【ブロードバンド】

サービスにバリエーションが求められる
加入者系無線アクセス


 2.4GHz帯を使った無線アクセスサービスの加入者が6月で1万件を突破したスピードネットによると、その57.4%が集合住宅の加入者で、一戸建ての42.6%を上回っているという。集合住宅の場合、1階などの世帯では電波が届かないために申し込んでも提供できない場合もあるとしており、申し込み件数ベースでは集合住宅の比率はさらに高くなり、約65%に達する。

 もちろん、同社のサービスエリアである首都圏は集合住宅の比率が高いということもあるだろう。また、ADSLやCATVなど他の方式とサービス内容を比較した結果、無線アクセスを選んだ人もいるはずだ。

 とはいえ、集合住宅では、ブロードバンド対応の有線回線を新たに敷設するにはさまざまなハードルがあるのに対して、無線ならば比較的早く構築できるという特徴がある。収容局からの距離や光収容などの問題でADSLは不可能、CATVや光ファイバーを敷設するには住民の合意に時間がかかる──といったことから、消去法で無線アクセスを選択しているユーザーも少なくないと思われる。

 一方、ADSLやCATVといった有線アクセスサービスではここ最近、新技術の導入によるスペックアップの話題が活発だ。例えばADSLでは、近距離ユーザー向けに最大速度を向上させたり、長距離化により通信速度の底上げを実現する技術が登場。ユーザーの高速化のニーズに対応するとともに、サービスのスペック自体にもバリエーションが生まれつつある。

 また、光ファイバーやVDSLなど、もともと高速な回線を利用するサービスでは、最大速度の異なるいくつかのメニューを設定している例も見られる。

 これに対して無線アクセスサービスには、残念ながらこういったメニューがあまり見受けられない。スピードネットは今のところ、最大1.5Mbpsのメニュー1本である。同じように2.4GHz帯で無線アクセスサービスを展開する他の通信事業者でも、その多くは最大2Mbps程度である。有線サービスの導入が難しいために無線を選んだユーザーにとっては、スペックアップのニーズに対応できる代替メニューが存在しないのが実状だろう。

 そんな中で注目されるのが、2.4GHz帯以外の周波数を使った無線アクセスサービスの動向だ。

 例えばNTT東日本では6月下旬、「Bフレッツ」のマンション向けメニューの一つとして、26GHz帯の無線アクセスシステムを利用したサービスを9月から開始すると発表した。通信速度は最大23Mbpsとなる。

 26GHz帯という周波数は、22GHz帯、38GHz帯とともにFWA(Fixed Wireless Access)用として通信事業者向けに割り当てられている周波数帯である。2.4GHz帯よりも高速なサービスが実用化されているが、基地局が免許制であることや機器コストがネックとなっており、これまでは企業向けの専用線サービスなどに限定されていた。

 それが、2.4GHz帯と比べて月額料金が割高とはいえ、Bフレッツにも採用されるようになったことを考えれば、FWA機器も徐々に低価格化してきていると言えるだろう。今後、コンシューマー向けに普及することも十分に考えられるわけだ。

 また、スピードネットでは、5GHz帯を使ったサービスの検討に入っている。こちらも、2.4GHz帯のに比べて高速化が見込めるという。最大1.5Mbpsということで、ADSLなどに比べてやや見劣りがするようになった2.4GHz帯の現行サービスだが、5GHz帯サービスの導入により、無線アクセスサービスのバリエーションが増えることが期待される。

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(2002/7/10)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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