■URL
http://www.iajapan.org/its2002/
インターネット技術シンポジウム組織委員会は23日、インターネット技術標準化の最新動向についての情報交換を行なうシンポジウム「インターネット技術シンポジウム 2002」を都内にて開催した。インターネット技術シンポジウム組織委員会は、財団法人インターネット協会(IAjapan)、財団法人情報処理相互運用技術協会 (INTAP)、技術標準化推進団体インターネットフォーラム(JIF)で構成されている。初日には、IPv6をテーマとしたパネルディスカッションやインターネットの標準技術を決める「IETF」会議についての説明が実施された。
左から、慶應義塾大学環境情報学部教授 村井純氏、東京大学情報理工学系研究科助教授 江崎浩氏、株式会社インターネットイニシアティブ技術研究所 山本和彦氏、株式会社電通国際情報サービス 熊谷誠治氏、経済産業研究所 池田信夫氏 |
シンポジウムでは、「IPv6」をテーマにパネルディスカッションが行なわれた。その中で、株式会社インターネットイニシアティブ技術研究所の山本和彦氏は、まだ標準化に至っていないプラグアンドプレイ技術として「ISPからのアドレスの割り当て」「DNSサーバーの探索」「ノード探索」の3つを挙げた。それに対してモデレータを務める産業技術総合研究所の主任研究員 田代秀一氏は「IPv6はプラグアンドプレイが売りだったのに、いつになったら標準化が整うのか」と質問。それに対し山本氏は「インターネットの技術は使われてなんぼ。徐々に標準化と実装を進めるため、完璧にしてから使ってもらうものではない」として明確な時期は分からないとした。
また、「IPv6のすばらしさを説明をするときに、答えに詰まることが多いが、IPv6でうれしいアプリケーションを教えてください」との田代氏からの質問に対し、山本氏は、「インターネットにおけるWebのようなアプリケーションの登場はあまり期待できない」とした上で、「例えばIPv6を用いた『ハムスターライブ』は愛好家にはとても魅力的に映るが、そうでない人の方が多い。それぞれの人がうれしい『ミクロ的』なアプリケーションがたくさんある」とした。
IPv6を用いたインターネットITSについて触れたのは、慶應義塾大学環境情報学部教授 村井純氏だ。現在、名古屋で実施している実証実験において“収集した情報の権利”に関する課題が出てきたという。例えばタクシーのワイパーから得られる情報を基に提供する降雨地域の情報については、タクシー会社か、降雨情報を提供する会社のどちらに権利があるのかといったことだ。また、「同じ車でもワイパーやブレーキなど、センサーの設置箇所によって情報の所属が変わることも考えられる」とした上で、IPv6においては、そこで得られる情報が自立しており、また、それぞれの情報が自由に結びつくことができるとした。
富士通株式会社ネットワーク事業本部 松平直樹氏 |
続いて、7月14日から19日までパシフィコ横浜で開催される「IETF横浜会議」について富士通株式会社ネットワーク事業本部の松平直樹氏より説明があった。IETF(the Internet Engineering Task Force)は、インターネット技術の標準化機関で、プロトコルの開発や選定を行なっている。標準化技術の採用は、動作実績で決められ、「RFC」としてドキュメントが公開される。
IETFのメンバーは全てボランティアとなり、所属組織や肩書きに束縛されない個人としての参加となる。会議の開催は、メーリングリストに参加しているメンバーに対して、集う場を提供するのが最大の目的だ。普段はメーリングリストによって議論されているが、1年に3回、会議が開催される。1年の会議うち2回は米国での開催となるが、1回はそれ以外の国での開催となり、今回の横浜会議はアジアで始めてとなる。
なお、「インターネット技術シンポジウム 2002」の2日目、24日には「Sub IP Areaの歩き方」、「非PC系、デジタル機器のIPv6最小仕様」といった講演が予定されている。参加費は無料。
(2002/4/23)
[Reported by adachi@impress.co.jp]