|
このように日本のビジネス構造に大きな影響を与えたコンビニだが、ここ数年の本格的なネットワーク社会の到来とともに、さらに業態を進化させようとしている。現在、コンビニのEC戦略の中で、最も利用率の高いサービスの1つである代金支払いや収納代行などは、コンビニの持つ既存インフラを利用して提供できるサービスだ。24時間好きな時に荷物が受け取れ、安心して代金を支払えるこのシステムは、カード決済に抵抗がある我が国におけるEコマース普及にかなりの貢献をしているといっていい。今回の特集では、日本のEコマースと切っては切れない関係となっている「次世代コンビニ」のネットビジネスを紹介したい。
●昨年次々とECサイトを立ち上げた大手コンビニ
昨年は、セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマートの大手3社が、あいついでEC専門のサイトを立ち上げた。各社に共通している方向性は、インターネット上のサイトと現実の店舗を連動させるということだ。もちろん事業展開や提携先などはそれぞれ違うが、各社とも既存のコンビニ店を、ECの顧客にモノやサービスを提供するプラットホームとして捉えている点は、各社共通しているといっていい。
ECというと、ウェブサイト上で商品を選んでクレジットカードで決済し、宅配便で配送するというビジネスモデルが一般的だ。しかし、ネット上でクレジットナンバーを入力することに抵抗を感じる日本人はまだ少なくないし、宅配便にはコストが割高になるというデメリットがある。
一方コンビニチェーンの場合、従来のクレジットカード・宅配便の組み合わせに加えて、ネット経由で購入した商品やチケットなどを自宅や職場の近くにあるコンビニで代金と引き換えに手に入れることも可能だ。これによって消費者は、ネット検索の利便性や即時性と、コンビニで手渡しするという安心感を同時に享受できる。すでに巨大な物流・店舗をもつコンビニならではのビジネスモデルだといえる。
もうひとつ、大手3社がいずれも、企業のオフィシャルサイトを拡張するかたちではなう、それとは別にEC専門サイトを立ち上げていることにも注目したい。つまり、商品情報や企業情報の発信はオフィシャルサイトに集約し、ECサイトは純粋にショッピングやサービスを楽しむ場として設定しているわけだ。2つの用途は厳密に区別されている。am/pmなど追随する準大手チェーンにとっても、これは1種のスタンダードモデルになるかもしれない。以下、おもなコンビニチェーンのECサイトを紹介しよう。
●各社コンビニのECサイトにおけるサービスの違いPart1「付加サービス」
業界最大手であるセブン-イレブン・ジャパンによるECサイト。圧倒的な品物・サービスの豊富さ、ビジネスの広がりを誇る。
用意されているのは、CDやDVDの予約などができる「音楽」、パソコンなどが購入できる「デジタルライフ」、旅行チケットやホテルなどを予約・購入ができる「旅行&スキー」、オンライン講座などが受けられる「学びライフ」、車関連サービスの「カーライフ」など、全10分野。ショッピングなどのサービスを利用するには、ウェブサイト上から「メンバーズセブン」に会員登録する。入会金や年会費などは不要登録すると、注文履歴や商品の配送状況が確認できるうえ、希望すればセブンドリームの最新情報など掲載されたメールマガジンも読める。今後は、会員限定のプレゼントやキャンペーン、懸賞などの予定も。
サイトで予約・購入した商品の支払い方法は、
1:セブン-イレブンで前払いして後日指定のセブン-イレブンで受け取る
2:指定したセブン-イレブンにて商品と引き換え払い
3:セブン-イレブンにて前払い後に宅配
4:注文時にクレジットカードで支払って宅配
5:宅配でご注文商品と引換え時に代引
6:ネットショッピング専用のプリペイド決済手段である@QUOで支払い
という6種類が用意されている。セブン-イレブンでの支払い、商品の受け取りについては手数料は無料。宅配を利用した場合には送料380円がかかる。
■@LAWSON
http://www.at-lawson.com/
コンビニ業界で唯一、全国47都道府県に出店しているローソンのECサイト。お得な掘り出し物商品などが手に入る「SPECIAL」、コンサートなどのチケット予約情報が見られる「TICKET」、コスメなど女性むけのグッズを扱う「GIRLS」など、6分野のサービスが用意されており、インターネットで気楽にショッピングが楽しめる。
サービスを利用するには、ウェブサイト上からメンバーサービスの「アット・エルメンバー」に入会する。また希望すると、最新情報を掲載したメールマガジンが配信される。
チケット販売については、これとは別に「ローソンチケット・ドットコム」(http://www.lawsonticket.com/)という専用サイトも開設されており、ここではローソンチケットの予約・販売情報を検索・閲覧できる。オンライン上での予約・販売も近日オープンする予定。「@LAWSON」との連動も期待できそうだ。
■ファミマ・ドット・コム
http://www.famima.com/
ファミリーマートが運営するECリテイルサイト。他社のECサイトはすべて既存のコンビニ事業とは別事業として運営されているのに対して、ここでは世界で初めて、加盟店が1店舗ずつ独自の仮想店舗を所有する「ECフランチャイズシステム」を採用。つまり、インターネットを介しながら加盟店が販売の主体となっている点が特徴だ。
特集記事などが多いマガジンライクなつくりで、「子育て応援隊」や「ダイエット応援隊」などのオンラインコラムの充実ぶりでは群を抜いている。
用意されている分野は「フード」「ファッション」「住まいと生活」「PC・AV・家電」「ギフト」「ブック」など17ジャンル。シーズン性が高く話題性のある品揃えを目指し、商品は1か月単位で入れかえられる。支払方法は、1:クレジット払い、2:店頭前払い、3:店頭後払い、の3種類。受け取り方法は1:宅配便による希望場所への配送、2:店頭受け取りの2種類。ショッピングのほかに、オンラインでゴルフ場を調べてその場で予約ができるユニークなサービスもある。
サービスを利用するには、ウェブサイト上から「ファミマ・クラブ」に登録する。入会金、会費は無料。会員には、ファミマ・ドット・コム商品の購入金額に応じたポイント制度があり、ポイントがたまると全国のファミリーマートで使える割引券がもらえる。今後は、アンケート回答に対するポイント付与など特典も検討中。会員用メールマガジンや限定プレゼント企画もある。
■site am/pm
http://www.ampm.co.jp/
デリバリーサービスの「デリス便」や、ベビーシッターの派遣、ホームセキュリティの取り次ぎ、ハウスクリーニングの取り次ぎ他の「ライフサポートサービス」など、斬新なサービスを積極的に展開しているam/pmジャパンのウェブサイト。
上記3社とは違ってここはEC専用サイトではなく、本格的なオンラインショッピングもまだ行われていないが、ユニークなのはインターネットを使って「デリス便」を利用できる試験的なサービスがあること。これはウェブサイト上でユーザー登録(無料)をし、画面上に表示されるカタログから希望する商品を選んでクリックすると、入力した住所まで商品を代金引換でデリバリーしてくれるというもの。利用料は1回200円で、商品は1個から購入できる。現在のところ残念ながら東京都千代田区でしか利用できないが、これからエリアが広がれば楽しみなサービスになりそうだ。
●各社コンビニのECサイトにおけるサービスの違いPart2「書籍販売」
ネットショッピングのなかでもっとも人気があり、競争も激しいのがオンライン書店。昨年からは、この人気分野にいくつかのコンビニチェーンが参入している。
いわゆる再販制度によって値引きができない書籍販売では、価格競争で勝負できるのは配送費の部分のみ。とはいえ、たとえば大手書店と宅配業者が組んでいる場合には、配送費のディスカウントにも限界がある。一方コンビニチェーンは、すでにある物流ルート(たとえば毎日大量に搬入される雑誌など)を利用することで、配送コストを浮かすことができる。さらに24時間365日開いているというメリットも大きい。
セブン-イレブン系の「セブンドリーム・ドットコム」は、ソフトバンク傘下のイー・ショッピング・ブックス(http://www.esbooks.co.jp)と提携。昨年8月1日から、書籍販売サイトの共同運営を始めている。このサービスでは、インターネットで注文した書籍をセブン-イレブンの店舗で受け取ることができるうえ、手数料も不用。取り扱い書籍数も50万冊以上という膨大さだ。今後は、店頭のマルチメディア端末を使ってセブン-イレブンから書籍の注文を行なったり、携帯電話から注文するというサービスも予定されているという。ちなみにセブンドリームのサイトでは、その日に発売される雑誌の名前と表紙写真をチェックできるページもある(http://daily-info.topica.ne.jp/)。地味なコンテンツだが他社にはないサービスで、雑誌好きには重宝するだろう。
一方ファミリーマート系の「ファミマ・ドット・コム」も、日本出版販売と組んで、昨年12月21日より書籍の取り扱いを開始している。取り扱い書籍数は45万冊と、セブンドリームにも劣らない規模だ。受け渡し方法は、ファミリーマート店頭での手渡しか宅配便。セブンドリームと同じく、店頭受け渡しの場合は手数料は必要ない。電子メールで出荷のお知らせを案内するなど、きめこまかい顧客サービスが特徴だ。
●各社コンビニのECサイトにおけるサービスの違いPart3「携帯向けサービス」
チケット予約や株取引などの分野では、EC端末としてパソコンなみ(あるいはそれ以上)に有望視されている携帯電話。コンビニチェーンも、軒並み携帯電話を対象にしたインターネットサービスを展開している。
セブンドリームが展開する「ぷちドリーム・ドットコム」(http://phone.7dream.com)はiモード、EZウェブ、J-skyに対応しており、携帯電話からアクセスして、どこでもショッピングを楽しめる。また、最新のオススメCD・DVDやチャート情報、新譜紹介などのメニューも用意されており、気に入ったCDをその場で注文することも可能。商品の受け取りと代金の支払いは、すべてセブン-イレブンで行なう。旅行ツアーや教習所の申し込みもできる。
ファミリーマートはこれに対抗して、今年2月5日よりiモード向けのサービス「ファミマi」を開始した。受け渡しや支払いなど、基本的な仕組みは「ぷちドリーム」と同じだが、ファミリーマート店頭で無料配布しているカタログ雑誌「ふぁみコレ」に掲載されている商品を中心に約1万点が、携帯電話から注文できる。注目はチケットぴあが参加していることで、音楽・スポーツなど約2万公演のチケットを取り扱う予定だという。携帯電話からネットにアクセスして予約ができる利便性は、決して小さくないはずだ。
いっぽうローソンは、松下電器、三菱商事、NTTドコモとの4社で新会社「アイ・コンビニエンス」を設立。iモード上のコンビニエンスストアを目指して、今年3月にiモードむけサービスの開始を予定している。また今夏には、iモード上に表示された各種コンテンツをローソン店頭でプリントするサービスも提供する予定だ。
またam/pmジャパンは、今年1月15日から、1,240店のチェーン店すべてをiモードで検索できるサービスを行なっている(http://ap.ampm.co.jp/)。検索方法はエリア別、住所別、店舗名別の3種類。それぞれについて住所、営業時間、たばこ・酒・ATMの取り扱いなどもチェックできる。携帯電話経由のECはまだだが、このような店舗検索サービスは、業界初の試みになる。
●各社コンビニのECサイトにおけるサービスの違いPart4「マルチメディア端末」
いわゆるマルチメディア端末は、「情報とサービスのプラットホーム」をねらうコンビニチェーンにとって、重要な戦略的装置だといえるだろう。コンビニの店頭に置かれたマルチメディア端末を使って、ユーザーはさまざまな商品を取り寄せたり、チケットを予約することができる。また最近では、音楽などのコンテンツをMDにダウンロードしたり、フォトデータをプリントしたりと、高速回線のメリットをいかした次世代サービスも登場してきている。今後、ブルートゥースなどの無線インターフェースが普及すれば、各自の携帯電話と連動したプリペイドサービスなども出てくるはずだ。
セブン-イレブンが昨年11月から店舗に導入している「セブンナビ」は、まさにそのようなマルチメディア端末の代表だいっていいだろう。衛星を通じて配信される大容量データといい、顧客からの注文を高速かつ安全に処理できる専用線といい、従来の店頭端末とをはるかに超えるスペックを持っている。サービス面では、ダウンロードした音楽データをその場でMD録音できるという「ミュージックダウンロード」というサービスが目を引く。セブン-イレブンはソニー・ミュージックエンタテインメントとエイベックスの2社と提携し、昨年12月からはすでにダウンロードサービスを展開している。このほかにも、デジカメで撮影した画像をその場で高画質プリントできる「フォトプリント」、ホテル・旅館の宿泊予約や国内航空券などが充実した「旅行&レジャー」、すでにセブンドリーム・ドットコムで稼動している「ショッピング」や「CD&DVD」など、多様なサービスが用意されている。
CDやゲームなどの購入のほかに、新聞の購読、衛星放送への加入、引っ越しの見積から学校案内の請求まで各種の申し込みに強いのが、ローソンの店頭に設置されている「Loppi」。変わったところでは、自分で採取した血液や尿などを郵送して検査してもらう郵便検診に申し込むこともできる。
コンビニチェーンのなかには、24時間サービスの便利さをいかして、金融機関と提携する動きも見られる。東京海上火災保険と提携しているファミリーマートは、昨年12月より多目的情報端末「Famiポート」を店頭に設置しているが、ここでは24時間いつでも保険の申し込みや保険料の支払いが行える。同社のECサイトである「ファミマ・ドット・コム」では、保険の販売に加えて見積サービスも実施。ネットで比較検討した保険をファミリーマートの店頭で購入するというような連係プレーを狙っているようだ。もちろんこれ以外にチケット販売、デジタルコンテンツのダウンロードサービスなども用意されている。
●各社コンビニのECサイトにおけるサービスの違いPart4「その他」
このほかに、今後注目されるコンビニのサービス(機能)としては、金融・決済をあげる必要がある。昨年、セブン-イレブンが決済専門のネット銀行を設立するという話題が盛りあがったのも、ネットショッピングやサービスの分野ではコンビニそのものが決済機能をもっていたほうが都合がよいケースが少なくないからだ。このような消費者のニーズは、今後ますます強くなるはずだ。
またam/pmの24時間ATM「さくら銀行 アット バンク@BΛNK」も、同じくコンビニの金融化の要望に応える試みといえそうだ。 ちなみにセブン-イレブンは昨年11月1日から、インターネットやiモードなどを通じて買った商品の代金を、ネットショップの店主に代わって収納するサービスを開始している。ネットショップの店主がこのサービスを利用すると、購入者は(公共料金と同じように)セブンイレブンのレジでその代金を払い込むことができるわけだ。いわばコンビニがクレジット会社的な役割を果たしていることになる。すでにビックカメラや楽天市場などが、このサービスを利用している。
また、高齢化が急速に進むこれからは、コンビニを地域ケアの拠点として利用することも想定されそうだ。具体的には、PDAなどを使ってケアワーカーなどと連係し、地域のお年寄りに食事を宅配したり、買物を代行するサービスなどが考えられる。実際に、am/pmが積極的に行なっているデリバリーやライフサポートサービスなどは、このような介護ビジネスに発展しうる可能性をもっているはずだ。
最後に、各社コンビニにECサービスにおける人気コンテンツ・今後の戦略等ついてのお話を伺った。各社独自の方向性を掲げていて大変興味深い。
●各社コンビニに聞くECビジネスの現状と今後の戦略
|
昨年7月よりECサイトを本格的にオープンさせたセブンドリーム・ドットコム。現在の会員数は約15万人。利用率の高いサービスはなんといっても「支払い代行・受け取り」。実際セブン・ドリームドットコムでは顧客の8割以上が店舗での支払い/受け取りを選択するという。支払い代行・受け取りに次いで人気のあるサービスがイーショッピングブックスとの提携によるオンライン書籍販売サービス。次いで音楽CD販売や占いなど。また意外に人気が高いのが、時計など限定モデル品の販売だ。「そこでしか手に入らない」といった限定商品は人気が高く、売れ行きも好調だという。とはいえまだまだ日本でインターネットショッピングを利用する人は一握り。EC事業は時間をかけて育てていく商売だと語るのはセブン-イレブン・ジャパン広報室の宮地信幸氏
「インターネットがこれだけ普及していると言われていても、現在のネットユーザーでは1年間で一人あたり1万円くらいしかネットショッピングに使わないと言われています。インフラとかプラットフォームを整備しないとECも発展していかない。どうしてもECサイトだけでは限界がある」
~現状のEビジネスでの限界はマルチメディア端末で補う~
現段階での日本のインフラでのEビジネスには限界があると考えるセブンドリーム・ドットコムでは、ECの売上の過半数はマルチメディア端末「セブンナビ」でと考えている。 「セブンナビではEショッピング等に興味はあるけどあと一歩が踏み込めない人、自宅でPCが埃をかぶっている人など、インターネットユーザー以外の人も取り込めると考えています。またインターネットサイトではできないサービスを実現していこうと思っています。音楽のダウンロードサービスなどは業界最高速で4分の曲が1分で落とせます。これなどはダイアルアップネットユーザーでは不可能なことです。また、通信費を気にせずできるフォトプリントサービスなども端末ならではです」(宮地氏)
「セブンナビ」は昨年の11月27日に都内導入を開始し、現在都内約1,200店舗に導入完了している。現在人気のサービスは「フォトプリント」、「Musicダウンロード」、ホテルの当日予約」の順。今後はチケット予約や書籍販売、着メロダウンロードなどのサービスを拡大していく。
セブンナビ以外の今後の展開としては、セブンイレブンのフリーペーパー「バーチャス」など他媒体と連動させた商品の品揃えの拡大、Musicダウンロードをする時にそのアーティストのチケットやブロマイド・グッズなどを併せてして購入できるようなコンテンツ間の連動に力を入れていく構えだ。
■いち早く導入した店頭端末「Loppi」で得たスキルを活かしたビジネス展開~ローソン
|
「ローソンではHMV等、多くの企業と提携し、商品の受け取りサービスを行なっています。ですから今更ローソンで商品の品揃えをする必要はないと考えています。最近ではユニクロなどの専門店が好調で、総合スーパーが苦戦を強いられている点を見ても、@LAWSONは総合ポータル的にはせず、専門店的な位置付けでいこうと考えています」(ローソン広報 主査 藤井孝司氏)
とはいえ、現状一番のECビジネスの売上は基本的には代金収納代行などの手数料。ネット独自の商売に進出するというよりは、プラットフォームを提供する方向でのサービスが軸になっている。
「コンビニがなぜECビジネスを行なうかという最終的な目的はお店の利益を上げることです。当然、お店に客を集客する手段としてこういったサービスを展開をしているわけで、すべてのサービスは顧客がお店に足を運ぶ流れになっています。そうじゃなければネットだけで完結すればいいわけですしね」(藤井氏)
~この夏にはLoppiを利用したデジタル情報のアウトプットサービスを開始~
ローソンで考えているECビジネスの今後の展開はモバイルだ。昨年10月にローソンはNTTドコモらとiモードとローソン店舗を活用したECサービス会社、アイ・コンビニエンスを設立している。この春にはLoppiで行なわれているようなサービスをiモードで可能にするほか、夏にはデジタル情報をLoppiでアウトプットするというサービスを開始する。これは例えば「会議資料を出張先でiモードに送ってもらい、近くのローソンのロッピーでプリントアウトする」などといったサービスになる。また、家庭やオフィスではPCから外出先ではiモードからと、24時間どんなシーンでもローソンにアクセスすることが可能なサービス展開する予定だ。
「現在、Loppiは全国のローソン7,600店舗に置かれているから7,600台ですよね。これには限界があります。けれどもiモードは現在1,900万人のユーザーと言われている。そしてこれからもっとユーザー数が伸びる。無限大に可能性は広がるわけです。また、携帯の機能はどんどん進化していますから、それに合ったコンテンツを提供していくというのはある意味やりやすいサービスです」(藤井氏)
ローソンでは@LAWSONの売上目標を年商2億と設定しているのに対し、モバイルの売上目標は2005年までには930億と設定している。この数字の違いからも、モバイルに賭ける意気込みが伺われる。バーチャルな世界の出口としてローソンを使うことでほかの企業にできないサービスを提供するメリットがあると自信を持って語るローソンの今後の展開に期待したい。
■ECフランチャイズを展開し、地域密着型ビジネスを狙う~ファミマ・ドット・コム
ファミマ・ドット・コム 井上史郎代表取締役社長 |
ファミマ・ドット・コムではECサービスに関してはターゲット層を20代の団塊ジュニアに絞っているため、EC上で売られているグッズなども付け爪や携帯ストラップ等、若者向けの商品が多い。浜崎あゆみのストラップなどは1カ月で約6,000アイテムが売れたそうだ。ブランドメーカーと提携した限定商品の販売など、「タレント」色と「ブランド」色を打ち出していく方針だ。人気のサービスはチケット予約、オンライン書籍、レトルト食品、フィギュアなど。決済は80%が店頭決済。商品の受け取りも60%が店頭で残りが宅配を利用している。気になる売上だが、チケット売上などは含まない自社商品の売上だけで月3,000万円。立ち上げ早々としては順調な滑り出しと言えそうだ。
~シニア層の取り込みのためにも、地域密着型ビジネスの展開に力を注ぐ~
ファミマ・ドット・コムの一番の特徴はなんといってもECフランチャイズだろう。ECフランチャイズとは各加盟店が既存のCVSフォーマットの枠を越えた商品・サービスを提供することが可能となるインターネットショッピングサイトを立ち上げるシステム。国内で他社がECサイトでの売上を一元管理する中、各店舗ごとに売上を計上し、独自のECサイトを持たせるECフランチャイズの戦略について、ファミマ・ドット・コムの井上史郎代表取締役社長はこう語る。
「立ち上げたばかりですし、まだまだこれからですが、ECフランチャイズをどれだけ浸透させていくかが我々の課題だと思っています。現在ECサービスのターゲットは若者層ですが、将来的にはもう一世代別に設定したい。いわいるシニア層を獲得したいんです。それには地域密着型のビジネスをどれだけ展開できるかがポイントになるのではと考えています。現在20店舗のECサイトを実験的に運営していますが、店長のオススメ商品を紹介したり、掲示板を作るなどにとどまっています。今後はこんな企画をやってみたいと店長からの企画を本社で検討し、企画が通れば商品を創るといったことも展開していきたい。まだまだそこまで熱心な店長は居ませんがね(笑)」
ファミマ・ドット・コムの今後のビジネス展開は、前述のECフランチャイズの浸透の他に、マルチメディア情報端末の充実やアイモードなどモバイル系サービスなど。今後はコンビニでできる収納代行や公共料金、免許の申し込みなどのサービスをすべて端末で可能にする予定だ。
●総論
また、旅行・ホテルチケット予約などについては、ネット上だと簡単に検索ができるうえディスカウントも期待でき、大きな人気を呼んでいる。これからはネットに親和性が高い若者層だけでなく中高年層も巻き込むかたちで、大きなビジネス市場になりそうだ。限定商品とは、「このサイトでしか買えない」という訴求性がミソ。時計やフィギアなどの定番モノからご当地ラーメン、ミネラルウォーターまで、これまでヒットした商品は多種多様だ。いわゆるレアものが好きでオンラインショッピングに抵抗感のない若者がコアマーケットで、商品によってはサイト運営側が驚くほど大きなニーズがあるという。書籍については、昨年末のアマゾンジャパンの登場など、オンライン全体で市場が活性化していることが大きいようだ。いずれにせよ、コンビニのECサービスは始まったばかりだ。モバイルやマルチメディア端末サービスの拡大もかなり期待できる。今後コンビニとECの関係が強化されていくことだけは間違いないだろう。
(2001/2/19)
[Reported by tanimoto@impress.co.jp/takayuki otani]