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電子印鑑には、タブレットの上に置いてあるネーム印タイプと、手前にあるネームペンタイプがある。将来はバイオメトリクスを利用して、ネームペンによる“電子サイン”も開発する予定だという |
シヤチハタ、ワコム、日商岩井の3社は22日、「電子印鑑システム(仮称:シヤチハタe-9 on TABLET)」の開発を完了し、岡山県新見市で実証試験を開始したと発表した。
e-9 on TABLETは、ワコムの電磁誘導方式タブレットとメモリーチップ内蔵の電子印鑑、パソコン用の捺印ソフトなどで構成されている。タブレット上で電子印鑑のボタンを押すだけで、Microsoft WordやAdobe Acrobatで開いている文書ファイル上に自分のネーム印を“捺印”できる。実際には、捺印操作をすることでメモリーチップに記録されているID情報が読み込まれ、サーバーに保管されている印鑑情報に照合、対応する印影データが配信される仕組みだ。11月にも製品化する計画で、価格は1万3,800円を予定している。
新見市ではまず、職員の出張清算書などの申請・承認手続きに電子印鑑システムを導入。ウェブブラウザー上からアクセスできる出張清算システムを構築した。電子印鑑自体が通常のタブレットペンの機能を持っており、ログイン操作からマウスポインターの移動、捺印まですべて電子印鑑だけで行なえる。ユーザー認識により、申請書類の入力ページで名前や部署名などを入力する手間が省けるほか、書類がネットワーク上で閲覧できるため、上長が外出先で承認印を押すことも可能になる。
新見市では今後、電子印鑑システムを市役所内の他の手続きにも拡大し、業務処理のペーパーレス化と効率化を目指すほか、ゆくゆくは電子選挙など住民向けのサービスにも展開したいとしている。
なお、シヤチハタではすでに、電子書類に捺印できるパソコン用の電子印鑑ソフトをすでに製品化していた。ただし、ユーザー認証をパスワードなどで行なうため、ペーパーレス化は実現できるものの、使い勝手がいいとは言えなかったという。今回の電子印鑑システムは、印鑑を模したインターフェイスを既存のソフトに追加することで、従来の紙の書類とアナログの印鑑と同じような感覚で使うことができるようにしたものとなる。
したがって、電子印鑑そのものが第三者の手に渡れば、従来のアナログ印鑑と同様、完全ななりすましを許すことになる。この点についてシヤチハタでは、現時点では強固なセキュリティを提供するというよりも、印鑑の貸し借りもできるという点を含めてアナログ印鑑の使い勝手を再現することに主眼を置いたとしている。
さらに2003年にも、電子印鑑にCPUを搭載し、PKIに対応する電子印鑑システムを開発する計画だ。現在はパソコン内で行なわれているようなPKIの認証処理をハンコ1本で行なえるようにすることで、電子認証が普及する上でネックとなるデジタルデバイドの解消に役立てる考えだ。
(2002/7/22)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]