【イベントレポート】

デジタル出版の最新動向がわかる「デジタルパブリッシングフェア2001」開催

■URL
http://www.reedexpo.co.jp/digi/


会場入口

 出版物のデジタル化技術やデジタルコンテンツ配信技術・サービスを集めた専門展示会「デジタルパブリッシングフェア2001」が東京国際展示場にて開催されている。同時開催はアジア最大規模の本の展示会「東京国際ブックフェア」。会期は4月22日まで。

 出展企業はアドビシステムズ、凸版印刷、大日本印刷、廣済堂、NEC、NTTコミュニケーション、イーブックイニシアティブ、パピレスなど51社。業界注目のeBOOK(電子書籍)やブックオンデマンド技術、デジタルコンテンツ系サービスなどが一堂に会した。

 展示会場はかなりの賑わいだったが、最も注目を集めていたのがアドビシステムズのブース。アドビのブースでは暗号化によって違法コピーを防止する、出版社・取次ぎ、オンライン書店向けサーバー製品「Adobe Content Server」(2001年夏より販売開始)や電子書籍を手軽に購入できる「Acrobat eBook Reader」、PDFファイルを直接出力できる編集ソフト「InDesign」のデモ等を行なってた。

凸版印刷のブースでは出版物の生産だけでなく、データ管理・配送。代金回収までトータルなサービスを提供するフルフィルメントサービス、電子書籍のダウンロード販売サイト「ビットウェイブックス」、「プリント・オンデマンド」サービスなどを紹介。また、イーブクイニシアティブジャパンのブースでは紙の本と同じように見開きでページを表示できる「イーブック端末」の試作機や、電子書籍「10DaysBook」を展示していた。ほかには、日本出版販売ではオンライン書籍販売「本やタウン」、オンデマンド出版サービス「ブッキング」、ユーザーからのリクエストで書籍を復刻する「復刊ドットコム」などのサービスを紹介していた。 

Acrobat eBook Readerのデモ風景 Acrobat eBook Readerの画面 「復刊ドットコム」で展示されていた三原順の作品 「イーブック端末」試作機

 変わりどころで目を引いたのは廣済堂の「SPコード」。18mmの四角の二次元コードに情報を印刷し、専用の読み取り装置を使って、音声・点字・文字など好きな形で利用することが可能だ。Wordなどのテキストデータやjpegなどの画像データに変換し、ネットワーク上でデータ交換することも可能。聴覚・視覚障害者のための活用も構想されており、現在製品化に向けて準備段階だという。SPコードはAIBOとも連動しており、コントロール用紙を使ってAIBOをダンスさせたりすることができる。また、プリコのブースで展示されていた自分史やエッセイ、回想録など用の小部数オンデマンド自費出版サービス「個人書店」。オンデマンドサービスは目新しくないが、職人によって作られる「和綴本」を要望に応じて提供してくれるとのこと。

SP Codeの音声出力機とAIBO 右下にある四角いコードがSP Code 「個人書店」の和綴本

 


イースト株式会社 下川和男氏

 また、デジタルパブリッシング関係者に向けたセミナーも同時開催された。19日に行なわれた「eBook(電子書籍)は出版に革命をおこすか?」では、イースト株式会社・代表取締役の下川和男氏がeBookの市場動向と最新技術を紹介したほか、アドビシステムズ株式会社eBook担当の石原信義氏が「Adobe Content Server」や「Acrobat eBook Reader」のデモ等を行なった。イーストの下川氏はeBookの最新トピックスを海外の事例とともに紹介。今後の電子出版については「Napster」のような個人対個人の『これちょっと面白いから読んでみて』といった気軽にコンテンツを配布できるようなサービスが普及するのではないか」、「AdobeとMicrosoftをIEとNetscapeになぞらえる人がいるが、ストリーミング技術の  Windows Media PlayerとRealAudioのようにすみわけ可能になるのではないか」といった見解を語った。また、今後日本の出版社がやるべきこととして、出版物をXMLデータとして保管すること、デジタル化コストの削減などを挙げた。


角川書店 角川歴彦氏

 東京国際ブックフェア専門セミナーでは、角川書店 角川歴彦代表取締役社長が「21世紀の出版業界はどこへ向かうのか」と題した基調講演の中で「インターネットの登場で実現したブックオンデマンドなどの技術によって絶版のない出版業界がここ1年で実現する」と述べ、One to Oneマーケティングなどの力によって可能となる、地域や顧客に密着したサービスの強化など、これからの書店に期待するCommunity(地域コミュニティーのセンサーとしての役割や顧客ファイル把握)、Contents(フェイス・トゥ・フェイスの情報伝達や新刊書籍・雑誌の強化)、Commerce(ブックオンデマンドなど「欲しい本がない」の声の解消)の3つの「C」について語った。

 今回の「デジタルパブリッシングフェア」は、ブロードバンド時代に向けてeBookに対する取り組みが本格化すること、またオデンマンド出版が業界に浸透したことを改めて実感させられるイベントだったと言える。

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(2001/4/19)

[Reported by tanimoto@impress.co.jp]


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