【特集】

航空チケットはネットでゲット~航空各社のネット戦略

 オンラインショッピングの普及とともに、ネットで購入できる商品が急増している。特に航空券やコンサートチケットなど非製品といわれるものの伸びがめざましい。航空券は実物を動かさない、いわゆる「チケットレス」の形で流通できることから、ネット販売に合った商品といわれている。個人市場に限ってみれば、既にネット上での国内航空券販売シェアは前年度比200%以上の大幅な伸びとなっている。この流れに乗るため、航空各社は軒並みWebコンテンツを充実させ、固定客の獲得に必死だ。

今回の特集では、おもな航空会社のネットビジネスを紹介するとともに、ネットで航空券を購入できるサイトを集めてみた。現在、国内線の航空運賃は、航空各社が次々と新製品を生み出しているため、目まぐるしく変化している。正確に把握して、お得なチケットを購入するのは旅慣れた人でさえ簡単ではなく、まさに「知っている人だけが得をする時代」に突入している。ぜひ、インターネットを活用し、ビジネスやプライベートでに役立ててみてはどうだろう。

●OnetoOneコミュニケーションサイトを目指す~全日本空輸(ANA)


■全日本空輸(ANA)
http://www.ana.co.jp/

 多種多様なサービスが光るANAのサイト。航空券の予約・決済には「ANAマイレージクラブ」への会員登録が必要(入会金や年会費などは不要)。会員数は620万人。会員のみのインターネット専用サービスとしては、ANAおよびエアーニッポンの国内線・国際線の特典無料航空券の空席照会・予約ができるほか、搭乗後のマイレージ登録もできる。ちなみに、ANAによると、ネットによる国内線個人予約の割合は全体の10%で前年度比200~250%の成長率だという。

 ANAサイトの特徴はOnetoOne機能が充実している点だ。具体的には、住所や搭乗区間・回数など会員の属性に応じて情報提供を行なっている。また、不定期ではあるがメール配信も行なっている。このほか、航空券の決済手段が充実している点も見逃せない。決済手段は「クレジットカード決済サービス」「キャッシュチケットレスサービス」「コンビニ支払いサービス」「郵貯即日決済サービス」「インターネットデビットサービス」「銀行振込サービス」「テレホンバンキングサービス」の7つ。

 さらに、サブサイトも必見だ。客室乗務員の観光地ガイドなどを掲載している女性向け旅行情報サイト「ANALATTE」や全日空総合旅行サイト「ATOUR」、マイルが貯まるショッピングモール「ASTYLE」など、ラインナップも充実している。

■担当者の声

 「ネットというツールを利用することのメリットは、顧客と直接コミュニケーションを取れる機会が増え、ニーズにあったサービスを提供できるようになったことが挙げられます。また顧客の声がインターネットを通じて届くので、ネット上でのサービスだけでなくリアルの部分でのサービスにも反映できる点も見逃せません。今後も、動きの速いネット世界の流れにあったニーズを次々と立ち上げていくとともに、ニーズをいち早くキャッチして新サービスを生み出し実現していきたいと考えています」(販売本部販売システム部eマーケティング室・主任の岡崎央氏)

■ANAのサイトで提供している主なサービス

(1)国内線
 国内線の予約・決済、運賃照会や空席案内、時刻表などを提供。航空券の予約と同時にホテル・レンタカーの予約ができる「ワン・モア サービス」の予約・照会もできる。

(2)国際線
 国際線の予約・決済、運賃案内や空席案内、時刻表などを提供。路線図が見られる「ANAネットワークマップ」やオンラインによる海外ホテル・レンタカー予約もできる。

(3)その他コンテンツ
 全日空・エアーニッポン便が就航している空港(国内・海外)のターミナルの案内図が見られる「空港案内」や発着状況がわかる「国内線発着案内」「国際線発着案内」などのフライト情報を提供。そのほか、読売新聞社の提供による「ビジネスニュース」やインプレスの提供による「できるANASKYWEB」、スクリーンセーバーや壁紙などの「インターネットサービス」のほか、天気や地図などの「トラベル情報」なども。

●旅とくらしのポータルサイトをめざす~日本航空(JAL)


■日本航空(JAL)
http://www.jal.co.jp/

 800万人という巨大な会員組織をバックに事業展開をするJALのサイト。航空券の予約・決済には「JALマイレージクラブ」への会員登録が必要(入会金や年会費などは不要)。会員のみのインターネット専用サービスとして、貯めたマイルで国内線の往復特典航空券を予約できる「特典航空券予約」や、JALグループの航空券やツアー代金の支払いなどに利用できる「JAL利用クーポン特典」への引き換えがオンラインで申し込めるサービスを提供している。また、マイルの貯まる提携エアラインの情報が表示されたり、レストランやショップなどJALのマイルパートナーを目的別に検索できる「マイレージワールド」も便利だ。JALによると、ネットによる国内線個人予約は10%で前年度比250%の成長率。ただ、この数値はeビジネスとして本事業を考えた場合、まだ少ないため、増やす努力が必要だという。

 JALの特徴は、インターネットを利用して予約すると最大で29%割引となるインターネット運賃「e割」を提供している点だ。お得に旅したい人はぜひ利用してみるといいだろう。なお、携帯電話メールでも利用可能。

 このほか、「旅」と「くらし」をテーマとしたコンテンツの充実ぶりも目立つ。例えば国内外で役立つ旅の便利帳として「JALトラベルインフォ」や国内外のツアー・ホテル・ショッピング情報を掲載した「JALスクエア」などがある。「JALトラベルインフォ」では、国内外の都市や空港の天気・気温を案内する「天気情報」、最新のレートを教えてくれる「為替情報」、現地の慣習や飲料水事情を掲載している「現地情報」などを提供している。なお、「JALスクエア」では、キャビンアテンダントオリジナル企画商品や世界の食材などのオンライン購入も可能だ。

■担当者から

 「ネットをツールとして使うことのメリットは、マイレージバンク会員に直接サービスができるようになった点が大きいです。我々は運送業であるため、今まではずっとマスを相手に事業を行なってきましたが、インターネットというツールを手に入れたことで、個人個人の客に対応することが理論上可能になりました。今後もチケット販売を重視してサイトを運営していく姿勢は変わりませんが、ただ航空券を売っているだけではお客様にサイトを利用していただけないので、楽しめるコンテンツを増やしていきたいですね。生活の中でマイルポイントを貯めて、旅にいけるというコンセプトのもと『旅とくらしのポータルサイト』を目指していきたいです」(商品開発部eビジネス推進チーム主任 小野陽弘氏)

■JALのサイトで提供している主なサービス

(1)国内線
 国内線の予約・決済、運賃照会や空席案内、時刻表などを提供。航空券の予約と同時にホテル・レンタカーの予約ができる「フライトプラス」の予約も可能。このほか機内食や映画、音楽プログラムの予定がわかる「国内線機内サービス」も。なお、同ページでは機内映画のリクエストを受付中で1位の映画を機内で上映するとのこと。

(2)国際線
 国際線の予約・決済、運賃案内や空席案内、時刻表などを提供。出発当日から8ヶ月前までのスケジュールと空席状況を案内する「スケジュール案内」や正規割引運賃「JAL悟空」の運賃がオンラインで検索できる「JAL悟空運賃案内」なども。国内線と同じく機内食や映画、音楽プログラムの予定がわかる「国際線機内サービス」では、機内映画のリクエストを受付中で1位の映画を機内で上映する。

(3)その他コンテンツ
 北海道・関西・中四国・九州・山口の「地域発情報」やJALリゾッチャのホームページやキャンペーンサイトを集めた「JALエンタテインメント」などを提供。

●操作性の簡略化を目指す~日本エアシステム(JAS)


■日本エアシステム(JAS)
http://www.jas.co.jp/

 航空券の予約・決済には「JASマイレッジサービス」への会員登録が必要(入会金や年会費などは不要)。会員数は218万人。JASによるとネットでの航空券の予約は全体の約8%、今後は倍増を狙っていくという。

 JASの特徴は、インターネット・携帯電話(J-SKY、iモード、EZweb)・ビジネス旅客向け簡易予約システム「Porte」で予約すると、最大で大人普通運賃が約24~29%割引となる「ネットきっぷ」を発売しているほか、電子メールにより航空券の予約も受付けている点だ。

 このほか、関連会社JASウイングのパッケージツアーの紹介やエンターテイメントページ「リラジャス」などのエンタテインメント系コンテンツも充実している。ちなみに「リラジャス」には、JASの職種に例えると何タイプかがわかる占いやスクリーンセーバー、全国各地のニュースなどが掲載されている。また、キャビンアテンダントのホームページや航空機ギャラリーなども提供している。

■担当者から

 「ネットをツールとして使うことのメリットはいつでもどこでもという顧客のニーズに対応できることが挙げられます。また、タイムリーな情報を提供できるほか、顧客との双方向対応も可能になるといったメリットがあります。今後はクレジットカードだけでなく新しい決済手段を開発していくほか、操作性の簡略化も目指していきたい」(広報室 宮崎純氏)

■JASのサイトで提供している主なサービス

(1)国内線
 国内線の予約・決済、運賃照会や空席案内、時刻表などを提供。

(2)国際線
 運賃案内や空席案内、時刻表などを提供。ソウルや香港の観光情報を掲載した「エリアガイド」や機内サービスの紹介なども。

(3)その他コンテンツ
 空港へのアクセス方法などを掲載した「空港情報」やオンラインショッピング、子供航空教室などの「エンターテインメント」、パッケージツアーを紹介した「ツアーインフォメーション」など。

●消費者のニーズに応えられる?~3社共同Webサイト「国内線.com」


 各航空会社は、顧客満足度を事業運営全体の中心に据えるカスタマー・リレーションシップ・ポリシーを打ち出している。新たな購入チャネルを提供するインターネットは、従来構築されていなかった「個人市場」を形成するなど、今後のビジネスの鍵となり得ることは間違いない。既に各社は、顧客データを収集、分析し、そこから得られた情報をもとに、顧客1人1人のニーズに合わせたさまざまなマーケティング・プログラムやサービスを生み出している。さらに航空会社がネットビジネスを発展させるには、販売システムの増強と、いかに速い時流を持つネットの流れに乗るかが1つのキーポイントとなりそうだ。

 なお、全日本空輸、日本エアシステム、日本航空の3社は共同で国内航空券の販売サイト「国内線.com」を開始する。当初は4月上旬開設予定だったが、システムの調整に時間がかかっているため、延期となっている。サイトでは、運航スケジュールの確認や空席照会、予約から決済まで一貫して処理できる見込みだ。なお、我々が最も気になる運賃だが、当分は3社ほぼ一律になりそうだ。果たして共同サイトがどこまで消費者のニーズに応えられるのか、その成り行きが注目される。

●航空会社を比較して購入したい


 特に決まった航空会社を持たない人は、航空運賃の比較ができるサイトを訪れてみてはどうだろう。わざわざ各航空会社のサイトを行脚せずとも、運賃や空席照会ができる。ぜひ活用してお得に旅をしてみては?

■一発比較!国内航空運賃
http://www.scenes.co.jp/
 ANA、JAL、JASおよび関連航空会社5社、エアー・ドゥ、スカイマークエアラインズの計10社の各種運賃表を一覧で表示しているサイト。検索した日に購入可能な運賃が一発で比較できる、さらにその便の空席状況・予約状況もボタン一つで検索可能だ。

■国内線いっぱつ空席照会
http://www.ops.dti.ne.jp/~sin/airline/
 搭乗日と路線区間を指定すればANA、JAL、JASの各航空会社ごとの空席状況や航空運賃をまとめて調べられる。日本ビジネスホテル予約サービスのホテル検索もあわせて利用できるのが便利だ。

■Japan Air Search
http://plaza24.mbn.or.jp/~tamtam/ticket/
 ANA、JAL、JAS、スカイマークエアラインズ、エアードウーの空席状況や運賃がを同一画面で同時照会・比較ができる。

■エアライン・航空券フォーラム
http://www.nifty.ne.jp/forum/fairline/
 航空券やマイレージ、航空会社の最新ニュースなどに関する情報を提供しているサイト。国内線主要路線の運航ダイヤと航空運賃カレンダーが掲載されている「国内線ダイヤ・航空運賃早見表」は必見。

(2001/4/2)

[Reported by moriyama@impress.co.jp]


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