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警察庁生活安全局は、古物売買等に関する法律「古物営業法」を一部改正する法律案を今国会に提出することを明らかにした。ネットオークションを悪用した犯罪などへの規制強化が狙いだが、規定の対象など明確になっていない部分も多く、論議を呼びそうだ。
警察庁によれば、インターネットの普及に伴い、ホームページを利用した古物取引の無許可営業や、ネットオークションを悪用した盗品販売などの犯罪が増えているという。特にインターネットの匿名性を利用した盗品処分や少年犯罪が目立ち、同庁の推計では、ネットオークションでパソコンやバイクなどの盗品を売買した「盗品等の処分件数」は、2000~2001年で約5,200件、処分額は2億3,500万円に上るとしている。現行の古物営業法は対面販売を前提としており、ネット上でのケースには対応できない部分が多いことから、法改正を行なってこうした状況に対し規制をかけることが今回の狙いとなる。
改正法案の骨子は「古物商のインターネット利用取引に関する規定の整備」、「インターネット・オークションにおける盗品などの売買防止等のための規定の整備」、「電子メール等による品触れ(※)の導入」(※警察が紛失品・盗難品の特徴を書き出して古物商や質屋に配布する書類)の項目に分かれている。主な内容としては、“ホームページを利用した古物取引を行なう古物商への該当URL届け出の義務化”、“ネットオークション業者による都道府県公安委員会への届出の義務化”、“盗品の疑いのある出品の警察への通報”、“出品者の確認と取引記録の保存”“国家公安委員会の基準に基づいた推奨ネットオークション業者認定制度の設置”などが挙げられている。
しかし改正案の内容は、その役割や効果への疑問点も多い。例えば“国家公安委員会の基準に基づいた優良ネットオークション業者認定制度の設置”では、盗品等の売買防止と発見に効果的なシステムを採用しているオークションサイトに対して認証マークを発行して推奨するとしているが、具体的にどういったシステムが推奨に当たるかは明らかにされていない。またオークションのプラットフォームに盗品防止の効果を期待するのは、出品者の商品が主体であるオークションの構造を考えると、無理があるようにも感じられる。また“盗品の疑いのある出品の警察への通報”は、ネットオークション業者へ盗品出品の通報を義務つけるものだが、大手サイトでは常時十数万~数百万にもなる膨大な出品への監視を行なうのかといった点や、出品者による画像や説明程度しかない商品に対して盗品だという識別が可能なのかという疑問も浮かぶ。また海外のオークションサイトに対しては規制が効かないため、国内業者だけを対象としても根本的な解決にはならない面もある。
警察庁は早ければ今国会での閣議通過を目指しているが、現状ではネットオークションに対する法的規制は世界的にも例がなく、今後の論議が注目される。
(2002/2/8)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]