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【通信事業】

なかなか始まらないADSL“3Mbpsサービス”の現状

■URL
http://www.metallic.co.jp/ (東京めたりっく通信)
http://www.osaka-metallic.co.jp/ (大阪めたりっく通信)
http://www.coara.or.jp/ (コアラ)

コアラが福岡市内で提供中のADSLサービス「アドバンスドコアラ」では、アルカテル社製のG.dmt Annex A準拠ADSLモデムを採用。ユーザー側のモデムは同一のまま、コアラ側の設定変更だけで1.5Mbpsと3Mbps両方に対応できる。モデムの性能的には通信速度にまだ余裕があるため、回線状況しだいではさらに高速なサービスも設定可能。すでに4Mbpsサービスの提供もアナウンスされており、コアラのオフィスでは実際に4Mbpsの回線が接続されていた。写真左下にあるのが、アルカテルのUSBタイプADSLモデム。ほかにブリッジタイプとルータタイプがある

 NTT東西地域会社のADSL事業本格参入を機に、各社のADSLサービスの最大速度が軒並み1.5Mbpsクラスにシフトされたのは記憶に新しいが、今年に入ってから、さらに高速な最大3Mbpsのサービスを用意する通信事業者が現われ始めた。まず、東京めたりっく通信が投入計画を1月末に発表、その後、大阪めたりっく通信やコアラが3Mbpsサービスをメニューに追加した。

 現在のところ、1台の端末で3Mbpsをフルに必要とするようなサービスは一般的ではないため、3Mbpsサービスのメリットを享受できるのは複数台の端末で利用するユーザーということになる。料金面で個人ユーザーが利用するにはまだ高すぎるということもあるが、実際、大阪めたりっく通信が申込を受けたうちの60%以上が法人で、残りについても半数程度がSOHO系だったという。3Mbpsサービスが普及すれば、中小企業などにとって専用線に代わる常時接続回線として期待できるサービスとなるだろう。

 また、ADSL事業者にとっても3Mbpsサービスは、「NTTとの差別化としてシンボル的にも必要」(大阪めたりっく通信)なものであり、フレッツ・ADSLが契約者を急伸させている中、早急に投入しておきたいサービスでもあると言える。

 ところが、4月末現在、3Mbpsサービスが開通しているユーザーはほとんど現われていないのが実状だ。回線状況による通信速度への影響など、まだまだデータが不足していることもあり、提供にあたっては慎重にならざるを得ないのだ。東京めたりっく通信では当初、3月をめどに3Mbpsサービスを提供するとしていたが、今のところ対象は数十名のモニターユーザーのみ。6月まではモニター試験を通じてエリアや距離と速度の関係、トラフィック量、回線のチューニングなどの調査を進める予定だとしており、一般向けメニューとして料金などの詳細が発表されるのは6月頃になる見込みだ。

 一方、大阪めたりっく通信では4月よりサービスメニューへ3Mbpsの「HOME 3000」コースを追加。当初予定していた100回線分については、すでにユーザーからの申込受付が締め切られるほどの反響を得ているが、3Mbps回線が開通しているユーザーはまだ現われていない。3Mbpsサービスを提供するにあたっては、通常よりも開通までの手順が多いためだ。

 具体的には、申込の受付後、近隣データを照合しながら速度を予測するという項目を設けており、その事前調査の結果、3Mbpsサービスが可能と判断した場合にはじめてNTTに机上調査を依頼する手順をとっている(3Mbpsサービスが困難だと判断されたユーザーに対しては、個別に訪問してその理由を説明。キャンセルするか、1.6Mbpsで契約するかはユーザーに判断してもらう)。また、「最大のチューニングを行なった状態で引き渡す」という同社の方針のため、モデムの取付(ユーザー工事も可能)についても、極力同社による有料工事をお願いしているとしている。その結果、通常は開通までに2週間程度で完了するところが、余計に期間を要することになる。3Mbpsコース第1号ユーザーの回線が開通するのは、5月20日頃になる予定だという。

 なお、同社の事前調査では、2Mbps以上の提供が可能なユーザーは100回線中10回線程度に止まっており、最終的に今回の申込で3Mbpsサービスの対象となるのは8~12回線になるという。東京めたりっく通信が1月に公開したG.dmt Annex C準拠モデムの通信速度のデータによると、距離的には広い範囲で3Mbpsサービスが受けられるという結果だったが、実際には距離以外の要因もあるため、提供可能な回線環境のユーザーはかなり絞られることになりそうだ。

 そんな中、実はすでに3Mbpsサービスを開通させている事業者もある。コアラでは福岡市内において、G.dmt Annex A準拠のモデムを利用した最大3Mbpsのメニューを用意しているが、その第1号ユーザーが4月中旬に現われている。

 となると気になるのは、提供の可否を分ける距離などのデータだが、それらの条件は特に定めておらず、「やってみないとわからない」というのが同社のスタンスだ。すなわち、3Mbpsサービスを希望するユーザーが現われた場合、そこで実際に3Mbpsの設定で通信を行ない、1.6Mbps以上出るようなら、ユーザーに3Mbpsで契約するかどうか判断してもらうという方針だ。今回のユーザーの場合、電話局までの距離は約2km。電話局のDSLAMまで5.632Mbps出ることを確認した後、コアラ側の設定により上限を3Mbpsに制限した。また、ユーザー側からFTP調査を行なったところ、約2.6Mbpsを記録したという(FTPではデータ転送後、ディスクに書き込む時間の分の誤差が生じるため、実際は3Mbps程度は出ていると思われるとしている)。

 コアラのように、実際に提供できるところから個別に提供していくというスタンスは、早期開始を望むユーザーにとってはありがたいものだが、注意しておきたい点もある。開通時のテストでは十分な速度が出たとしても、回線状況が変わってパフォーマンスが落ちる恐れもあるのだ。コアラでは「定常的にスピードが出なくなったことが確認されれば、何らかの対応を考える」としているが、「まだそれほどの運用実績がないので、なんともいえないというのが本音」だ。

 ただし、回線状況によって通信速度が変化してしまうのは、何も3Mbpsサービスに限ったことではない。この点については、大阪めたりっく通信でも「正式申込までに、お客様にはADSLの特性や干渉問題などをご理解をいただくようにしている」としており、「このようなことを受け入れていただくことも(3Mbpsサービス提供の)条件の一つではないか」と述べている。今後、ADSL事業者が運用データを収集しながら、提供条件を明確にしていくことはもちろんだが、3Mbpsサービスを申し込むにあたっては、ユーザー側もADSLの性質を十分に理解しておく必要がありそうだ。

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(2001/5/7)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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