【特集】


インターネットで電話代が安くなる?!

 安く電話がかけられるというので、最近話題のインターネット電話。一口にインターネット電話と言っても、パソコン対パソコン、パソコン対一般電話、一般電話対一般電話という風に色々なタイプがあるので注意が必要だ。
 パソコン同士なら、ホワイトボードを使ったり、アプリケーションを共有したりして共同作業することができる。しかし、ユーザー側でソフトウェアが必要だったり、ダイヤルアップ回線だとお世辞にも実用レベルとは言えなかったり、というのが現状だ。
 それに対し、ユーザー登録すれば、家やオフィスにある普通の電話機からかけられるというサービスはありがたい。パソコンのことなど、何も知らなくてもインターネットの恩恵にあずかれるのだ。長距離電話や国際電話を安くかけられるというのは、単身赴任のお父さんのみならず、コスト削減に神経をすり減らす経営者にとっても魅力的なはず。



実際に契約する前に

 その仕組みを簡単に説明するとこんな感じになる。まず、利用者がNTTの市内回線を通じてアクセスポイントに電話する。アクセスポイントに設置された専用のゲートウェイサーバーが相手の所在地に一番近いゲートウェイサーバーを呼び出し、そこから市内回線を通じて相手先に電話がかけられる。つまり、これら2つのゲートウェイ間の通信にインターネットが用いられるわけだ。インターネットを通っているので、トラフィックの増減により音質が悪くなることもあるが、だいたい携帯電話並みだと考えておけばいいだろう。
 ただし、いいこと尽くめというわけではないということは、あらかじめ肝に銘じておく必要がある。例えば、電話が繋がるまでの作業は、普通の電話よりも少しだけ面倒。大抵の場合、アクセスポイントにフリーダイヤルで電話をかけ、自分のID番号と相手先の電話番号をプッシュするという方式になっている。
 また、発着可能地域が大都市に限定されていたりするのも困ったところ。いざ田舎の両親に電話しようと思っても、アクセスポイントがなくて苦々しい思いをすることもあるかも知れない。
 こうした質の問題と利用料金は、サービス会社によって違ってくるので、これから実際に利用してみようとお考えの方は、今回の特集を見て研究してみるものいいだろう。


各社のサービス内容

リムネット株式会社 国内 海外
 大手プロバイダーが運営する「リムフォン」。同社のプロバイダー会員であることと、2,000円の登録料を別途支払うことが必要。国内のアクセスポイントは、札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡の6ヵ所で、料金は3分60円(以降1分20円)。このほか8月21日よりワシントンDCにアクセスポイントが設けられ、国際電話も可能になる。こちらは3分90円(以降1分30円)。ただし、午前8時~午後9時までの時間制限付。
有限会社インターコネクト 国内 海外
 8月中旬以降より受付を開始。加入料はないが、1ヵ月の最低利用料として2,000円が必要となる。国内のアクセスポイントは、東京、大阪の2ヵ所で、料金は3分48円(以降1分16円)となる予定。8月に名古屋、9月に福岡が、98年3月までに国内主要70都市間で通話可能となる見込み。海外ではアメリカへの接続がサービス開始当初より可能となる予定で、こちらは3分75円(以降1分25円)。イギリスや韓国など、海外の主要100都市への接続予定もある。クレジットカード、銀行振込、口座振替が可能。
株式会社ティー・ヴィー・エス 国内 海外
 月額基本料として500円が必要。国内のアクセスポイントは、東京、大阪の2ヵ所で、料金は3分60円だが、8月末まで無料開放されている(ただし、アクセスポイントまでの電話料金は各自で負担)。今年中に国内のアクセスポイントをさらに70ヵ所増設する予定。海外では来年1月にアメリカとカナダにアクセスポイントを設ける。こちらは3分90~120円が予定されている。
千代田産業株式会社 国内 海外
 国内のアクセスポイントは、東京、大阪の2ヵ所で、料金は3分48円(以降1分16円)。クレジットカード、銀行振込が利用可能。大口割引制度もあり、月10,000分以上利用すれば3分38円になる。また、秋頃よりプリペイドカード方式でのサービスも予定している。海外では、8月下旬よりアメリカにアクセスポイントを設置、今年度中に100都市に増やす。アメリカへの通話料は3分75円だが、その他の地域については3分105~210円を予定。
■株式会社エム・ティー・ビー・ジャパン 国内 海外
 Latic Communications社と提携し、8月中に日米間での通話が可能となる見込み。加入料、月額基本料等は一切なく、1分50円を予定。また、8~9月中に大阪にアクセスポイントを設置し、国内サービスも開始する。
◎問い合わせ先
TEL 03-3273-7833
株式会社ベストワン 国内 海外
 アクセスポイントは、東京、大阪、札幌の3ヵ所。料金は3分40円。サービス開始は9~10月頃を予定しており、現在登録を受付中。国際電話サービスについては、年内開始を目処に調整中。
USA Global Link, Inc. 海外
 米国の通信会社が計画中の国際電話サービス。日米間はもちろん、ヨーロッパやアジアの各国にアクセスポイントを設置。料金は1分29~50セント程度を予定している。現在、日本国内のプロバイダーと交渉中で、その他詳細については未定。
株式会社KDDコミュニケーションズ 国内 海外
 KDDによるプロバイダー事業の一環として急浮上してきた。9月30日まで、東京と大阪にサーバーを置いて実験運用を行なっており、誰でも参加できる(詳細は本日の別記事参照)。海外にアクセスポイントを設置することも検討中。本業の国際電話事業とどうバランスを取るのかが見もの。

通話料金比較表(東京から3分間)

社名大阪米国アクセスポイント
リムネット60円90円札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡、米国
インターコネクト48円75円東京、大阪、米国
TVS60円90-120円東京、大阪、名古屋、福岡、米国、カナダ
千代田産業48円75円東京、大阪、米国
MTBJ60-75円150円東京、大阪、米国、香港、台湾
ベストワン40円--札幌、東京、大阪
USA Global Link--100-170円(*)米国、日本、英国、フランス、ドイツ、ほか
KCOM----東京、大阪
NTT110円--
KDD--450円

(*)87~150セント(1ドル=115円で計算)


インターネット国際電話の行方

 郵政省が7月8日、国際「公-専-公」接続をインターネット電話に限って8月から解禁すると発表した(本誌97年7月9日号参照)。これによりプロバイダーなどの第二種電気通信事業者がこの分野に参入することが可能になり、いわゆる価格破壊が進むのではと期待されている。
 インターネットを利用して国際電話を安くかけられるというのは、消費者にとっては喜ばしい話。しかし、こうした動きに対し、KDD、IDC、ITJの国際通信3社が警戒心を抱いているのも確かだ(本誌97年7月24日号参照)。今後の成り行き次第では、8月中のサービス開始が難しくなる可能性もある。
 それでも、年内にはサービスが開始され、今後数年で様々な企業がこの分野に参入することが予想される。独立したビジネスとしても注目を集めるインターネット電話。しばらくは目が離せないだろう。


リムネットの宮本氏に聞く、インターネット電話事業の裏話

 これまで国内に閉じ込められていたインターネット電話が、ついに海を越えて繋がることになる。数社が名乗りをあげるなか、大手プロバイダーのリムネットが8月21日からこの分野に参入する。インターネット電話事業の今後を占う上でも、同社の宮本喜一氏にお話を伺ってみた。

株式会社リムネット 宮本喜一氏 ▼Q.まずワシントンDCにアクセスポイントを設置するとのことですが、ヨーロッパやアジアへの進出は?

▽A.考えていません。我々は本格的に電話事業に参入しようとは考えてませんし、第一KDDみたいな大企業を相手にうちみたいなところが太刀打ちできるわけないでしょう?(笑)  我々はカナダのVienna Systems社と提携して、一般電話を利用したインターネット電話のシステムの販売も手がけています。どちらかというと、こちらの方に力を入れていきたいと思っているんです。今回の国際サービスの開始の一件についても、インターネット電話という環境を提言して、機器の販売で収益を上げよう、という風に考えているわけです。

▼Q.ということは、現在プロバイダー事業で競合している他社にも機器を販売したりすると?

▽A.その可能性もあります。我々の本業はプロバイダーで、インターネット電話に関してはあくまでも付加サービスだと考えています。インターネット電話という1つの環境を提案したいというのがそもそもの発想です。ですから、それは我々にとってはむしろ歓迎すべきことなんです。

▼Q.これまで国際電話というと、どうしても夜間というイメージがあったんですが、午前8時から午後9時までという時間制限を設けていますね。

▽A.いろいろ疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、本業のプロバイダーサービスとの関係があるんです。言わずと知れたテレホーダイが午後11時から翌朝8時までということで、この時間帯まで含めてしまうとユーザーさんに殺されてしまいます(笑)。
 逆に言うと、それ以外の時間はアクセス数も少なく、我々の設備が遊んだ状態になっているわけです。何とかしてこれを有効に利用できないか、という発想もあったわけです。

▼Q.ところで、すでに国内ではサービスを開始しているわけですが、ユーザー数はどれくらいですか?

▽A.約1,000人です。プロバイダーサービスの登録料5,000円、インターネット電話利用のための登録料2,000円、さらに月1,800円も支払ったら、国内の場合、もとが取れるかどうか分かりませんからね(笑)。
 でも、国際電話となると話は違います。何度か利用すれば、すぐにもとが取れるんですから。

▼Q.かなりビジネス需要がありそうですね。

▽A.そうですね。現在、我々のプロバイダーサービスの利用者のおよそ9割が個人ユーザーなんですが、これを機にビジネスユーザーが増えてくれるのではないかと期待しています。
 また、個人ユーザーの方でも、インターネット電話の方を利用したくて会員になって、こっちの方も面白そう、というのでパソコンを使い始める。そんなことも期待しているんです。

▼Q.8月21日サービス開始ということは夏休みが取れない?

▽A.いや、無理にでも取りますよ(笑)。これから郵政省と最終的な調整をして、という段階なので、下手をすると開始時期の延期なんてこともあるかも知れません。でも、某紙で取り上げられてからというもの問い合わせが多くて、この辺でひと区切り入れておかないと動きが取れない状況なので、とりあえず7月23日に発表文を出させていただいたというわけです。

('97/7/28)

[Reported by yuno@impress.co.jp / Watchers]


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