【イベントレポート】

Sun ONE構想を支える三つの柱~米Sun、Joe Keller氏基調講演

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Joe Keller氏

 5月21日から22日にかけて東京・ロイヤルパークホテルにてB2B電子商取引をテーマにしたカンファレンス「ICe Tokyo 2002」が開催されている。初日の基調講演では、米Sun MicrosystemsのBusiness Integration Vice PresidentであるJoe Keller氏が「Webサービス社会での成功の鍵を握るSun ONE構想」と題した講演を行なった。

 Keller氏はまず、2002年の現実として企業が自前でネットワーク構築にコストをかければかけるほど、得るものが少ないと分析し、それゆえROA(Return on Asset:総資産利益率)の重視が必要になると語る。この資産の部分を情報に置き換えてみれば、ネットワークに新たなデバイスや技術が参加してくることで、ネットワーク全体の価値は上昇するという。「これからは、いつでも、どこでも、どんなデバイスでもネットワークにアクセスし、全てのデバイスはネットワークからサービスを受けようとしている。これを支えるのがSun ONE構想であり、Webサービス『Services on Demand』だ」とKeller氏は述べる。

 この「Services on Demand」を支える三つの柱として、2002年にSunが目指しているものは、「Identity」「パーソナライズ」と「統合」だ。これにより、Web上の高い価値を持つサービスを、ユーザーが必要とする時に欲している形で提供することを目指すという。

 「Identity」とは、あるコミュニティのメンバー情報を一元に管理する仕組みだ。「Identity」は、名前やパスワード、役職、資産情報などの属性と、登録、ポリシー、セキュリティ、連盟性Identityといった機能から構成される。Identityの機能には、「不測の成功」、例えばネットワーク構築時に予測できないほど参加ユーザー数が増えることに対する拡張性も含まれる。また、「連盟性」という概念は、複数のネットワークに対して同じ「Identity」でアクセスし、オンライン上で認証され、さまざまなサービスを受けられるようにするための仕組みだ。これを推進するために、Sunでは、多くの企業とともに「Liberty Alliance」を構築している。

 次に、「パーソナライズ」とは、さまざなまネットワーク上のソース(データ)をアプリケーションや他のWebサービスから集め、要求を出したユーザー向けに必要な情報をカスタマイズして提供する仕組みだ。Keller氏は、これを「Portal Computing」と表現した。この概念は、すでにいくつかのWebサイトで実現されているという。例えば、CNNのWebサイトでは、各記事はそれぞれソースとしてデータベースに格納されている。これをポータルがアクセスしたユーザーの属性を把握して、コンテンツを動的に生成しているのだ。

 「Portal Computing」には、二つの重要な要素がある。一つは、どのようなデバイスからでもアクセスできるような拡張性が必要だ。これには柔軟な「Plug-in」で対応する。二つ目には、どのようなデバイスからのアクセスに対しても、セキュアな接続が必要だ。同氏は、「PCベースであれば、VPNの構築を事前に行なうことができるが、携帯電話に対しては簡単にはいかない。そこで、セキュアアクセスパックを必要に応じてダウンロードし、Javaベースでオンデマンドのセキュアな通信を可能にする仕組みが必要になる」と語った。

 最後に、「統合」とは、多くの言語やシステムによって構築されているネットワークを一つに統合する仕組みだ。Wall Street Journalやアナリスト達によれば、平均的な大企業では50以上のアプリケーションが複雑なネットワークを構築しており、Keller氏によれば「ナイトメア(悪夢)」のような状態になっている。Sun ONE構想では、これを解決するために統合サーバーを設置する。この統合サーバーはXMLに準拠しており、オラクルやSAPのような独自の“言語”を持つ企業向け情報システムと対話、翻訳をすることで統合を果たす。同氏は、統合を目指す上で必要なことは、「XMLやSOAP、UDDIといった標準規格に適合したオープンアーキテクチャーでなくてはならない」とコメントした。

 講演の終わりには、導入事例としてシンガポール政府やアラブ首長国連邦のドバイ政府の電子政府システムなどが紹介された。シンガポール政府では、すべての国民が行政サービスをオンラインで受けられる環境を目指してシステムを構築した。その中で、約3,000件を14ヶ月でオンライン化し、今後12ヶ月で倍増させる勢いだという。これは、オープンアーキテクチャーの恩恵により、開発期間が短く、拡張性が高いSun ONEの特徴の一つをあらわしているという。ドバイのケースでは、全ての市民がシングルサインオンでさまざまなサービスを受けられる電子政府を構築した。これは、ネットワークIdentityの概念によるものだという。

(2002/5/21)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]

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