【新サービス】

アクセスポイント構築用ソフトをGPLで無料配布

世界規模のワイヤレスISPをオープンソースで目指すSputnik

■URL
http://www.sputnik.com/

 Linuxサービス企業Linuxcare社の3人の創業者が立ち上げた、新しいオープンソースベンチャー企業「Sputnik」が話題になっている。この会社は米国にとどまらず、世界に広がる無線LANを使ったワイヤレスISPコミュニティーの構築を目指している。

 Sputnikは、企業が自前でアクセスポイントを設置するのではなく、アクセスポイントを簡単に設置できるソフトウェアを無料で配布し、アクセスポイントを設置してくれた人には、世界中に同じように設置されたアクセスポイントを無料で利用できるというインセンティブを与える。同社では、こうした世界中に点在するSputnikアクセスポイントのネットワークを「Sputnikネットワーク」と呼んでいる。アクセスポイントを設置しないユーザーは、通常のワイヤレスISPと同じように利用料金を払ってSputnikネットワークを利用する形となる(現在は試験段階のため無料)。ユーザーは、PCにソフトをインストールするほか、電気料金、アクセスポイントの維持費用を負担するなど、ボランティア的な要素も含まれており、オープンソースムーブメントや社会貢献とビジネスを組み合わせたモデルといえる。


 しかし、設置する場所によってアクセスポイントの利用頻度は異なる。例えば、自宅が利用者の多いコーヒーショップの上にあるような場合、自分が設置したアクセスポイントにはコーヒーショップの客による膨大なパケットが流れることになるだろう。その場合、自分自身が家でそのアクセスポイントを使う帯域幅が狭くなり、不便になることが予想される。Sputnikでは、そのような場合のために、ゲートウェイソフトにパケット監視機能を搭載し、自宅に設置したゲートウェイソフトを自分が優先的に使えるように、外部からのトラフィックや、使用している帯域幅を制御するなどの高度な機能を組み込んでいる。また、GPLで配布されるこのゲートウェイソフトにはファイアウォールが組み込まれており、Sputnikネットワークの利用者に必ず認証を要求するシステムにしている。

 これらのソフトは誰でも数分で簡単にセッティングできるように作られているという。また、GPLで配布されているため、将来的にセキュリティーホールが見つかった場合にもオープンソースコミュニティーを通した修復等の貢献が期待できるだけでなく、他の事業者が改良を加えて同様のビジネスを始める余地もある。

 米国でも無線LANが普及し始めているが、セキュリティーに関する考慮は今のところほとんど払われていないというのが現状だ。実際、一般家庭に設置されている無線LANの電波を探し歩き、勝手にインターネットに接続すること楽しむ人々や、データを盗み出す人々の存在も知られている。Sputnikのゲートウェイソフトでは、そうした場合にもセキュリティーが確保でき、同時に世界のアクセスポイントを利用できるメリットもある。


 企業としてのSputnikは、他のワイヤレスISPとは大きく異なっている。ワイヤレスISPは多額の資本を投入して自前のアクセスポイントを各地に設置しなければならない。またBoingo社のようなローミング企業も注目を集めているが、こうした企業は既存のワイヤレスISPに依存しているだけでなく、複数のワイヤレスISPを利用するためのクライアントソフトウェアを必要とする。Sputnikはこうしたクライアントソフトウェアを必要とせず、ブラウザーだけで動作するほか、アクセスポイントを設置する費用を負担しない点で大きな違いがある。

 さらにSputnikは、今年後半に「Sputnik Enterprise Gateway」と呼ばれるソフトを発表する予定だ。このソフトは大企業が会社のためにアクセスポイントを設置し、同時に企業のイントラネットをファイアウォールの裏側に完全に隠すことができるソフトウェアだ。企業がこのアクセスポイントを設置することで、社員がSputnikネットワークを世界中のどこであれ無料で利用できる権利を確保でき、同時に自社内にアクセスポイントを設置できるというメリットがあるという。この場合、企業にはワイヤレスISPに対する社員の費用負担をしなくてよいという大きなメリットが存在するようになる。

 Sputnikのサイトには世界中のアクセスポイントを検索するためのデータベースがあるが、現在のところ米国内の検索しかできない。創業者のArthur Tyde氏によると、「日本の情報が検索できないのは資金の不足で単に日本地図が用意できなかったから」だという。Arthur Tyde氏は日本でビジネスをした経験もあり、Sputnikの成長に従って日本でも進出したいと考えていることを取材に対して明らかにしてくれた。

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(2002/3/11)

[Reported by taiga@scientist.com]


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