■URL
http://www.soi.wide.ad.jp/contents.html
左から慶應大学環境情報学部長 |
学生に修了証を授与する村井氏 |
映し出される他大学の学生。非常に鮮明に映し出されている |
慶應義塾大学総合政策学部と環境情報学部は、「SOI(School of Internet) ASIA」のプラットフォームを利用して、アジア6カ国11組織の学生や研究者を対象にした特別講義のコースを実施し、30日に受講者に対して修了証が授与された。
今回の特別講義は、アジア地域における人材教育や、日本との文化交流を図ること、ブロードバンド環境を広げることを目的として「IT&Social Science」をテーマに行なわれた。このプロジェクトを推進するSOI ASIAは、WIDEプロジェクトのワーキンググループの1つで、インターネット基盤上で新しい高等教育のあり方を研究する団体。講義は、慶應大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の複数分野の教員によるオムニバス形式で、2002年6月18日から7月18日までの間に計8回行なわれた。参加組織は、タイ、ラオス、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、ベトナムの6カ国10大学1研究所となり、約250名が参加し84名が修了したという。慶應大学教授の村井 純氏は、今回の講義の新たな試みとして「テクノロジー環境をアジアで展開し、ITを広めること」や、「新しい大学の使命を広げる」、「多国間による人材交流」の3点を挙げた。この中でも特に人材交流を重要視し、今回の特別講義でも多くの学生からSFCへの留学希望者が現れ、SFC側としても今後多くのアジア人留学生を受け入れて、アジアでの人材交流を深めていきたいという。
今回の講義の特徴は、SFCから発信されるデータは衛星回線を利用したUDLR(Uni-Directional Link Routing、片方向通信ネットワークを使用したルーティング方式)で配信を行ない、他大学からの通信は通常の地上の電話回線を利用した点だ。また、これらを全てIPv6をベースにIPマルチキャスト方式で通信を行ない、今までインターネット上で行なわれていた「1対多」の通信から、「多対多」の双方向なやり取りが可能になったという。
具体的には、教員がSFC内のスタジオにて、画面に映し出された他大学の学生に向かって、PowerPointやビデオ映像などさまざまな資料を提示しながら授業を行なったという。この講義の様子は、6Mbpsでエンコードされた高画質なストリーミング映像として配信される。フィードバックは、それぞれのインターネット回線事情に合わせて、映像・音声、音声のみ、文字のみといった形式で行なわれていたという。実際に受講したインドネシアのBrawijaya大学では、回線環境が128kbpsだったが、授業が好評だったため、この特別講義に回線の全ての帯域を割り当てて授業に臨んだとのことだ。
村井氏によると、「今回のSOIの試みは、インターネット遠隔授業の第一歩といえる。今回の衛星回線を用いた方式により、通信から放送的な利用が可能になった。また、テレビによる配信授業ではなかなか難しい双方向の通信もインターネットなら本来の機能として持ち合わせている。この中でも、多対多の方式は、インターネットの授業において重要な意味を持つだろう。9月からは、東京水産大学が水産分野についての講義を開始し、当大学でも来年4月からは定常的に講義を行なっていきたい」とのこと。
慶應大学環境情報学部長の熊坂 賢次氏は「遠隔授業に最も重要なことは、モチベーションの維持だ。この点、今回の方式では多対多の通信が可能だったため、当大学と他大学との交流以外にも、授業時間外では他大学同士の交流もあったようだ。また、今回の授業をきっかけにアジアから日本、日本からアジアへ留学したいという願望が発生すれば良いと考えている。このように、遠隔授業と留学の融合を図っていきたい」と語った。
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(2002/7/30)
[Reported by otsu-j@impress.co.jp]