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【イベントレポート】

「Microsoft.NET」は“出張手続”を大きく変える!?
マイクロソフト、JTBなどがWebサービスの共同実験

■URL
http://www.ms-event.com/netdc/ (.NET Developers Conference 2001)
http://net.est.co.jp/jtb/about/ (.NET出張申請システム)
http://www.microsoft.com/japan/presspass/releases/053001web.htm (発表資料)

 昨年6月の発表当時、あまりに抽象的かつ広範囲に及ぶ戦略だったため、具体的にいったい何ができるのか把握することが難しかった「Microsoft.NET」だが、どうやら、企業内の“出張手続”プロセスを効率化できるものであることは確からしい。

 30日、東京都内のホテルで開催された開発者向けセミナー「.NET Developers Conference 2001」において、マイクロソフト、ジェイティービー(JTB)、イーストの3社が取り組んでいる、Microsoft.NETで提供される“Webサービス”の適用実験が紹介された。企業の社内システムと旅行代理店のシステムを連携させ、出張申請やチケット手配のプロセスを統合することを想定したもので、「Microsoft.NETフレームワーク」のBeta 1版の上で稼働している。

基調講演に立ったマイクロソフトの鈴木和典取締役 「.NET出張申請システム」のデモンストレーション

 マイクロソフトの鈴木和典取締役による基調講演の中で実際に行なわれたデモンストレーションでは、ウェブページ内に設けられたフィールドに出張目的や期間を入力、さらに航空チケットやホテルの期日を指定することで、旅行代理店のデータベースを検索し、その結果が表示される様子が紹介された。見かけは一般のウェブアプリケーションと何ら変わらないが、URLを見ると、そこにはActive Server Pagesの.NET版と言える拡張子「.aspx」が付いている。実はこのページは、ユーザーには一つのサービスとして見えてはいるものの、バックグラウンドでは複数のWebサービスがシームレスに連携して提供されている点で、従来のウェブアプリケーションと大きく異なっているという。

 具体的には、申請や経理処理を担当する部分が企業内のシステムであり、チケットやホテルの検索・手配を行なう部分がJTBビジネストラベルソリューションズのシステムとなっている。両者はMicrosoft.NETフレームワーク上で提供されており、XMLベースのプロトコル「SOAP」を介してプロセスをやりとりしている。

 従来このような手続を踏む場合は、ユーザーがそれぞれのページにアクセスし、検索結果を手動でコピー&ペーストするなどの作業が必要だった。また、システムを連携させるような場合も、専用のプロトコルに対応する必要があるなどのネックがあった。Microsoft.NETでは、同フレームワークに対応したWebサービスを開発・運用する技術および環境を提供することで、これまで各サイトごとにバラバラに提供されていたネットサービスの「孤島化からの脱却」を図るとしている。

 「.NET出張申請システム」は、開発者向けサイトとして公開中だ。同システムのWebサービスを試用したり、利用されているメソッドを参照することができる。Microsoft.NETの実現例というには地味過ぎるかもしれないが、その可能性の一部をかいま見ることができるのは事実だろう。

HailStormの提供方法とサービスのリスト Microsoft.NETの技術開発スケジュール

 基調講演ではこのほか、マイクロソフトが自ら提供するWebサービス群「HailStorm(コードネーム)」についても言及された。HailStormは「個人情報を扱うサービスを、デバイスに依存することなく実現する技術」であり、「myProfile」「myAddress」「myWallet 」「myCalender」「myInbox」「myApplicationSettings」など11種類に及ぶ。

 ユーザーは、“エンドポイント”と呼ばれる各種のアプリケーションやサービス、デバイスなどを通じてHailStormの各機能を呼び出し、利用することが可能だ。MicrosoftではエンドポイントとしてMSN、Windows XP、Windows CE、Office、Posket PCなどを予定しているほか、サードパーティを通じた再販も行なう。HailStormを活用したサービスやソリューションの開発をサポートするため、サードパーティ向けにツールやテスト環境を提供するほか、コストもできる限り安価に設定する考えだ。

 なお、HailStormにおけるユーザー認証には「Microsoft Passport」が使われる。エンドポイントにも予定されている次期クライアントOSのWindows XPでは、WindowsログオンとPassportログオンが統合され、各種Webサービスも含めたシングルサインインが実現するという。今回は料金体系やビジネスモデムについて具体的な説明はなされなかったが、利用するサービスの内容や頻度などによりユーザーに課金する方針だという。

 今後のスケジュールとしては、「Microsoft.NETフレームワーク」および開発環境「Visual Studio.NET」の日本語をそれぞれ年内にリリースする。また、HailStormについては、10月に米国で開催される開発者向け会議において技術情報を公開し、年末にもBeta 1版をリリースする予定だ。

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(2001/5/30)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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