第70回レポーター:PCTARO氏
■URL
http://okazakis.ke.yama.sut.ac.jp/~el/phi/(クライアント入手先)
http://samurai.ee.kogakuin.ac.jp/~nagai/(PHI開発者の永井さん)
http://www.mirai.or.jp/~aleph/(PHI世界の一つNEV)
ネットワークを通じて数千人が同時に参加し、一つの世界を作り上げる「ウルティマ・オンライン」は、'97年を代表するパソコンゲームの一つとなった。規模こそ違うが、実は日本にも「剣と魔法の世界」をコンセプトにした同種のオンライン・ソフトが存在する。国産のネットワークRPG「PHI(PHantasmal
Island)」だ。
PHIは、現在SCEIでゲーム開発をしている永井秀明さんらによって'92年に誕生した。工学院大大学院生だった永井さんの修士論文のテーマ、仮想都市を舞台にしたサーバークライアント方式のコミュニケーション実験のためで、本来は研究用のシステムだ。だが、その後ユーザー有志によってサーバーが次々と立ち上げられ、独自に発展を続けている。
クライアントは当初Unix版が中心だったが、山口東京理科大学の高岡啓太郎さんが、Windows用の「Phantasmal Island for Windows95/NT(phiwin32)」を新たに開発した。phiwin32は従来よりゲームらしい画面になり、操作性も改善されて、ユーザーの広がりが期待されている。また、利用者の要望をもとに、頻繁に改良が重ねられている。高岡さん自身もよくPHIにアクセスしているので、運が良ければ開発者自身に世界を案内してもらえるかもしれない。
プレイヤーは、チャットが楽しめるのはもちろん、モンスター退治や宝探しなど、遊び方は自由だ。素朴なインターフェイスから当初受ける印象と比べ、意外に奥が深い。2つのアイテムを組み合わせて別のアイテムが作れるなどの細かい芸や、世界によっては、いくつかのクエストも用意されている。迷った時は、テレパシー機能などでほかのプレイヤーに助けを求めるといいだろう。親切なプレイヤーが多いので、適切なアドバイスを得られる。また、関係者によるホームページもかなりあるので、攻略本代わりにのぞいてみるのもいいだろう。
サーバーソフトも公開されているので、Unix環境がある人なら、自ら世界の創造主「ワールドマスター」となることも可能だ。サーバーはそれぞれ相互にリンクした複合世界を形成し、転送機能によって、プレイヤーはほかのサーバーに自由に移動できる。サーバーが増えるほど、探索できる世界が広がっていくのだ。
PHIは研究目的で誕生した経緯から、現在も有志によるボランティアの努力で管理・運営されている。このため、プレイヤーはマナーを守って管理者の負担が増えないよう配慮することが必要だ。
市販のオンラインゲームと比べると、まだまだ操作性に難はあるし、グラフィックなどには物足りない部分もあるが、徐々に改善されていくだろう。プレイヤーと開発者、サーバー運営者の共同作業によって、手作り感覚で発展していくPHIの世界。どのような進化を遂げるか、今後が楽しみである。
('98/1/27)
[Reported by pctaro@kk.iij4u.or.jp]