■URL
http://www.mainichi.co.jp/digital/ipv6/sympo/
BII国際戦略担当常務の陸楽氏 |
22日、IPv6に関するシンポジウム「IPv6の世界」が都内にて開催された。主催は毎日新聞社、後援は総務省。シンポジウムでは、講演とIPv6関連企業によるパネルディスカッションが行なわれた。その中から、特に興味深かった中国におけるIPv6の取り組みを紹介する。
シンポジウムでは、北京インターネット研究所(BII Group Holdings)国際戦略担当常務の陸楽氏により「IPv6時代における中国の役割と戦略」と題する講演が行なわれた。BIIは現在、中国最大のIPv6研究設備を持ち、中国電信(China Telecom)などの通信キャリアと共同で研究・開発を進める民間企業だ。この共同研究には日本から、WIDEプロジェクト、日立、NTTコム、KDDIなどが参加している。
同氏はまず、中国の経済成長について「1年間で、上海は10%台、広州は13%、北京は10%の経済成長が見られる」と説明し、通信市場については、「どの分野も年25%~35%の伸びを示し、固定電話、携帯電話の市場は既に世界一になっている」と急成長ぶりを伝えた。その上で、中国におけるIPv6の動向を説明した。それによると中国では、1998年12月に中国大学が行なったIPv6の実験を皮切りに開発・研究が進められ、2001年6月にはBIIが主導となり商用に向けた実験網を構築したという。さらに、2002年5月にはIPv6の国際会議「IPv6 Forum北京」を開催するなど、活発にIPv6に取り組んでいる。
また、陸楽氏は「中国の南部は、通信回線が未開拓であり今後は膨大な需要が期待できる。通信各社は電話線と交換機を利用した古い通信網ではなく、無線やイーサネットを利用したIPネットワークで展開していくだろう」と今後を予測した。VoIPサービスの現状については、「電話網のバックボーンについてはIP化が進んでおり、長距離電話の46%はIPを用いた通話になっている」として、「中国の発展においては、IPネットワークが不可欠」だとしている。
しかし、中国では、IPアドレス不足の問題が既に表面化しており「約13億人の国民に対して、2,400万個のIPv4アドレスしか割り当てられていない。例えば、小規模のISPだと1,000人のユーザーに対して100個のアドレスで運用している状態」だという。そのためビジネスへの影響も出てきており、「アドレス不足を解決しなければ、サービスを拡大できない。しかし、現在IPにおける牽引役である欧米は、IPv4アドレスが豊富なので(IPv6)市場のニーズが少ない」とした上で、「待っていても何も起こらない。問題解決には自分で道を開くしかない」と中国は自らIPv6の技術開発を進めていくことを選んだという。
同氏によると、「IPv4のインターネットでは米国一国主導だったが、中国の発言と貢献度を高める」として政府による取り組みも積極的だという。その一方で、「欧州の第3世代携帯電話のように、政府が民間企業を煽って過大な投資をさせるような過ちは、中国では繰り返してはならない」という慎重な意見もあるという。さらに「中国には、IPアドレスが欲しいという市場ニーズがあるが、日本は消費者不在の展開を進めているように見える」と指摘したが、「米国が独占している通信機器市場への参入や、IPv6によって世界のトップを目指すなど中国と日本は目指す方向性が同じなので、お互いが協力しつつ世界に貢献をしていきたい」と連携を呼びかけた。
中国におけるIPv6のロードマップ。 2003年中には、各キャリアが商用サービスを開始。2005年から2007年には、主要なネットワークで本格的に利用されるとのこと。 |
中国におけるキャリア再編の動き。 |
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(2002/7/22)
[Reported by adachi@impress.co.jp]