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ハイパーシステムは、ユーザーがインターネットに接続している間、メインのブラウザーとは別の小ウインドウに自動的に広告を配信するシステム。1997年から国際特許として出願され、すでにシンガポールや米国、日本などでその一部が成立しているという。インターキューは1999年12月、ハイパーネットからこの出願特許を買い取っていたが、今回、ISP向けの広告配信システムとして「復活」(インターキューの熊谷正寿代表取締役社長)させることにした。30日、日本のISP向けに同特許のライセンスやソフトを無償で開放すると発表。同システムによるISPへの広告収入から一部を手数料として徴収することで、インターキューが事業として展開していく。
板倉氏によると、ハイパーシステムは「結果から見れば、失敗したビジネスモデル」だったが、最近になって類似のビジネスが多く見られるようになってきたことからもわかるように、3つの点で当時とは事情が異なっているという。まず、インターネットユーザーの絶対数が増えたことで、広告主のネット広告に対する認識が高まってきたこと。次に、ISP自身が接続料以外の収入を求めており、市場からの要求が期待できること。そして3点目が冒頭に挙げたように、今回事業を展開するのが板倉氏ではなく、熊谷社長率いるインターキューだということである。板倉氏は、同システムを利用して無料ISP事業を手がけ、1997年12月に倒産したハイパーネットの元社長であり、その経緯を綴った書籍「社長失格」(日経BP社刊)の著者である。
インターキューが今年中にも開発する予定のシステムは、従来の静止画のみの表示から進化し、ブロードバンド環境にも対応。動画を配信できる“テレビ型”の広告ウインドウも表示できるようにする。イメージとしては、テレビのCMが常時流れているようなものだという。また、広告表示用のソフトウェアをJavaベースのものに変更し、ユーザーがソフトをダウンロードする手間もなくす。広告枠の販売は、メディアレップドットコムが担当する。手数料は未定だが、「バナー広告やメール広告以下の収入ではISPに利用してもらえない」(熊谷社長)と見ており、手数料を30%未満に抑える方針だ。また、熊谷社長は、ハイパーシステムが、ポータルサイトやメールと並ぶネット広告の3大メディアにもなり得るとし、1,000万人のユーザー獲得を目標としている。これは、国内のネットユーザーを3,000万人として、ISPの3社に1社がハイパーネットを導入した場合の数字だ。
現在、ISPのサービスは低料金化が進んでおり、接続料だけでは儲からないという図式が定着してきている。一方、広告収入についても、ポータルサイトなど自社サイトに掲載する分しか見込めず、たとえ自社サービスの会員だったとしても、ユーザーが他のサイトを見ている時には広告収入が発生しない。これに対し、ハイパーシステムでは、ユーザーが見ているサイトに関係なく、接続中は常時、広告を配信できる仕組みを提供。ISPの広告収入を増やすことで、結果としてユーザーへ利益が還元されるとしている。ユーザーへの還元がどのような形で行なわれるのかについては各ISPが決定することになるが、例えば、ブロードバンド対応に向けて回線の増強に使われたり、ハイパーネットによる広告配信を許諾したユーザーについて料金を割り引くなどの対応が考えられるという。
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(2001/1/30)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]