無線LANを推進する業界団体「Wireless Ethernet Compatibillity Alliance」(以下WECA)が記者説明会を開催、無線LANの標準規格である「Wi-Fi」の現状と今後の方向性などを発表した。
説明会にはWECA会長のDennis Eaton氏(米Intersil社)、およびWECAのアジアマーケティング担当者である富樫浩氏(ソニ- ホームネットワークカンパニー)が出席。まずEaton氏がWECAの近況として、IT不況のなかでWi-Fi認定製品は順調に拡大し現在は約370件のWi-Fi認定製品があること、2001年にロンドン、またこの7月に東京とシンガポールに新たに認証ラボを開設、世界で4つのラボが稼動中であること、公共アクセス場所(ホットスポット)の増加などを指摘。Wi-Fi関連の製品・技術が急速に拡大していると述べた。WECAに加盟しているのは現在世界で82社に上り、1年前は25%だったアジア企業が45%に急増しているという。またWi-Fi認定製品のための新しいロゴ、そしてロゴと併用する性能ラベル案を発表。性能ラベルやロゴを製品パッケージやWebサイトに表示することで、認知拡大とユーザーの利便性向上を図るという。
Wi-Fi認定製品については、製品の小型化、および多様化が進んでいて、現在はビジネス用の認定製品が主体だが、2005年にはビジネス用と家庭用が半々になると予測している。またホットスポットについては、現在設置されているのは千数百ヵ所程度で、設置場所も北米が多い。Eaton氏は「北米ではまだ数多くの中小ベンダーとビジネスモデルが存在するため、Wi-Fiによる公共アクセス市場はまだ未熟」と述べ、特にアジア・ヨーロッパなどの大手電気通信事業者の参入によって、市場の統一が進むことを期待しているという。その上で2005年にはホットスポットの設置数が1万2,000ヵ所に達し、特にアジア・太平洋地域、またホテルや喫茶店といった場所が多くを占めると見ている。
Dennis Eaton氏(左)と富樫浩氏
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新Wi-Fi認定ロゴ
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続いて富樫氏が、5GHz帯を利用したIEEE802.11aに関する展望を発表した。まず「802.11aは802.11b製品に代わるものではなく、補完、および混在しながらしばらくは続いていく技術」で述べた。その上で、認定テスト開始の条件である複数の802.11aチップセットおよび搭載製品という条件が揃ったことから、今年後半にテストを開始、2002年内には最初のWi-Fi認定802.11a製品群を発表する予定を明らかにした。その際にWi-Fi認定802.11aロゴも同時に発表するという。また802.11aと802.11bの双方に対応するデュアルバンド無線製品も、2002年末~2003年初頭にかけてPCカード型のモデルが出荷される予定で、WECAではデュアルバンド製品も認定する方向という。
Wi-Fiのセキュリティについては、「WEP(Wired Equivalent Privacy、802.11用の認証・暗号化技術)は専門知識とツールがあれば破ることができるが、それでもないよりはオンにしたほうが安全」(富樫氏)と述べた。現在セキュリティ対策を急いでいるものの、基準制定までにはまだ時間がかかるという。また2.4GHz帯を使い、802.11bとの互換性を確保しながらデータ伝送速度を最大54Mbpsにまで高速化するという「802.11g」については、「まだスペックを決めている段階で、2003年に決まるかどうかというところ。802.11aと802.11gは、どちらも最大54Mbpsと捉えられがちだが、gはbとの互換性が義務付けられているために十数Mbpsしか出ない可能性が大きい。また、bとの互換性を捨てても、最終的なスループットはaに及ばない。ただデュアルバンドが普及する際に、bの上位互換として入ってくる可能性は考えられる」と説明した。
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(2002/7/5)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]