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■URL
http://www.freeworldialup.com/
http://www.pulver.com/jeff.html
IPを使った電話技術の権威であるJeff Pulver氏は3日、ベンチャー企業Free World Dialupの設立を発表した。この会社は世界で初めて「P2Pインターネットテレフォニーネットワーク」を構築しようとしている。それによって世界中どこに電話を掛けても通話料金がかからない世界を実現しようとしているのだ。
このプロジェクトについてJeff Pulver氏は「MP3とNapsterは、情報やエンターテインメントを共有し交換するすばらしさを実践してくれた。Free World Dialupは完璧に合法的なやり方で我々のコミュニティーの間でそれぞれの電話線を共有することができるのだ」説明した。
Free World Dialupのサービスを利用しようとする人は、まず150ドルの接続キットを購入する。このキットを利用するにはケーブル接続やDSLといったブロードバンド接続と通常のアナログ電話線が必要だ。このキットを説明書通りにブロードバンド接続と通常のアナログ電話回線につなげると、その後は追加料金なしに無料の音声通話をかけることが可能になるという。
電話をかけるときには、通常と同じように受話器を取り上げ相手の電話番号を入力する。音声データがインターネットを通して相手の近くにあるFree World Dialupサービスの利用者まで行きつくと、その利用者の市内電話回線を利用させてもらって、近所にいる人の電話に電話をかけてくれるという仕組みだ。
この仕組みを考えると分かるように、Free World Dialupを利用している人が十分に増えないと、世界各地に電話を無料で掛けられる相手が限られてしまう。これはNapsterの利用者がまだ少なかった頃に、探している楽曲が見つからなかったのと同じようなP2P全体に共通する現象だ。
また、サービスの利用者は自分の利用している市内電話回線を他のすべての人と共有しなければならない、という制約もある。つまり他の人が自分の電話回線を利用するので、他の人の分の電話料金を自分が支払わなければならないのだ。こうした状況の下でこのサービスを利用するには、現実的には市内通話料金が固定料金でなければならないと考えられる。固定料金ならば、他の人がどんなに自分の電話を使おうと、自分の支払う料金に変化はないからだ。そのため、最初にこのサービスが実施される地域はすべて市内料金が固定料金となっている。市内通話料金が従量制となっている日本でどのような仕方でこのサービスが利用できるようになるのか、今のところ解決策は示されていないようだ。
Free World Dialupでは現在このサービスのアルファテストを行なっており、今年の6月ごろにはサービスをスタートさせたいと考えている。最初にサービスが利用できるようになるのはシアトル、サンディエゴ、メルボルン、パース、シドニー、香港、ストックホルムなど世界各地の25都市だ。
電話回線を共有する行為についてJeff Pulver氏は「完全に合法」だと述べているが、もしこのサービスが普及してきたら長距離電話会社との法廷闘争にならないとの絶対の保障はなく、このビジネスにはリスクが残ると言えるだろう。また振り返って、市内通話料金が下がってきたとはいえ、依然として従量課金制である日本の現状を考えると、このFree World Dialupのような完全なP2Pインターネット電話ネットワークをつくろうという壮大な試みに日本が取り残されないのか、また、こうした電話回線を共有するというような自由な発想が日本から出てくるのか、という懸念が残る。Cisco Systemsの会長は以前「すべての音声通話は無料になる」という技術的には可能だが、十分に衝撃的な予言を行った。そのような時代はもうすぐそこまで来ているのだろうか。
(2001/4/4)
[Reported by taiga@scientist.com]