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ブロードバンドがどれだけ普及するかどうかがインターネットの世界で取り残されないようにするために重要だ、などとする議論が日本では活発に行なわれているが、世界にはコンピューターどころか電話すらない地域も多い。そうした人たちとの格差が「デジタルデバイド」と呼ばれ問題となっている。
この問題を解決しようとインドのIndian Institute of ScienceとEncore Softwareのエンジニアの有志が「Simputerプロジェクト」を開始した。貧困地域の多いインドはハイテク労働者の供給地であると同時にデジタルデバイドの最先端地域ともなっているからだ。「SimpleなComputer」の造語でもあるSimputerは200ドルほどの値段で、PDAよりは少し大きめのサイズのコンピューター。ペン入力や音声出力などの自然なユーザーインターフェイスによって、教育をそれほど受けていない人でも簡単に利用できるようにすることを目指している。プロトタイプの写真を見るとPocketPCやPalmにそっくりの外見となっている。
誰もがこのコンピューターを使えるようにするために、エンジニアたちはハードウェアの設計図をGPLに準拠したSimputerGPLライセンスで配布する。メーカーがライセンス料を払うことなく自由にハードウェアを製造できるようにし、できるだけ低価格で入手できるようにすることを目指している。OSはLinuxを採用し、その上で動くブラウザーの中ですべてのアプリケーションを動作させる。ブラウザーは独自に開発された「Information Markup Language(IML)」を採用しており、マルチリンガルなテキストと音声出力やスマートカードのサポートなどを可能にしている。このマークアップ言語はXMLをベースにしているためインターネットのリソースにアクセスすることも当然可能だ。現在確認はできていないが、マルチリンガルで世界中の言語をサポートすることを目標にしていることから、日本語が使える可能性も高い。
最近になって完成したプロトタイプの写真、スペックなどの詳細が明らかになったが、それによると画面サイズは320×240ピクセルと大型で、メモリーは32MBのRAM、OSはLinux、そしてスマートカード用のスロットとなっている。スマートカードは大量のデータを保存するためではなく、小さな貧しい村などで200ドルのSimputerを購入できない場合に、スマートカード内に個人情報を保存しておくことで複数の人でSimputerを共有できるようにするために設けられた仕組みだ。プロジェクトでは村の学校やキオスク、郵便局などでSimputerを保管し、一定期間一人の人に貸し出し、その後スマートカードを入れ替えることで別の人が使えるようにすることを目指している。
プロトタイプはすでにでき上がっており、現在メーリングリストで製品化に向けて活発な議論が行なわれている。予定通りに行けば2002年の3月ごろには製品が世に出る予定だ。
(2001/5/29)
[Reported by taiga@scientist.com]