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不正商品対策協議会(以下ACA)は9日、知的財産の保護と不正商品の排除を目的に「アジア知的所有権シンポジウム2001」を開催した。第3回目となる今回は、「ITとグローバリゼーションの進展にともない、ますます潜在かつ複雑化することが憂慮される知的財産の侵害に我々はいかに対処するべきか」をテーマに、「21世紀、IT社会における新たなる挑戦」と題して講演やパネルディスカッションを実施した。
BSA ボブ・クルーガー氏
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シンポジウムの中で、米国のビジネスソフトウェアの権利者団体であるBSA(Business Software Alliance)のVice Presidentであるボブ・クルーガー氏は、「IT革命による知的財産への脅威とその影響」と題し、IT時代にふさわしい知的財産保護のあり方についてアメリカの事情を中心にプレゼンテーションを行なった。ボブ氏によると、インターネット上の不正コピーがおこる要素は3つあるという。それは、膨大な人を集めることができるという「市場性」、伝送速度や圧縮技術などインターネットを取り巻くテクノロジーの発達による「アクセスの発達」、簡単にだれでもインターネットを使いこなせる「探知」で、これらが3つがあいまってデジタル時代の知的所有権において「大きな脅威」となっていると指摘した。また、インターネット上の不正コピーの形態も「従来の電子メールからホームページやファイル共有サービス、オークションサイトなどどんどん新しい手法に変わっていっている」と危惧した。こういった現状の対策についてボブ氏は「BSAでは大きな決意を持って取り組んでいるが、いくら厳しい法律を施行できたとしてもユーザーが認識しなければ意味がない」とし、教育および啓蒙活動の必要性を強調した。
警察庁 粟野友介氏
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また、このプレゼンテーションを受けて、「どのようにすればIT時代における知的財産権の保護を実行していけるか」についてパネルディスカッションも行なわれた。出演者は、ボブ・クルーガー氏のほか、警察庁生活環境課生活経済対策室長の粟野友介氏、ニッポン放送パーソナリティの石川みゆき氏、ACA監事の前田哲男氏。パネルディスカッションの中で粟野室長は、日本におけるネットワークを利用した犯罪の現状を報告。それによると、コンピューター・ネットワークを利用した知的財産権の侵害は、平成12年には36件で、主に海賊版ソフト販売事件だという。また、ネットワーク犯罪の特徴は「匿名性」「オープン・分散型」「無痕跡性」「ネット特有の人間関係」の4つがあるとし、犯罪関与者の特徴としては暴力団などの犯罪組織だけでなく、罪の意識に希薄な普通の人が関与しており、特に未成年者による犯罪が起こっていることが問題だと指摘した。そして、知的財産権の侵害は「権利者への犯罪ということだけでなく社会の想像活動が停滞してしまうため社会全体が被害者となる」と述べ、警察としてもネットワーク犯罪に対する捜査能力を強化するとともに、諸外国との捜査協力の強化を図っていくとした。また、前田氏はネットワーク上の権利保護の為に不可欠な要素は、「刑事事件としての摘発の充実」、「権利者の自助努力」「広報啓発活動の充実」などを揚げ、「現在は十分には知的財産権が保護されていない状況だ。強い危機感を持って知的財産権を保護するシステムが必要」と述べた。
このほか、パネルディスカッションでは、犯罪事象におけるISPの協力という点に関しても議論が行なわれた。米国では、著作権法「Digital Millennium Copyright Act(DMCA)」によりISPの責任が明示されているが、同様の法律が日本でも早ければ今国会で立法化される。前田氏は「通知・削除」規定ではDMCAと多少異なるものになりそうだが、「実効性のある制度を作っていく必要性がある」とした。
(2001/2/9)
[Reported by moriyama@impress.co.jp]