【業界動向】

MISの無線アクセス、JR駅への基地局設置に黄信号?
電気通信事業紛争処理委員会が「認可不適当」との答申

■URL
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020730_5.html

 モバイルインターネットサービス(MIS)が無線アクセスサービスの基地局を新宿駅などに設置しようとしてJR東日本に拒否されていた問題で、総務省の電気通信事業紛争処理委員会は30日、MISの主張を退ける答申をまとめた。

 MISは今年3月、JR東日本との交渉が不調に終わったことから、電気通信事業法第73条第1項に基づいた認可申請を総務大臣に行なっていた。この規定は、いわば土地収容法の電気通信事業向け簡易版と言えるもの。第一種電気通信事業者が、公共的な通信サービスに利用するための回線や電柱などを他人の土地に設置する必要があると判断される場合、その土地の所有者の意志に反しても設置を認めるという内容だ(正確には、「その土地等の所有者に対し、その土地等を使用する権利の設定に関する協議を求めることができる」となっている)。

 6月に片山虎之助総務大臣が委員会に出した諮問書では、MISの申請は「(同規定の)認可要件に該当し、申請のとおり認可することとしたい」となっていたが、答申ではこれが覆されたかたちとなった。無線アクセスの基地局は、たとえ第一種電気通信事業者が公共的なサービスに利用するものだとしても、同規定の「必要かつ適当であるとき」の要件を満たしていないという理由だ。

 具体的には、適用されるかどうかの判断基準が、設置しようとしている通信設備が「その土地等に現在する人を専ら又は主として対象としているのか、それを超える公衆を広く対象としているのか」(答申書)という点に置かれている。すなわち同規定は、遠隔地をつなぐネットワークの構築を円滑に実現するために設けられたものであり、今回のような駅の利用者が対象となる無線アクセスの基地局については、駅の所有者の意志が尊重されるというわけである。

 今回の答申についてMISでは、「最終的に大臣の判断が下されたわけではないため、現時点では何とも言えない」としている。ただし、諮問時点では“追い風”だった認可申請に対して不適当との答申が出されたことで、JR駅へのサービス展開スケジュールにさらなる狂いが生じることは避けられない模様だ。

 なお、答申はあくまでも電気通信事業法第73条第1項に適用するかどうかの判断に過ぎないことは留意しておかなければならない。

 当初、JR東日本がMISの基地局設置を拒否したのは、すでにサービスが開始されている他社の基地局や、同社が鉄道業務用に導入している2.4GHz帯の無線システムとの干渉を懸念したためだ(このため、JR東日本ではMISに対して、既存基地局の共用案も示していた)。

 しかしながら、無線アクセスサービスの普及を考える上で避けて通れない、このような本質的な問題については、電気通信事業法第73条第1項で対応できる性質のものではないだろう。答申書にもあるように、「本来、本件無線LAN設備を駅に設置することについては、当事者間の話合いによるべきである。また、そのような設置を促すことが適当であるとすれば、然るべき法令上の根拠を整備する必要がある」。

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MIS、JR東日本の駅へ無線基地局設置に関して総務省に裁定を求める(Broadband Watch)

(2002/7/30)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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