトクで簡単! インターネット電話

 2000年後半からググッと盛り上がってきたのが“インターネット電話”だ。市販デスクトップPCにヘッドセットが付属するのも珍しくない昨今だし、ブロードバンド化とあいまって、インターネット電話の使いやすさと注目度は今後さらにアップするはず。今のうちに使い始めて、一足お先にお得なコミュニケーション手段を手に入れよう!

●インターネット電話って何?


 情報通信関連用語としてはもうおなじみの“インターネット電話”。本題に入る前に、その特徴を改めて押さえてみよう。

 インターネット電話とは、TCP/IPネットワーク上で音声データを送受信する技術(VoIP : Voice Over IP)を使ったソフトやサービスを指す言葉だ。この言葉でカバーする範囲はかなり広く、大きく分けると3つのタイプがある。
 まず1つめは、従来の一般電話回線ネットワークの一部をTCP/IPに肩代わりさせることで、通話料金を安く抑える、いわば“一般電話の代用”タイプ。ユーザーがPCを使う必要はなく、一般電話から通話をする際に、まず決まったアクセスポイントに電話をかけてID番号などを入力してから、かけたい相手の番号にダイヤルするというステップを踏むものだ。サービスとしては比較的以前からあり、代表的なものには「AT&T @phone」などがある。
無料で一般電話にかけられるのがウリの「ただTEL」
 2つめは、かける側も受ける側もPCを使う、“PC to PC”のサービス。いわば音声チャットとも呼べるのがこのタイプだ。動画やファイルの送受信を行なえるなど、多機能なものが目立つ。基本的にピア・ツー・ピアでやりとりするため、低速回線では音質などで不満が出る場合もあるが、今後のブロードバンド普及でこの点は解消されるだろう。一部にはPC to PCタイプに専用の受話器型アダプターなどを組み合わせて、「PCを意識せずにインターネット電話が楽しめる」とうたった製品も現れている。最近では「AOLインスタントメッセンジャー」などのメジャーなIMソフトが、バージョンアップ時に音声チャットや一般電話への通話機能を加えていく傾向もある。
 そして3つめが、PCから一般の電話へ通話できる“PC to Phone”タイプだ。2つめのPC to PCタイプだと、相手が同じソフトをインストールしていないと通話ができないが、PC to Phoneの場合は相手が一般電話を持っていればよいので、気楽に通話できるメリットがある。一般電話よりも安い通話料金で提供している場合が多く、サービスやエリアによっては、広告の閲覧などで無料通話ができるものもある。
 これら以外にも、企業の内線の役割を果たすものや、サポートセンターなど大規模なコールセンター向けの製品などにも、広い意味でインターネット電話と呼ばれる製品が多く登場している。この分野は「Computer Telephony」とも呼ばれ、近年注目を集めているところでもある。

 今回はこの中から、個人で使えるサービスやソフトをまとめ、その機能や特徴を取り上げていきたい。

●使う前にココをチェック!


 さて、各サービスの紹介に行く前に、インターネット電話を使うのに必要な機器について触れておこう。
 まず、貴方がインターネット電話に使うPCのOSがWindowsで、ここ2~3年の間に購入したものなら、まず問題はない。インターネット電話の必要条件が、だいたい以下のスペックになっているからだ。

・OS Windows Windows98/ME/2000
・Pentium166Mhz以上、メモリ32MB以上
・マイクとスピーカー、全二重サウンドカード(できればヘッドセット)
・56Kbps以上のスピードのインターネット接続環境
・InternetExplorer5.0以上をインストール済み
・JavaおよびJava Scriptが有効の状態

 このスペックを満たしていれば、ほとんどのインターネット電話をスムーズに楽しむことができる。敷居は決して高くないのだ。

 できれば用意したいものがヘッドセット。ヘッドフォンとマイクが一体化したものだ。もちろんスピーカーと据え置きマイクでも問題はないが、マイクと口が離れていると不要なノイズを拾いやすい。ヘッドセットは2,000円前後から購入できるので、手持ちがない場合はこれを機会に購入するのをオススメしたい。相手に自分の声がちゃんと届くため、と思えば高くはないのでは? 
 また、ほとんどのインターネット電話サービスが、最初にユーザー登録が必要となる。必要なソフトをダウンロードしてインストールするものと、Webアプレット型のものとがあるが、多くのサービスで最初に起動したときにマイクとスピーカーの動作チェックを行なうので、先につないでおくと慌てずに済むだろう。

 さて、使う前に気をつけたい点が2つある。1つはMacintoshとの対応状況だ。残念ながら、現在のインターネット電話で、Macintoshで使えるものは非常に少ない。今回取り上げたなかでは、「Yahoo! Messenger」「AOLインスタントメッセンジャー」「Roger Wilco」が対応しているのみだ。これについては各提供企業の動きを待つしかないのだが……。なお「ビットアリーナ」「PhoneFree」などは、Mac版を開発する方向という。
 もう1つが、会社などのLANで使う場合。LANやファイヤーウォールの内側では使用できないインターネット電話も多い。今回は編集部のLAN環境で使用できたものはその旨を記しているので、参考になれば幸いだ。

●注目度は一番! ~ PC to Phone・無料タイプ


大都市圏を中心にサービスを提供する「RiRiRi Phone」
 さて、それではここから、各インターネット電話サービス・ソフトの特徴や違いを取り上げていこう。
 まずは現在、熱い注目を集めている、一般電話に無料で通話できる“PC to Phone”タイプから。もちろんタダなのには理由がある。そう、広告だ。インターネット電話ソフトやアプレットには、ウィンドウ内に広告を表示するものが多く、広告やバナーをユーザーに見せることで、無料通話が可能となる仕組みを取っている。バナークリックでスポンサーの広告ページを見てポイントを貯め、そのポイントを使って通話ができる「ただTEL」のようなサービスもある。
 しかし、無料なだけに制約が多いのも事実。通話が可能な地域が限られている場合が多いのだ。というより、現在のところ無料通話対象区域が米国や韓国のみといったサービスが主流で、日本国内の一般電話に無料でかけられるサービスのほうが少数派といえる。利用する前に、希望のエリアに通話できるかどうかは確認したいところだ。各サービスの提供および説明言語は、「(日本語)・(英語)」、またという形で表している。

■「ただTEL」(日本語・アプレット)
http://www.tadatel.co.jp/
 バナークリックで広告を閲覧すると電話用のポイント「tel」が貯まり、集めたポイントで通話ができるシステムをとっている。特筆すべきは国内の携帯電話にかけられる点で、国内のサービスでは恐らくここだけのものだ。LAN内からも通話できたが、ポイントはLAN内からは加算されないので注意。韓国のWeb2Phone社の技術を利用している。

■「RiRiRi Phone」(日本語・アプレット)
http://www.ririri.ne.jp/
 動画の広告をダイヤルウィンドウ内に表示することで、通話を無料にしているタイプ。現在の通話可能エリアは札幌011、東京03、川崎044、横浜045、柏0471、川口048、浦和048、名古屋052、大阪06、福岡092(以上市外局番ベース)の10エリア。今年中には対応エリアを全国に拡大したいとしている。
【訂正】 当初対応エリアを「札幌011、仙台022、東京03、国分寺0423、千葉043、川崎044、横浜045、厚木046、柏0471、川口048、浦和048、川越0492、名古屋052、大阪06、京都075、神戸078、堺0722、広島082、福岡092、北九州093」と書きましたが、1月30日現在、拡大が遅れており上記10エリアのみに対応しているとのことでした。お詫びして訂正させていただきます。(編集部)

■「DialPad」(日本語・アプレット)
http://japan.dialpad.com/
 米国および韓国の一般電話とフリーダイヤル、米国は携帯電話にもかけることができるサービス。日本国内の一般電話と韓国の携帯電話は2001年中に対応予定。PC to PCの場合はもちろん世界中どこでも可能だ。LAN内からも通話可能。

'99年のサービス開始以来、急激に人気を集める「Media Ring」
■「MediaRing」(英語/日本語・アプレット/ソフト)
http://www.mediaring.co.jp/
 「Freecall」機能では、米国、カナダの一般電話へ無料通話ができる。通話は1回15分までの制限がある。また低価格で世界のほぼ全域に通話できるサービス「Voizfone」や、音声メッセージ付きのメールが送れるなど、多機能ぶりが光る。LAN内からは通話できない。

■「MSN Messenger Service」(日本語・ソフト)
http://messenger.msn.co.jp/
 インスタントメッセージで知られるこのサービスでも、米国の一般電話に無料で通話できる。もちろん米国外からも通話可能で、LAN内からも利用できる。Net2Phoneの技術を使用。

■「Yahoo! Messenger」※米国版(英語・ソフト)
http://messenger.yahoo.com/
 おなじみ米国版Yahoo!のインスタントメーセージソフトでも、米国内の一般電話へ無料通話ができる。これもNet2Phoneの技術を用いており、Macintoshにも対応している。LAN内使用可能。

日本国内に対応も間近? 「DialPad」
■「Visitalk」(英語・アプレット)
http://www.visitalk.com/
 これも米国内の一般電話に無料で通話できる。一部の機能を「DialPad」や「DeltaThree」などのサービスと共有しているのがユニーク。複数でのビデオチャットやボイスメール機能もある。

■「Wowcall」(韓国語/英語・アプレット)
http://www.wowcall.com/
 「ただTEL」に技術提供しているWeb2Phone社によるインターネット電話サイト。通話対応国はなんと240カ国以上! ここでは韓国内のユーザーのみを受け付けており、その他の国は地域ごとの提携先企業と共同でサービスを行なっている。

■「Telefree」(韓国語/日本語・アプレット)
http://www.telefree.co.jp/
http://www.telefree.co.kr/
 この3月に日本でもサービスを開始する予定の、韓国発のインターネット電話サービス。広告閲覧でポイントを貯めて通話ができるほか、企業向けのVoIPシステムも提供する予定という。

●通話先を選ばない手軽さ ~ PC to Phone・有料タイプ


アプレットとソフトの双方で提供「e-phone Plus」
 さて、話題では無料タイプに押されてつつも、決して引けはとらないのが一般電話に有料で通話ができるタイプだ。通話対象国の制限がほとんどないため、有料という面以外はむしろ使いやすいサービスと言える。
 でも、やっぱり気になるのは通話料金。どのサービスでも、通常の国際電話でかけるよりずっと安価な通話料金を採用している。だが、多くの場合、インターネット電話の通話料金は通話先の国の電話料金をベースにしていることが多い。つまり、相手国の電話料金が高いと、インターネット電話でも通話料金は高くなるわけだ。そのため、日本国内にかけるより、日本から米国にかけるほうが安いといった事態もよくある。各サービスごとに目安となる電話料金を掲載しているので確認してみよう。決済方法はクレジットカードやプリペイドカードなど、サービスごとに異なっている。

■「e-Phone」(日本語・アプレット/ソフト)
http://www.e-phone.ne.jp/
 Webアプレット版の「e-Phone Anywhere」と、ソフト版の「e-Phone Plus」がある。出先のPCから使いたいなら「e-Phone Anywhere」、いつも同じマシンで使うなら「e-Phone Plus」と、使い方に合わせて選べるのが便利。料金は米国へ1分7円、ドイツは1分10円、シンガポールへ1分10円など。VocalTec社の技術を利用。LAN内でも使用できた。

■「PhoneFree.com」(英語・ソフト)
http://phonefree.com/
 世界各国への国際通話に加え、PC to PCの通話やビデオフォンなどにも対応している多彩なサービス。料金は米国へ1分0.02ドル(1月25日現在で約2.3円)、ドイツは1分0.05ドル(約5.8円)、シンガポールは1分0.09ドル(約10.5円)と、かなり低価格になっている。通話する場合、最初に20ドル分のアカウントを購入する必要あり。

■「ICQ」(英語・ソフト)
http://web.icq.com/
 おなじみのIMソフトにもインターネット電話機能がついている。これもNet2Phoneの協力で、最低1分1セントの料金から国際電話ができる。また「Phone to PC」(一般電話からオンラインのICQユーザーに電話がかけられる)の機能はこのサービスだけだ。

多方向への事業展開も話題「Net2Phone」
■「Net2Phone」(英語・ソフト)
http://www.net2phone.com/
 「MSN Messenger」や「ICQ」など、多方面に技術提供するNet2Phoneのサービス。日本進出の声も高まっており、今後に期待したい。世界各国の一般電話への通話が可能だが、残念ながら特集執筆時はリニューアル中で実際に試してみることができなかった。サイト上にはLAN内でも使用可能という記述がある。

■「iConnectHere」(英語・アプレット)
http://www.iconnecthere.com/
 有料のPC to Phone、無料のPC to PCに加えて、ボイスメッセージなども送れるタイプ。通話料金は現在改変中のため、確認できなかった。LAN内でも使用可能。

■「フリートーク」(日本語・ソフト)
http://www.telematrix.co.jp/
 専用インターネット電話機「気にしナイス」とPCを組み合わせて使うインターネット電話サービス。3月から開始する先行実験に併せて、現在参加者を募集中だ。料金は国内長距離が15円/3分、米国は24円/3分など。PC to PCの通話も可能で、1ヵ月2,000円の基本料金がかかる。

●チャット感覚で楽しめる ~ PC to PC タイプ


ここでインターネット電話フレンドが見つかるかも? 「ビットアリーナ」
 音声チャット自体は比較的以前から登場していたので、読者の皆さんにも馴染み深いものが多いのではないだろうか? 以前は音声チャット用アプリケーションとして提供されるものが多かったが、最近Javaアプレットタイプで、Webページ上で使用するものも見かけるようになってきた。種類も豊富で手軽に楽しめるので、使い勝手やデザインなどの好みで選んでみよう。友人を誘って同じソフトをインストールして楽しんだり、ネットワークゲームで出会った対戦相手としゃべるなど、多彩な楽しみ方ができる。

■「Netmeeting」(日本語・ソフト)
http://www.microsoft.com/japan/windows/netmeeting/
 もはや老舗の部類に入るビデオ・オーディオチャットソフト。音声だけでなく動画もリアルタイムで送受信が可能だ。ユニークなのはホワイトボード機能。相手と1つのホワイトボード(ウィンドウ)を共有し、イラストを描いたり文字を付けたりと楽しめる。LAN内でも利用可能。

■「ビットアリーナ」(日本語・ソフト)
http://www.bitarena.com/
 広告表示スペースを持つチャットソフト。会員の一覧や最新の接続会員リストを掲載しているので、チャットフレンドを見つけやすいかも? 広告を見るとポイントが貯まり、2月中旬からは貯まったポイントで懸賞応募も可能に。LAN内でも利用できた。

■「AOLインスタントメッセンジャー」(日本語・ソフト)
http://www.jp.aol.com/
 世界で6,400万人のユーザーがいるインスタント・メッセージソフトでも、音声チャットが楽しめる。特にプラグインなどを必要とせず、トークボタンを押すだけの手軽さが嬉しい。相手が知らない人の場合、警告を発したり断ったりという動作ができ、迷惑防止に役立ちそうだ。LAN内で利用可能で、Mac版もある。

ビギナー向けのナビゲーションもある「FireTalk」
■「RogerWilco」(英語・ソフト)
http://www.resounding.com/
 ネットゲーマーに人気の音声チャットソフト。軽快で操作もシンプル、ゲームと一緒に楽しむのにちょうどいい。「Join」ボタンからRogerWilcoのサイトに飛ぶと、ゲームの種類ごとにたくさんのチャットルームが用意されている。LANで利用でき、Mac用β版も。

■「FireTalk」(英語・ソフト)
http://www.firetalk.com/for_personal/index.html
 PC to PCの音声チャット以外に、ボイスメッセージ送付やIM送信ができる多機能タイプ。広告バナーなどが表示されない有料版の「FireTalk VQ」もあり、こちらは6ヵ月で19.95ドルの費用がかかる。

■「Excite Chat」(英語・アプレット)
http://www.excite.com/communities/chat/voicechat/
 人気のWeb版音声チャット。発言するときはCTRLキーを押しながらしゃべろう。とりあえず試してみたい人は、初心者向けの「Voice Check Room」で慣れてみることをオススメ。LAN内でもOK。

(2001/1/29)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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