【インタビュー】

キーワードの値段は市場が決める~Overtureインタビュー

■URL
http://www.overture.com/ (米Overture)
http://www.jp.overture.com/ (オーバーチュア)

 2003年第1四半期から日本で本格的なサービスを展開するOverture。検索キーワードに対して、企業が希望価格を入札する「スポンサード・サーチ・サービス」で、不況下にあるインターネット広告業界で数少ない好調な企業として注目を集めている。日本でのサービス発表に伴なって来日した同社CEO・Ted Meisel氏と、日本法人のオーバーチュア社長の鈴木茂人氏のお2人に、Overtureのビジネスについて伺った。

左からOvertureのマイゼルCEO、オーバーチュアの鈴木社長
編集部:Ovetureの成り立ちを教えてください。

Ted Meisel氏(以下マイゼル):Overture(2001年に「Goto.com」から改名)は、1997年にBill Gross氏が創業しました。製品やサービスの情報を検索する場合、ロボット型の検索エンジンでは不要な情報が多すぎることが多く、またYahoo!のようなディレクトリ検索では、情報に追いつけない面があります。そこで彼は、広告を出す企業が検索結果を自分で用意するというアイディアを考えました。検索結果のクリックを有料とし、その内容に客観性を持たせれば、商品情報を探しているユーザーにとってメリットがあるし、企業にとっても、商品を求めているユーザーに対してダイレクトに広告が出せる。これがスポンサード・サーチ・サービスです。

編集部:入札方式を採用しているのは?

マイゼル:私たちのサービスでは、ユーザーが検索結果をクリックするたびに、広告主は課金されます。検索結果の料金はキーワードごとに、また同じキーワードでも季節によって変動する必要があり、そこで最適なのは、我々がキーワードの料金を決めるのではなく、市場に、つまり広告主企業に自ら適切な料金を決めてもらうことです。現在米国では400万件のキーワード、およびキーワードの組み合わせに対する料金が設定されていて、キーワードの価格は5セント~10ドルまであります。概してBtoB関連のサービスが高額となっています。通常のWebバナーよりは高いですが、キーワード指定バナーよりは低い料金の場合がほとんどです。

編集部:入札方法は?

マイゼル:サービスセンターとなるサイトを設置し、広告主企業はそこで希望のキーワードの相場や、他社はいくら出しているのかを見ることができ、ここから入札ができます。また6月26日から自動入札サービスを導入し、広告主は入札価格のレンジ設定や、それを自動的に管理することが可能になりました。
鈴木茂人氏(以下鈴木):広告主は通常、複数のキーワードにそれぞれ異なった価格を設定しているので、毎月の上限価格を設定し、クリック×キーワード価格の合算が設定額に達したら通知するといった形で利用する場合が多いです。

編集部:キーワードはどう設定するのですか。

マイゼル:例えばイエローページ(電話帳)は1,000から2,000のカテゴリーがありますが、Web検索の場合は100万単位のカテゴリーがある。ずっと細かいという点が、まず違います。階層的に見ると、たとえば旅行の場合、単なる“旅行”から“バックパック旅行”、“チベットへのバックパック旅行”、“チベットへのバックパック旅行を主催する旅行会社”と掘り下げていくことができる。ユーザーの検索行動も変化していて、現在米国では、1単語(ワンワード)の検索よりも、複数の単語の検索が普通になりつつある。より具体的になっているんです。これはちょうどインターネットの進化とも対応していて、最初は「インターネットで何かおもしろいページある?」といった具合にブラウジングするだけだったのが、現在は「これをやりたいから」と、具体的な目的をもってWebを利用する点に通じます。
 検索と同様、Overtureのキーワードも、ワンワードと、いくつかのキーワードの組み合わせ(コンビネーション)に分かれます。国によって違いますが、米国ではワンワードが3割くらい、あとはコンビネーションとなります。1企業は通常、数百前後のキーワード(ワンワード、コンビネーション含む)に対して料金を設定しています。
鈴木:日本ではまだワンワードが圧倒的に多いと思います。先ほどの旅行の例でいえば、例えば旅行会社の場合、「旅行」というキーワードに対しての設定も、「チベット+旅行」での設定もできる。ただ「旅行」で検索したユーザーと、「チベット+旅行」で検索したユーザーと、契約・購入の件数は変わってくるわけで、それを踏まえて各キーワードに料金と、検索結果とリンクするページを設定することになります。またロボット型の検索エンジンだと、例えば「旅行」で検索した際、旅行会社以外の結果もたくさん入ってきますが、スポンサード・サーチを取り入れていれば、旅行会社などのサイトが結果上位に表示される。そのためユーザーにとっても価値が高まるといえます。ただ、Overtureのサービスは、検索サイトの場所を買うものではありません。検索サイトとパートナー契約を結んで、そこに我々のサーチ結果を配信し、そこから得られる利益を分配する形となります。検索サイトとの共同事業といえます。
Overtureではサイトから希望するキーワードの価格を確認できる。ここでは“hotel”“new york”の2つのキーワードのコンビネーションを検索したところ、2.9ドルが最高価格として表示された

編集部:Googleなど、競合他社と比べたOvertureの強みは?

鈴木:Googleと決定的に違うのは、Googleは我々のパートナーにとっての競合である点です。我々も自社の検索ページを持っていますが、これはショーケース的にOvertureの仕組みやサービスをパートナー、広告主企業に見せるためのもので、パートナーサイトの競合にはなりえない。
マイゼル:Googleの場合、自らがYahoo!に並ぶポピュラーな検索サイトになっているのが重要な点といえます。数ヶ月前にGoogleが「スポンサード・サーチ」的なサービスを始めましたが、それとOvertureと比較した場合、Overtureは6万社の広告主と仕事をし、また4年間の実績とノウハウを持っています。また「スポンサード・サーチ」は広告主である企業に対するサービスですが、Googleはテクノロジーの会社であり、広告主に対するサービスという面では充分ではないと考えています。

編集部:SEO(Search Engine Optimaization)についてはいかがですか?
※SEO=検索エンジン最適化。検索結果上位に表示されるよう、Webサイトを最適化すること

マイゼル:SEOはタグやページレイアウト、ページ内の要素などで検索結果の上位に広告主のサイトを表示させますが、我々はスポンサード・サーチの仕組みを非常にオープンに、価格を含めて公開している点で、我々とSEOは異なります。ただ、SEOを行なっている企業は、サーチエンジンのマーケティングを行なっている場合も多く、“このキーワードの価値はこれくらい”と企業に提案することができる。そうした面で、我々にとって代理店的な役割を務める場合も多く、重要な役割を持つと考えています。
鈴木:日本ではまだSEOはそれほど多くないですが、うちの話を聴いて一緒にやりたいと言ってくれる、パートナー的に考えてくれているところも出ています。うちにとっては補完できる相手だと考えています。

編集部:Overtureのビジョンは?

マイゼル:重要な検索市場を持つ国には進出したいと考えています。よく「スポンサード・サーチの次は何か?」と聞かれるが、当面はスポンサード・サーチの世界展開に注力していく方向です。

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(2002/7/2)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]

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