【業界動向】

米Juno、無料会員のPCの空き時間を利用した仮想スーパーコンピューター計画

■URL
http://www.juno.com/corp/news/supercomputer.html

 米無料プロバイダー大手のJuno Online Servicesは1日、無料会員のPCの空き時間を利用して分散コンピューター環境を構築し、スーパーコンピューター並の計算能力を提供する計画「Virtual Supercomputer Project」を発表した。この環境を、生物医学研究などのアプリケーションを取り扱う民間の顧客や研究機関に提供していく。

 Junoは総会員数1,420万人を擁する米国大手のプロバイダー。2000年12月にはアクティブ会員が400万人に達しているという。同社の予備調査によると、無料サービスのアクティブ会員が全員で同時に1つの計算問題にあたった場合、世界最速のスーパーコンピューターに匹敵する命令処理能力を有し、「ペタヘルツ」(10億MHz)に迫る有効プロセッサ速度を持つという。ただし、有効プロセッサ速度は処理に当たるPCの数や性能など、さまざまな要因で大幅に低下する可能性もある。

 これを実現する仕組みは、同社の広告配信技術を利用して、まず無料会員のPCに処理用のアプリケーションを配信する。これがオフライン時にスクリーン・セーバーとして働き、PC未使用時に計算処理を行う。会員が再度接続した際に、その計算結果を中央コンピューターに送る。アプリケーションのダウンロードや実行によって、コンピューターの操作や接続速度に影響を与えることはないという。

 Junoはまず、無料会員から参加者を募り、初期の仮想スーパーコンピューター計画を立ち上げる。有料会員の参加は見込んでいないが、プロジェクトに参加できる選択肢を与える。Junoは、ヒトゲノム計画によって最近解読が完了したタンパク質の構造解析や、新薬開発につながる「仮想分子」の探索など、生化学分野での利用を見込んでいる。

 Junoは広告配信により無料サービスを提供しているが、ハイテク企業やドットコム企業の業績不振により、オンライン広告収入は縮小傾向にある。PCの空き時間利用により無料サービスを提供するというビジネスモデルは、広告収入の減少を補完し、新たな収益源を確保できる画期的なビジネスモデルと言える。同様の分散コンピューター処理は、地球外文明探査プロジェクト「SETI@home」や、米RSAの暗号解読コンテストで成功しているが、商業的にも成功するかどうか今後が注目される。

(2001/2/5)

[Reported by hiro@nakajima-gumi.net]


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