総務省総合通信基盤局電気通信事業部 鈴木康雄部長 |
総務省総合通信基盤局電気通信事業部の鈴木康雄部長は、IP.netで「電気通信事業分野における課題と今後の取組」と題して基調講演を行なった。ブロードバンドの現状や、政府が今後どのようにブロードバンドの普及を図っていくのかが具体的に示されている。
鈴木氏は、まず日本におけるブロードバンドの現状について説明した。この中で特に強調したのは、インターネットビジネスのマーケットが急拡大している点。全体では1999年の21兆2,000億円から2.3倍の47兆8千億円に、そして2005年には実に132兆9,000億円に拡大すると予想している。
ここ1年の急激な料金低下についても触れた。時期は不明だが、IT戦略会議で日本の通信料金が国際的に見て高いことが話題となり、政府として最初にやることは高速インターネットのインフラ整備であるとの認識で取り組んできたことを強調。その結果として、2001年には急激な料金低下が起こり、結果的に世界でもっとも安い料金水準を実現できたとした。
もっとも通信業界の過当競争の危険な側面についても触れている。米国では、激しい競争の結果、大手ADSL事業者などが相次いで破綻。その結果、生き残った企業が料金を値上げしてしまい、結果的にユーザーの不利益につながったと説明した。
また、ブロードバンドはITが健全に発展するための必要条件であると発言。日本がIT政策を進めていく上では、まずブロードバンド化を進めていく必要があるとの認識を示した。
そのための具体的な政策として、アクセス回線、中継網、そして家庭内のブロードバンド化について順に説明した。まずアクセス回線のブロードバンド化については、2001年度に過疎地域での整備を目的に補正予算200億円以上をかけて300地域以上を整備したという。このほかにも、各家庭に回線を引き込む際に使用する線路施設の利用手続きを円滑化したり、通信事業者がISP向けにリソースを提供する際の制度作りなどを行ない、通信事業者が新規参入しやすい環境ができたという。
中長距離の中継網のブロードバンド化については、回線としてはすでにブロードバンド化が完了しており、あとは料金を下げるだけだと説明。もっとも、この点について具体的な方策は示さなかった。
家庭内のブロードバンド化では無線LANをただひとつ取り上げ、5GHz帯を屋外で利用できるようにしていく考えを述べた。現在普及している無線LANは2.4GHz帯を使用する802.11b規格で、これだと通信帯域は最大で11Mbps。対して5GHz帯を使用する802.11a規格は56Mbpsと高速で、すでに各社から製品が登場している。もっとも、この規格が使用する5GHz帯は、すでにほかの用途で使われているため屋外では利用できないという制約があった。
この点について鈴木氏は、まず5GHz帯の無線免許を取得している組織に対して、どういった使い方をしているのか調査、公開できるようにする法律を作る。その結果、電波の使い方の効率が悪いようなら、その周波数帯を無線LANなどで使わせてほしいといった要請をするつもりだと述べた。
ブロードバンドのアプリケーションとしてインターネット電話も取り上げ、通常の電話と同じような使い勝手を提供するためにさまざまな検討を進めていることも明らかにした。
具体的には、現在は通信回線を保有しておらずサービスのみを提供している第2種通信事業者に対しては、電話番号として「0091」ではじまる番号を割り当てている。もっともこの番号は、続いてベンダー番号などをダイヤルする必要があり使い勝手が悪い。そこで、第2種通信事業者でも通信回線を保有する第1種事業者と同様に番号の割り当てが受けられるようにする。
具体的には、5月か6月までにインターネット電話をサービスする事業者に対しては第1種、第2種通信事業者に関係なく「030」ではじまる電話番号を割り当て、ユーザーは通常の電話と同じようにこの番号をかければ相手につながるようにしたいという。
このほかにも、地域IXの構築に対する支援や、2002年度予算で第4世代の携帯電話開発に10億円の予算を確保したこと、将来のフルIP時代に向けた研究会の活動や、ユーザー保護の観点からの法整備などを進めていることなども説明している。
(2002/2/27)
[Reported by 笠井 康伸]