【レポート】


ケーブルもTAも要らずにISDN接続ができる!

世界初の赤外線通信インタフェース付ISDN公衆電話機体験レポート

■URL
http://www.hil.ntt.co.jp/irta/test.html

 本誌5月7日号のダイジェストニュースでお伝えしたとおり、NTTが世界で初めて赤外線通信に対応した公衆電話のフィールドテストを開始した。これは赤外線を利用するため、IrDA対応のパソコンであればTAやケーブルなどを使うことなくISDNで接続できるというものだ。同期64kまたは非同期38.4kでの接続をサポート。バルク通信には対応していない。もちろん、接続するためにはISDNに対応したプロバイダーに予め加入していることが条件だ。

 現在、秋葉原のLAOX THE COMPUTER館6Fにこの公衆電話が設置されており、誰でも体験できるようになっている。早速LAOXに取材し、体験してみることにした。












■出かける前に、ドライバーのインストール

 まずは、赤外線ソフトIrDA1.0規格の赤外線ポートを内蔵しているIBM PC/AT互換機(今回はThinkPad535を使用)に、Microsoft Windows95 赤外線通信ドライバをインストール。このドライバは、マイクロソフトのホームページから無償でダウンロードができるようになっている。インストールが済んだら次にモデムの設定だ。NTTのホームページから「モデム設定ファイル」をダウンロードする方法と、「標準モデム設定」を使って一部に追加設定をする方法とあるが、どちらも手間は同じぐらいだろう。編集部では、設定ファイルをダウンロードする方法を試みた。

 ただし、どちらの場合も気を付けなくてはならないのが、「フロー制御を使う」をオフにしておくこと。コントロールパネルにある「モデム」からプロパティ-接続設定-詳細設定と進んでいくと設定できる。階層のかなり奥のほうにあるので、見落としやすい。

■いざ接続!IrDA接続はPutが苦手?!

 さて、設定も整ったところでいよいよ接続。まず電話の外見だが、通常のISDN公衆電話(グレーの公衆電話)と似ている。ただし、この公衆電話はテレホンカードしか使えないこと、テレホンカードの入口と出口が別々であるといった違いがある。

 接続は予めパソコン本体の設定さえできていれば簡単。テレホンカードを差し込んだ後に、設定しておいたダイヤルアップネットワークのファイルを開いて接続ボタンを押すだけだ。なお、現在は実験として行なわれているが、もし接続に失敗しても料金はかかるので注意しよう。

 今回編集部ではThinkPad535を使って、東京インターネット、ニフティサーブ、インプレスの3箇所から窓の杜のFTPサーバーに接続した。テキストデータとバイナリデータを用意し、それぞれPutとGetを行なって速度を検証した。なお、本来は数回FTPを繰り返したデータを採るところだが、公衆電話を利用している都合上、今回は各プロバイダーにPutとGetを1度づつ行なったデータとなっている。

 ざっとデータを見比べてみると、インプレスに接続した場合、窓の杜のFTPサーバーとは社内LANで繋がっているため当たり前だが速い。しかし、社内から接続しているにもかかわらず、なぜかPutの場合は差がない。どこから接続しても同じような結果が出ているため、もしかするとIrDA接続ではPutが苦手なのかもしれないと思い、早速通常のISDN接続でも同じように実験を試みることにした。まず、IrDA接続での結果は以下のとおり。

東京インターネット:IrDA接続の場合
 

Put

Get

テキスト(998Kbytes)

1,896bytes/s(539秒)

4,275bytes/s(239秒)

バイナリ(848Kbytes)

1,768bytes/s(491秒)

3,859bytes/s(225秒)

ニフティサーブ:IrDA接続の場合
 

Put

Get

テキスト(998Kbytes)

2,039bytes/s(501秒)

4,087bytes/s(250秒)

バイナリ(848Kbytes)

1,904bytes/s(456秒)

3,893bytes/s(223秒)

インプレス:IrDA接続の場合
 

Put

Get

テキスト(998Kbytes)

2,019bytes/s(506秒)

5,493bytes/s(186秒)

バイナリ(848Kbytes)

1,786bytes/s(486秒)

4,498bytes/s(193秒)

■通常のISDNでは全く違うベンチマーク結果が…

 さて、通常の回線を使ったISDN接続では、一目見て分かるとおり、PutとGetにIrDA接続ほどの差はない。一つのサーバーの調査で、実験回数も多くはないが、今回実験した限りでは、IrDAでの接続の場合はPutは苦手のようだ。ちなみにこの実験で使用したTAは、NECのAterm IT45。

東京インターネット:ISDN接続の場合
 

Put

Get

テキスト(998Kbytes)

6,722bytes/s(152秒)

7,799bytes/s(131秒)

バイナリ(848Kbytes)

6,337bytes/s(137秒)

7,550bytes/s(115秒)

ニフティサーブ:ISDN接続の場合
 

Put

Get

テキスト(998Kbytes)

6,678bytes/s(153秒)

7,799bytes/s(131秒)

バイナリ(848Kbytes)

6,431bytes/s(135秒)

7,683bytes/s(113秒)

インプレス:ISDN接続の場合
 

Put

Get

テキスト(998Kbytes)

9,549bytes/s(107秒)

9,460bytes/s(108秒)

バイナリ(848Kbytes)

5,359bytes/s(162秒)

4,990bytes/s(174秒)

■どのくらいの距離まで通信できる?

 今回、速度の実験のほかにもどのくらいの範囲まで通信ができるか試してみたところ、距離的には2mぐらいまで耐えられるようだ。ただし、左右に少しでもずれてしまうと距離に関係なく通信が途切れてしまった。一瞬途切れても7秒以内に再度通信が行なえれば接続は保たれる。速度はダウンロードするのであればかなりの速度が得られるので、メールをまとめてダウンロードするといったことに向いているだろう。

 実験開始当初は慣れないせいか、ケーブルがないのにISDN接続できることが少々不思議で、いつ切断されるかと不安に思ってしまった。しかし、移動したりと実験を重ねるうちに、不安はなくなり、通常のケーブルの場合よりも自由に動けるなどかなり使いやすいことがわかった。ファイルのPutは少々遅いが、それと引き換えてもケーブルやTAを持ち歩かなくて済むメリットは大きいだろう。

 LAOXの方にお話を伺ったところ、リブレットを持った人が1日10人程度訪れるとのこと。なお、NTTによるとこの赤外線通信インタフェース付ISDN公衆電話機は、秋葉原のLAOX THE COMPUTER館のほか、6月下旬までに関東圏を中心にもう4台増やす予定とのこと。将来的には全国展開をしていきたいとのことだった。

('97/5/21)

[Reported by junko@impress.co.jp / dome@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当 internet-watch-info@impress.co.jp